ガラスの靴の殺人姫

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次の日

目が覚めて早々、使用人が
「お着替えしますよ!」
とドアを叩いてくる。

まだ朝食もとっていないのに…

「僕が代わりますよ」
モローの声が聞こえ、ガチャ、と開いたドアからモローが顔を出す。

「おはようございます、」
テーブルの上のブラシを手に取ると、私の髪を梳き始める。

「今日はイムレ国の王子とお見合いですよね」
「めんどくさぁいよー、」
「そうですね。」

「いたっ、抜いたでしょ?」
「絡まっていたみたいですね、失礼いたしました」
「5本くらい抜いたでしょ?」
「“抜けてしまった”んです。わざとじゃないです。着替えにいきましょう」
「もぅー、」


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更衣室に行くといつも通りコルセットを締められる。

なんか、叫ぶ気にもなれないな…

目をこすってぼんやりしていると、ドレスを着ていて、ガラスの靴を履いていた。

意外と履けるもんなんだなぁ…

「髪型はどういたしますか?」
「なんでもいいよ、まかせる」
「かしこまりました、」

使用人が私の髪にオイルを馴染ませながら言う。

「イムレ国の王子様は、本当にかっこいいんですよ。」

へぇー。

「セレネ様もお気に召す気がいたします」
なんて、にこやかな顔で私の髪を編んでいる。

「モロー君もかっこいいですけどね」
モロー?なんでモロー?

「そう?」
「ええ。素敵な執事様ですよね」
「まぁ…?」


使用人が私にした髪型は、三つ編みで右に流しているようなものだった。

へぇ。なかなかいいじゃん。

なんて毛先を撫でていると、
「イムレ王子が到着いたしました…!」
と使用人が駆け込んできた。


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モローが城の門を開けたのは、ちょうどイムレ王子が馬車から降りた時だった。

「ごきげんよう。」

赤髪に、つり上がった目。

「お前、セレネ様の執事?」
「…はい」

ニヒルに笑いながら、イムレはモローの顔を覗き込んだ。

「かわいい顔。俺とは正反対。」
「セレネ姫がお待ちでございます。」
なんて、モローは冷淡に言ってみせた。


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私がスコーンを前に食欲を堪えていると、モローがイムレらしき人を連れてくる。

「ごきげんよう」

姫らしく挨拶をしたのだが、
「あぁ、」
と偉そうに私の前の席に座った。

「…」

嫌だな、この人。
なんかこの態度のせいで顔も見たくない。

モローもなにか言われたのか怪訝そうな顔をして私の横に立った。
早く帰らないかな、なんて考えながらスコーンを割くと、
「俺も食べたい」
と椅子に寄りかかる。

「…」

目の前にあるんだから自分で取ればいいのに。
モローは窓の外を眺めて気づかないふりをしている。

「おいそこの銀髪の奴、取れよ」

腕、相当短いんだな…

「モローです」
「モロー、取れ」

取ってください、も言えないなんて。
よく王子ができるなぁ。
モローは犬じゃないのに。

こんな人と結婚しなくちゃならないなら城以前に島を分けたいわ。

「…どうぞ」

「違う、あのブルーベリーのやつ」

最初に言えよ。


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ドレスから着替え、夕食のために食堂に行くと、
「イムレ王子はどうだった?」
と父上に声をかけられる。

「結婚なんて断固拒否です」
椅子に座り、髪を紐でまとめた。

「そんなこと言わずに…美男だっただろ?」
「美男以前ですよ、あんな人と結婚なんてするくらいだったらモローと結婚したいですわ」

「それは勘弁だな…」
「もっといい人いないのですか?」
「中々難しいんだ。結婚した後…いや、子供を作ったら二度と会わなくてもいいから、な?」
「…嫌です」

あんな人と結婚した自分になりたくない。
毎日気分が沈みそう…

「イムレ国はスコーンが有名な国ですよね?」
モローが私にシチューを運びながら口を挟む。
「そうなの?」

「そうだ。アポリアにはない種類の粉やフレーバーの組み合わせがな、」
「イムレと結婚したらアポリアにも流れる?」
「まぁ、そうだろうな」
ありだな…

「セレネ、もう一回会って考え直してくれないか?」
「いいですよ、スコーンを持ってくる条件なら」


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「…先輩、このガラスの靴について、新たに分かったことがあります」
「なんだ」
「このガラスの靴、セレネ姫の物らしいです」

「じゃあセレネ姫が犯人だろ、」

「ですが、盗まれて濡れ衣を着せるために落とした、という可能性も否めないです、」
「まぁな、」
「僕自身、セレネ姫が人を殺すなんて思えない、というか…」