「……とりあえず、調べた感じ地獄に帰らせるのが有効っぽいですけど……」
「らしいね……」
というかそもそもテケテケって別に地獄に堕ちなきゃいけないようなことしてなくない? 人の下半身奪うから? でもそれって最初テケテケの下半身をなくした人の方が悪くない?
「まぁでも所詮机上の空論ですし……とりあえず動きましょう。お兄さんを囮にすればある程度試せるんじゃないですか? 下半身を奪うのも一瞬でできるとは思えませんし……」
「や……やだよ……。……確かにスカ兄ちゃんは人が大嫌いな怪談するような奴だけど……それでも、電波が弱くてWi−Fiがないような環境に置かれたスマホ中毒者の私が暇しないようにって……私と同じくらい不器用だけど、優しいやつなんだよ、絶対に、死んでほしくはないし、怖い思いも、ちょっとしかしてほしくない」
スマホの向こうからはなにも聞こえてこないけれど、どうしようもなく悲しい雰囲気を感じ取れた。
「……ですね。……でも、そうなるとどうするんですか? 自分が囮になるとか言ったら私がなんとしてでも駆けつけますからね。絶対そんなこと許しませんよ」
私だってそんなことしたくないし。
「とりあえずお兄さんを叩き起こして、なんとしてでもテケテケが来てることを信じさせてください」
「そ、そうだね」
一応夜中だからと気を遣って足音を立てないように階段を上る。
スカ兄ちゃんの家族が寝てる部屋に忍び込み、スカ兄ちゃんの肩を揺さぶった。
「……おい……バカ、起きて。……ねぇ……起きてってば」
……こいつ……。
下半身を奪われちゃうかもって私が助けてあげようとしてるのに呑気に寝やがって……。
デコピンしたりほっぺたをペチペチ叩いてみたりするが、全然起きやがらない。
「んん……なんだぁ? ……楠眠?」
「遅い……。来て」
このままだと叔母さんたちを起こしちゃう。
起きてからは割と素直なスカ兄ちゃんは私に引っ張られて階段を下りた。
「待て待て、今何時だと思ってんの? 眠いんだけど……」
「バカな兄ちゃんがおばあちゃんから変な話引き出すからテケテケが出てきちゃってんの」
「…………はい?」
とりあえずサンダルを履いて家を飛び出る。
スカ兄ちゃんは緊張感ない顔であくびしながらスニーカーにかかとを滑らせた。
「ねぇ、まずなにから試すべきかな」
スカ兄ちゃんの手を引っ張りながら明日ちゃんに助けを乞う。
「とりあえず、入り組んだ場所を探した方がいいですね。陰狼さんたちがまだテケテケさんと出会っていないのは、多分曲がり角が多くてスピードを出せないからです」
曲がり角って言っても昔の人が適当に家を建てたから道もぐちゃぐちゃになっちゃっただけらしいけどね。
「スカ兄、このあたりで曲がり角だらけの場所は? なかったら死ぬよ」
「死ぬって……悪い夢でも……」
テケ……テケ……
近い。
ヤバい……。殺される……。
「わ、分かったでしょ……。逃げるよ。多分、狙われてるのは私たちだけだから……」
「……俺も電波な話をたくさんしてきたからな……。とても信じられない話だが、信じてやるよ。曲がり角ってーと真田さんちとかのあたりは入り組んでる」
その真田さんちを知らないんだけど?
