冬の魔物

 学校に通わなくてもいい身分なら、俺ならば絶対に通わない。毎日毎日はやく終われと憂鬱な気持ちで登校し授業を受けているというのに、そんな気持ちがどうしてもわからなくて。

「うん。そうなんだ。中学までは満足に通えなくて……病院から学校の校舎を見ているだけだった。嬉しいんだ。いま、そういう場所に通えていることが」

 可愛いいい笑顔だった。けど、やっぱり気持ちはわからなかった。

 俺の目には灰色のコンクリートの箱が、彼女にとっては憧れていたずっと来たかった場所らしい。

 そうなんだ。わからない。そうなのか。彼女から見ると。俺と綾川さんが見ているものは、違うのか。

 教室の中にいる誰もが、俺の気持ちをわかってくれると思っていた。学校だるいよな。授業面倒だよな。できれば、ベッドに寝転んで一日中過ごしたい。ゲームしていたい。許されるならそうしていたい。

 不思議なことに心臓が生まれた時から不良品でそうしていても誰もが文句をいうはずもない彼女は、学校にどうしても来たくて、突然の体調不良を隠しておいて欲しいと俺に頼むのだ。


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