冬の魔物

 返ってきたお釣りから、ジュース一本分ちょうどを渡してくれたので、俺は遠慮なく硬貨を入れると麦茶のボタンを押した。

 ……そうか。俺の何気ない日常が、綾川さんにとっては羨ましいのか。

 そういうのもわからないなと思う。変な感じだ。同じ高校生のはずなのに、考えていることが全く違う。

 ……いや、同じ立場だから同じことを考えているだろうと、思うほうがおかしいのか……むしろおかしいのが俺?

 考えていることがわかりやすい同級生と長く過ごしてきたせいか、こういう感覚がよくわからない。

 綾川さんと話すようになって、なんだか新鮮だと思うことが多い。俺にはない世界線。俺にとっては親に怒られるからといるだけの学校に、憧れて楽しく通う気持ち。

 うん……わからないな。

「よかったら、一緒に飲んで話す?」

 俺はすぐそこにあるベンチを指さした。もう暑くもないちょうどいい季節なので、近くにある木の影がゆらゆらと吹く風に揺れていた。

 枯れ葉がひとつ落ちたので、もう少しでここは落ち葉の海ができるだろう。

「え? いいの?」

 嬉しそうに微笑んだ綾川さんに、俺は頷いた。