スカ兄ちゃんは私の心を読んだのか、私の手をとって音が聞こえたのと反対の方向、森が広がる側に歩き出した。
「み、明日ちゃん、とりあえず、地獄に帰らせればいいの……? 大丈夫?」
「大丈夫です。私、ほんの少しなら妖怪も操れるんですよ? 正攻法で弱らせれば私がその妖怪への支配権を持てるかもしれません。そうすれば、命の危険をかなり減らせます」
こ、心強い……! 明日ちゃんと会わなかったらこのテケテケが出てくることもなかったかもしれないけど、明日ちゃんがいなかったら確実に死んでいた……。
「明日ちゃんって言うの? それって昼メッセージ送ってた友達?」
「恋人で――!」
「そっ、そう! 友達!」
頼りにはなるけど余計なことは言わないで欲しいな……。
スカ兄ちゃんはぐるっと回って真田さんちとやらに向かった。
テケ……テケ……
「そっか〜。楠眠に友達ができるとは……感慨深いものだな」
「はぁ? 失礼でしょ」
ド田舎の村にしては家屋が立ち並んでいるが、真田さんち周辺は妖怪を相手にするスタジアムとしては心もとなかった。
ここからは、きっと少し離れて動いたほうがいい。
でも、誰が前を行く? 私は断固として拒否したい。なんたって死にたくないから。
私には、せっかく友達が出来たんだ…………絶対に、もっと友達らしいことして、充実した学校生活に変えるんだ。
それなのに、死んでちゃ世話ない……。
兄ちゃんだったら、フィクションな速度で動くテケテケ相手でも離れてれば直線の道でも十秒くらいは時間を稼げるはずだ。
無駄に妖怪への知識が多いスカ兄ちゃんなら、上手いこと逃げ回ってくれるだろう。
…………きっと、下半身を奪われようが私を守ってくれる。
………………。
…………でも、本当にそれでいいのかな。
そんなスカ兄ちゃんを、囮にするなんて…………今の……。
…………明日ちゃんの妖怪から生き残って調子に乗ってる私に……到底できることじゃない。
………………私が、囮になる。
「兄ちゃん、私が先歩くから、ちょっと後ろをバレないようについてきて。テケテケの対処法、いろいろ試すよ」
「はぁ!? さすがにそれには乗れない。楠眠が危ないだろうが」
スカ兄ちゃんは珍しく真面目な目をしていた。
…………それが……どうしようもなく私の逆鱗を逆撫でする。
……きっと、テケテケのせいで精神がすり減っているんだろうと分かっていたけれど、兄ちゃんに当たらずにはいられなかった。
「……うるさい! 私が……どれだけ悩んで……怖い思いして……! 私には経験があるの!!」
テケテケ以前の話だった。
「らしいね……」
というかそもそもテケテケって別に地獄に堕ちなきゃいけないようなことしてなくない? 人の下半身奪うから? でもそれって最初テケテケの下半身をなくした人の方が悪くない?
「まぁでも所詮机上の空論ですし……とりあえず動きましょう。お兄さんを囮にすればある程度試せるんじゃないですか? 下半身を奪うのも一瞬でできるとは思えませんし……」
「や……やだよ……。……確かにスカ兄ちゃんは人が大嫌いな怪談するような奴だけど……それでも、電波が弱くてWi−Fiがないような環境に置かれたスマホ中毒者の私が暇しないようにって……私と同じくらい不器用だけど、優しいやつなんだよ、絶対に、死んでほしくはないし、怖い思いも、ちょっとしかしてほしくない」
スマホの向こうからはなにも聞こえてこないけれど、どうしようもなく悲しい雰囲気を感じ取れた。
「……ですね。……でも、そうなるとどうするんですか? 自分が囮になるとか言ったら私がなんとしてでも駆けつけますからね。絶対そんなこと許しませんよ」
私だってそんなことしたくないし。
「とりあえずお兄さんを叩き起こして、なんとしてでもテケテケが来てることを信じさせてください」
「そ、そうだね」
一応夜中だからと気を遣って足音を立てないように階段を上る。
スカ兄ちゃんの家族が寝てる部屋に忍び込み、スカ兄ちゃんの肩を揺さぶった。
「……おい……バカ、起きて。……ねぇ……起きてってば」
……こいつ……。
下半身を奪われちゃうかもって私が助けてあげようとしてるのに呑気に寝やがって……。
