冬の魔物

 そして、その日の塾からの、帰り道。自転車に乗りながら、ふと気がついたのだ。

 ……あれは、綾川さんだけが特別ではなく皆と同じだと俺が言ったことが、彼女には嬉しく感じてそう言ったのだと。


◇◆◇


 気温がどんどん落ちていって、寒さが増してきた。

 そんな中でも綾川さんとは何もなく、少しだけ話すクラスメイトのまま。

 ……もうすぐ、入院するのだろうか。どうだろうか。俺はまだ綾川さんに聞けずにいた。どうにも、彼女との距離感が掴めなかった。

 気になることは気になった。図書館の床に倒れていて、それを黙っていて欲しいと頼まれた時から、ずっと気になっていた。

 好きなのか。どうなのか。わからない。可愛いけど。どうせ会えなくなる。このままでいた方が。付き合うなんて。よくわからない。遠距離なんて。わからない。

 俺の脳内では消極的な言葉が、何個もぐるぐると回る。

 けど、綾川さんのことが、気になることは気になる。うん。気になっているんだ。それは認めよう。認めるんだ。

 綾川雪乃さん。綺麗な名前だ。

「……佐倉くん」