名前を呼ぶには、近すぎる。

 公園を出ると、店を何軒か回ってお揃いのシンプルなスマホケースを買った。
 待ちきれず、夕方のファミレスに飛び込んで早速着け替えた。嬉しすぎて笑いが止まらず、お揃いのケースを持つお互いの写真をニヤニヤしながら撮り合った。
 そのままここで夕飯を食べることにして、デミグラスソースのオムライスとチーズハンバーグを「二度おいしい」なんて言いながらシェアした。お互い、シェアするのが嫌じゃないタイプだということも、今日知った。
 友達だった頃には知らなかったことが、まだまだあるだろう。ぶつかって泣きたくなる日もあるかもしれない。俺は、それでもやっぱり、まめのことをもっと知りたい。

「楽しい」
「ん?」
「……俺、今日すっげぇ楽しい」

 気付けばとっくに夜も更けていた。お互い明日も朝から授業があるので、泣く泣く帰ることにした。帰宅ラッシュも過ぎて比較的空いている駅のホームに立ち、お互い反対方向の電車を待つ。来なければいいのにと思いながら、待っている。

「うん。楽しくて、時間全然足りないね。もっと一緒にいたかったな」

 まめが意図せず俺の気持ちを言葉にしてくれて、胸が一杯になった。なんだこれ、嬉しくて泣きそうだ。ぐっと堪えて、頷く。
 そうこうしているうちに、まめの乗る電車が前の駅を出たというアナウンスが流れて、電車の音が近付いてきた。電車が、来てしまった。
 ーー寂しいな。帰りたくない。

「それじゃあね」
「うん。のむ、またね。……あっ、あの。あのさ!」
「うん?」

 まめが俺に向かって何かを言った。
 しかしそのタイミングで電車到着のメロディーが流れ、その声はかき消されてしまった。

「なに?」

 俺はまめに向かって耳を寄せた。
 耳元で、まめの声がした。