冬の魔物

 数えきれないほどに職員室に行っても、先生は困り顔だ。彼の立場ではそう言うしかない。それは、わかっていた。ご両親にも俺はあまり良く思われていないのだろう。

 けど、俺は綾川さんが生きているか死んでいるかもわからないのだ。それが知りたいだけなのに、どうしてそれすらも許されないんだと理不尽に怒りたくなる。

「……ああ。悪いな。今はご両親も大変な時だし、連絡先も個人情報は勝手に教えられない……わかるな?」

 俺は左の肩を叩かれて、何も言えなかった。先生は自席に戻って行った。俺はもう立ち去るしかない。

 俺はもうすぐ、卒業する。そして、先生たちから見ても学生ではなくなる。他人だ。ずっとずっと、これまでに望んでいたのに。

 あんなにも出たかったコンクリートの中で、いつ戻ってくるかわからない綾川さんを待つことも出来なくなるのだ。

 ……もう、会えない。彼女がどうなったかもわからない。

 金を払って探偵を雇ったら……? そこで喉が苦しくなって、喉元を握りしめた。

 亡くなったという知らせを受けるために、金を払うのか……?