デコピンしたりほっぺたをペチペチ叩いてみたりするが、全然起きやがらない。
「んん……なんだぁ? ……楠眠?」
「遅い……。来て」
このままだと叔母さんたちを起こしちゃう。
起きてからは割と素直なスカ兄ちゃんは私に引っ張られて階段を下りた。
「待て待て、今何時だと思ってんの? 眠いんだけど……」
「バカな兄ちゃんがおばあちゃんから変な話引き出すからテケテケが出てきちゃってんの」
「…………はい?」
とりあえずサンダルを履いて家を飛び出る。
スカ兄ちゃんは緊張感ない顔であくびしながらスニーカーにかかとを滑らせた。
「ねぇ、まずなにから試すべきかな」
スカ兄ちゃんの手を引っ張りながら明日ちゃんに助けを乞う。
「とりあえず、入り組んだ場所を探した方がいいですね。陰狼さんたちがまだテケテケさんと出会っていないのは、多分曲がり角が多くてスピードを出せないからです」
曲がり角って言っても昔の人が適当に家を建てたから道もぐちゃぐちゃになっちゃっただけらしいけどね。
「スカ兄、このあたりで曲がり角だらけの場所は? なかったら死ぬよ」
「死ぬって……悪い夢でも……」
テケ……テケ……
近い。
ヤバい……。殺される……。
「わ、分かったでしょ……。逃げるよ。多分、狙われてるのは私たちだけだから……」
「……俺も電波な話をたくさんしてきたからな……。とても信じられない話だが、信じてやるよ。曲がり角ってーと真田さんちとかのあたりは入り組んでる」
その真田さんちを知らないんだけど?
スカ兄ちゃんは私の心を読んだのか、私の手をとって音が聞こえたのと反対の方向、森が広がる側に歩き出した。
「み、明日ちゃん、とりあえず、地獄に帰らせればいいの……? 大丈夫?」
「大丈夫です。私、ほんの少しなら妖怪も操れるんですよ? 正攻法で弱らせれば私がその妖怪への支配権を持てるかもしれません。そうすれば、命の危険をかなり減らせます」
こ、心強い……! 明日ちゃんと会わなかったらこのテケテケが出てくることもなかったかもしれないけど、明日ちゃんがいなかったら確実に死んでいた……。
「明日ちゃんって言うの? それって昼メッセージ送ってた友達?」
「恋人で――!」
「そっ、そう! 友達!」
頼りにはなるけど余計なことは言わないで欲しいな……。
スカ兄ちゃんはぐるっと回って真田さんちとやらに向かった。
テケ……テケ……
「そっか〜。楠眠に友達ができるとは……感慨深いものだな」
「はぁ? 失礼でしょ」
ド田舎の村にしては家屋が立ち並んでいるが、真田さんち周辺は妖怪を相手にするスタジアムとしては心もとなかった。
ここからは、きっと少し離れて動いたほうがいい。
でも、誰が前を行く? 私は断固として拒否したい。なんたって死にたくないから。
私には、せっかく友達が出来たんだ…………絶対に、もっと友達らしいことして、充実した学校生活に変えるんだ。
それなのに、死んでちゃ世話ない……。
兄ちゃんだったら、フィクションな速度で動くテケテケ相手でも離れてれば直線の道でも十秒くらいは時間を稼げるはずだ。
無駄に妖怪への知識が多いスカ兄ちゃんなら、上手いこと逃げ回ってくれるだろう。
…………きっと、下半身を奪われようが私を守ってくれる。
………………。
…………でも、本当にそれでいいのかな。
そんなスカ兄ちゃんを、囮にするなんて…………今の……。
…………明日ちゃんの妖怪から生き残って調子に乗ってる私に……到底できることじゃない。
………………私が、囮になる。
「兄ちゃん、私が先歩くから、ちょっと後ろをバレないようについてきて。テケテケの対処法、いろいろ試すよ」
「はぁ!? さすがにそれには乗れない。楠眠が危ないだろうが」
スカ兄ちゃんは珍しく真面目な目をしていた。
…………それが……どうしようもなく私の逆鱗を逆撫でする。
……きっと、テケテケのせいで精神がすり減っているんだろうと分かっていたけれど、兄ちゃんに当たらずにはいられなかった。
「……うるさい! 私が……どれだけ悩んで……怖い思いして……! 私には経験があるの!!」
テケテケ以前の話だった。


