「結構疲れちゃったよね」
大辻は、僕の隣に座って汗をぬぐっていた。多音はというと、大辻の連れてきた仲間たちに囲まれて、「キャー、多音ちゃん可愛い」とちやほやされていた。どこか見覚えのあるキーホルダーをつけたカバンの中に大辻はタオルを入れた。
「多音ちゃん、やっぱりかわいいよね。ほんと、現世に舞い降りた天使って感じ」
「まあ、確かに不思議な子だよね」
僕は、ただ可愛いという言葉には賛同できなかった。裏があるとかそういうのではないが、きっと彼女は何かを持っている。他の誰ももっていない「特別」な何かを。大辻は、ベンチに座る僕の横顔を眺めながらつぶやいた。
「そういえばさっきの話なんだけど、私のことやっぱり覚えてないかな」
「あれから考えてみたけど、やっぱりわかんないや。会ったことあるってそれいつの記憶?」
「うんとねえ、小学生の時だったかな」
そう言って、大辻はスマホをいじりだした。そして、「お、これこれ」とある写真を見せてきた。その中には、たくさんの子供たちが並んでいた。男女関係なくバラバラに並んだ子どもたちが笑顔でピースを作っていた。
「これ、見覚えない?」
「なにこれ。森?」
「小学校の時にあったアスレチック教室だよ。この時に今の歩君にそっくりな子がいてね」
写真の中の男の子に指をさす。その子の顔は、確かに僕にそっくりだった。その時、僕の頭の上に小さな雷が落ちる感覚がした。そしてずっと封印されていた埃の被った木箱を破壊するような快感に溺れる。
「あ!思い出した!児童館のイベントでアスレチックしたときのだ。懐かしいなー」
「ね。この時にきっと私たち会ったことがあるんだよ」
「そうなのかなあ、詳しくは覚えてないけど」
「いや、私があの時に助けてもらったの。私が水上アスレチックで落ちた時、ずっと川の中で泣いていた私をグループの違う君が泳いで助けてくれたんだよ。まあ、全然川は浅かったから私が弱虫なだけだったんだけどね」
確かにそんなことがあったかもしれない。あの頃、小学生のやんちゃだった時期特有の「自分は特別だ」という謎の自信から班行動を完全に無視して自分のやりたいアスレチックにずっと入り浸って遊んでいた。その時に川に落ちて一人で泣いてた女の子をすぐに助けに行ったっけ。懐かしさに一人、感傷に浸っていると何かを察したのか大辻はにやりと笑った。
「あ!思い出したでしょ。あの日、可愛くて泣き虫な女の子を助けた日のこと」
「ははは、懐かしいな。というか、本当に僕のことだったんだな。顔までよく覚えていてくれたね」
「当たり前でしょ。私のヒーローだったんだから。だから、君がクラス長に選ばれたときにすぐに副クラス長に立候補したんだよ」
「そうだったんだ。じゃあ副じゃなくて長をやって欲しかったな」
「それはNGです。助けていただいた方を支えるのが私の役目なので」
「あはは…」
「まあお礼をしようっていう気持ちは本当だから。一年間よろしくね」
そう言うと、大辻は手を差し出してきた。
「はい、友情の証の握手」
僕は、その手を握り返した。柔らかい感触が手のひら全体に広がる。
「じゃあ、そろそろ行こうか。あ、あと私のことは尋絵って呼んで。私も歩君って言ってるし」
尋絵はにこりと笑ってベンチから腰を離した。僕もその背中についていくように立ち上がった。
大辻は、僕の隣に座って汗をぬぐっていた。多音はというと、大辻の連れてきた仲間たちに囲まれて、「キャー、多音ちゃん可愛い」とちやほやされていた。どこか見覚えのあるキーホルダーをつけたカバンの中に大辻はタオルを入れた。
「多音ちゃん、やっぱりかわいいよね。ほんと、現世に舞い降りた天使って感じ」
「まあ、確かに不思議な子だよね」
僕は、ただ可愛いという言葉には賛同できなかった。裏があるとかそういうのではないが、きっと彼女は何かを持っている。他の誰ももっていない「特別」な何かを。大辻は、ベンチに座る僕の横顔を眺めながらつぶやいた。
「そういえばさっきの話なんだけど、私のことやっぱり覚えてないかな」
「あれから考えてみたけど、やっぱりわかんないや。会ったことあるってそれいつの記憶?」
「うんとねえ、小学生の時だったかな」
そう言って、大辻はスマホをいじりだした。そして、「お、これこれ」とある写真を見せてきた。その中には、たくさんの子供たちが並んでいた。男女関係なくバラバラに並んだ子どもたちが笑顔でピースを作っていた。
「これ、見覚えない?」
「なにこれ。森?」
「小学校の時にあったアスレチック教室だよ。この時に今の歩君にそっくりな子がいてね」
写真の中の男の子に指をさす。その子の顔は、確かに僕にそっくりだった。その時、僕の頭の上に小さな雷が落ちる感覚がした。そしてずっと封印されていた埃の被った木箱を破壊するような快感に溺れる。
「あ!思い出した!児童館のイベントでアスレチックしたときのだ。懐かしいなー」
「ね。この時にきっと私たち会ったことがあるんだよ」
「そうなのかなあ、詳しくは覚えてないけど」
「いや、私があの時に助けてもらったの。私が水上アスレチックで落ちた時、ずっと川の中で泣いていた私をグループの違う君が泳いで助けてくれたんだよ。まあ、全然川は浅かったから私が弱虫なだけだったんだけどね」
確かにそんなことがあったかもしれない。あの頃、小学生のやんちゃだった時期特有の「自分は特別だ」という謎の自信から班行動を完全に無視して自分のやりたいアスレチックにずっと入り浸って遊んでいた。その時に川に落ちて一人で泣いてた女の子をすぐに助けに行ったっけ。懐かしさに一人、感傷に浸っていると何かを察したのか大辻はにやりと笑った。
「あ!思い出したでしょ。あの日、可愛くて泣き虫な女の子を助けた日のこと」
「ははは、懐かしいな。というか、本当に僕のことだったんだな。顔までよく覚えていてくれたね」
「当たり前でしょ。私のヒーローだったんだから。だから、君がクラス長に選ばれたときにすぐに副クラス長に立候補したんだよ」
「そうだったんだ。じゃあ副じゃなくて長をやって欲しかったな」
「それはNGです。助けていただいた方を支えるのが私の役目なので」
「あはは…」
「まあお礼をしようっていう気持ちは本当だから。一年間よろしくね」
そう言うと、大辻は手を差し出してきた。
「はい、友情の証の握手」
僕は、その手を握り返した。柔らかい感触が手のひら全体に広がる。
「じゃあ、そろそろ行こうか。あ、あと私のことは尋絵って呼んで。私も歩君って言ってるし」
尋絵はにこりと笑ってベンチから腰を離した。僕もその背中についていくように立ち上がった。

