ガラスの靴の殺人姫

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朝、目が覚めると、狙っていたようにモローが入ってくる。

「どこかに目がついてるの?」
「顔についてますよ、笑」
「いや、そうじゃなくて…」
「朝食の準備できていますよ。」

私がベッドから起きるとブラシを取り出し私の髪を梳いた。

「国中ガラスの靴の持ち主を探していますよ」

「…ふぁーぁ…、」
「よく眠れますね、」

「まぁ、もう慣れちゃった」


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食堂へ向かうと、青白い顔で父上と母上が朝食をとっている。

「ごきげんよう」
「あぁセレネ、昨日は抜けていたみたいだが大丈夫だったか?」

「えぇ。少し疲れてしまって、部屋で寝ていました」

席につくと、カルボナーラが目の前に置かれる。
「ありがと、」

「無事でなによりだよ、」
「お二人とも顔色が悪そうですがどうかしましたか?」

フォークを手に取り、麺を口に運ぶと、父上は気まずそうに口を開いた。

「…昨日亡くなったのはルシアンという男なんだが…、昨日のことでルシアンを調べさせたらわかったことがあってな」

「なんですか?」

「…ルシアンは、私の暗殺を計画していた」

「…そんな…っ!?」

だからモローは私に…

「だから半分ほっとしているのだが…セレネが無事で本当によかった…」

「父上もご無事でなによりですよ、」

暗殺を計画ねぇー。
紙に残すからだめなんだよ、

「犯人はまだ捕まっていないらしいから、一人で城の外にでるのはやめるんだぞ?」

「はぁーい」

犯人、私だし。
まぁモローといればだいたいは大丈夫。

「それで、イムレ国の王子と結婚するのはどうだ?」
「ん?」

結婚?

「イムレ国は隣国だし、結婚して仲が良くなれば貿易も盛んになり戦争の_」

「会って考えたいです」

顔見なきゃわかんないし。

「わかった。明日はどうだ?」

「準備しておきます」



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朝食後。

ゆったりとしたワンピースにカーディガンを羽織って、頭に麦わら帽子を乗せる。

「モロー、どう?」

「悪くはないですよ。やはりドレスのほうが_」

「ドレスは…、」

“姫だからってドレスを好きになる必要なんてない。必要な時に必要なドレスを着ればいいの”

マリー…、

「馬車が来ました、行きましょう」


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「…久しぶり」

しゃがんで、マリーゴールドとパンを添えた。

モローも私の隣にしゃがみ、目を閉じている。



元気にしてた?なんて聞いても仕方ないよね。
私は相変わらず、暗殺を続けています。
モローには勝てないし、モロー以上の相棒はいないです。

貴方の遺品のネックレスと同じくらい、モロー大切にしています。

また会う日まで。どうかそちらでお元気で。



目を開けると、モローは既に立ち上がっていた。

ぼんやりと墓石のを眺める。

「モローは、なにも思っていない?」
「なににですか?」

「…私の執事になったこと」

「誇りに思っていますよ。アポリア国一の美女の世話なんてしたくてもできないですからね」

「…そうじゃなくて、ずっと友達でいたかった、とか」

モローが私の執事にならなければ、モローの母は若くして亡くならなかったかもしれないのに。

モローが執事になったのはマリーが亡くなったからであって。

でもマリーの死を恨んでいるわけではなくて。

モローが執事じゃなかったら。

モローはひとりぼっちにならなかったのかなって。


「気にしすぎです。アポリア国に何人、セレネ姫の執事になりたいと思っている人がいると思うのですか?」

「…それは、私を殺したい人も含めて?」

「含めず、です」

「知らないよ、そんなの」


モローは、友達として、私のこと好きじゃないのかな。


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再び馬車に乗ったあとアポリア街を歩く。
モローと。

「セレネ様だ」
「ドレス以外も似合うなんて、」


「ね、モロー、このスコーン美味しそうじゃない?」
新しくできたパン屋さんかな?
なぜかパン屋さんのスコーン、おいしいんだよね。

「買いますか?」
「もちろん!全部の味ください!」
「セレネ様に買っていただけるなんて光栄です、」

パン屋さんはふにゃけた笑顔をしているおじいさんだった。

「これ、サービスです」
と、スコーンと、サブレをくれた。

「ありがとうございます」

「セレネ様!私のお店も見てください!」
「セレネ姫!ぜひこちらに!」

「…ん?」

とある雑貨屋でトランペットをいじっている青年に目を惹かれる。

思わず開いていた窓から声をかけた。

「貴方、イケメンね」

「え?」

美男だなぁ、華奢で、
フェイスライン綺麗だし、
セーターがよく似合う。

「イケメンというだけで結婚はできませんよ」

「わかってるよぉー、」

スニーカーで石畳を歩き始めると、
「お嬢様、このガラスの靴を_」
と兵隊さんに声をかけられる。

「おっと、セレネ姫でございましたか、失礼いたしました」
とお辞儀をするとほかの女の子に声をかけに行った。

私のガラスの靴を履かせてる…

あぁ、あのガラスの靴が入る人が犯人、ってことか。

同じ足のサイズの人に悪いなぁ。


「モロー、この帽子似合いそう」

黒の、イケてるおじさんが被ってるイメージのやつ。

「セレネ姫にはそんなにダンディーなイメージがあるんですか、」
「うーん、」

青みがかった銀髪で、顔は…眠そう。

「ないね。」
「ですよね、」



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馬車で城に帰りながら、ぼんやりと空を見上げる。

「…モロー、明日、会わなきゃだめかな?」

「イケメンだったら損ですよ」

「たしかにねぇー、」

隣に座るモローが、ぺらぺらと本をめくる。

「疲れるんだよねぇ…、世の中の男、褒め言葉が美人と美女しかないんだもん」

「それはセレネ様のお顔を恨むべきですね」
「…それは無理だね」



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「今日の収穫はなし、と。」

「どう考えても効率悪いですよね、」

「仕方ないだろ、ガラスの靴が一つしかないんだ。履ける人が表れないと、容疑者の絞りようがないからな、」