冬の魔物

 俺は廊下の隣を歩く彼女の言葉が信じられなくて、聞き返した。高校生って当然のように辿る道ではないのか、そう思って。

 そして、彼女にはそうではなかったと思い返すのだ。

 ……そうだ。俺たちとは違う道を辿っている。

「……あのね。佐倉くん。教室の中で、すっごくつまらなそうで、なんだか気になってた」

「え!? 俺。ああ……そうなんだ。俺。綾川さんと目が合ってたと思ってた。あれって、気のせいじゃなかったんだ……」

 ぼんやりとそう思った。そうだ。転校生とやたらと目が合うなって思っていた。

 そして、まあ、そんなはずはないかと思った。もっと姿がいいやつなんて、いくらでもいるんだから。

「つまらなそうなのに、たまに楽しそう。いいな……私もそんな風に過ごしたかったなって、そう思ったんだ」

「つまらなそうって……まじか。うん。そっか……気になる理由がそれって、なんだかうん」

「うん。その時には、もう……好きだったよ」

 綾川さんは笑った。俺は彼女からの告白に、まさに有頂天になった。塾もサボった。受験前なのに。