「だめだめだめだめっ!?」
明日ちゃんの下から這いずり出て部屋から飛び出す。
「はあっ……はあっ……」
ドアノブを押さえつけて下を向いた。
「おぉ〜い……陰狼さぁ〜ん……」
明日ちゃんはドアの向こうにぴとっと力なく張り付いた。
きっと、明日ちゃんは一晩中ゲームをする経験はなかったんだろう。その疲労とフラストレーションでおかしくなっちゃったんだ。
「ん〜……んふぅ……んくぅ……くぅ……」
ドアからゆったり滑り落ちると、寝息を立てはじめた。
―・―・―・―・―・―・―・―・―
「いやぁ〜、ホントもう迷惑かけてばっかですみません。深夜テンションだったんですかね〜。恥ずかしいですよぉ〜。あはは」
頭をかきながら笑顔で言ってのける。正直恥ずかしがっているようには見えない。
オシャレぶってるおかーさんが作ったポーチドエッグとパンケーキが目の前に置いてある。猫を被りたがる点は親子そっくり。
明日ちゃんは卵を割って黄身がとろーっと流れるのを輝く瞳で見つめた。
「おおぉ……!」
オシャレなものはどこから食べればいいか分からなくて困る。
パンケーキだかホットケーキだかを頬張りながら話し始めた。
「ほーだかぁろぉはう、んぐ、夏祭りの準備手伝いに行きませんか?」
本題の前に飲み込んだからギリギリ許す。かわいかったから全然許す。
「いや行かんし。なにそれめんどくさい」
「えぇ〜〜? 行きましょーよー。ボランティアしましょーよー」
「私そんな善人じゃないし。家でゲームしてるから一人で行ってきな」
「それはさみしいじゃないですか〜」
「じゃあ明日ちゃんも家でゲームしよ。そっちのほうが有意義」
―・―・―・―・―・―・―・―・―
「これが花火玉ですかぁ〜〜」
「叩くなっ!!」
プールの時よろしくなんやかんや連れ出されてしまった私が割とめちゃくちゃ危険なことをする明日ちゃんを花火玉から引き剥がした。
「え? ダメなんですか?」
「ダメに決まってるでしょうが。火薬が詰まってんだよ? 爆発したら私たち消し飛ぶよ?」
キョトンとした明日ちゃんを、溢れ出る母性で叱りつける。
「そうそう、危ないぞお嬢ちゃん。花火玉はおじさんたちに任せて、屋台を建てといてくれんか」
サンバイザー的な帽子をかぶった釣りでもしてそうなおじさんが袋に包まれたでっかい直方体のなにかを明日ちゃんに手渡した。
それは屋台テントのようだ。
「石畳の両サイドに印が打ってあるから、奥詰めながら置いてってな。頼んだぞー」
「任せてくださいっ!! 行きましょっ!」
全力でため息をついてから、少し先にいる明日ちゃんを追いかけた。
―・―・―・―・―・―・―・―・―
「ちょっと私最後にあいさつしてくるので、先に帰ってて大丈夫ですよ」
若い力を発揮してテントを建てまくった明日ちゃんは健気にもそんなことを言って手を振った。
私は当然のことながらそういう常識が抜け落ちているから、明日ちゃんのお言葉に甘えて逃げ帰ることにする。
すこしでも人の役に立ったのはいつぶりだろう。
優越感に浸りながら、日が沈みかける街に足を踏み出した。
「…………こんなところに壁なんてあったっけ」
国道なのか県道なのか分からない大きな道路に出ようとしたが、通ってきたと思っていた道がふさがっていた。
まぁ未だにこの辺の道よく分かってないしそんなもんか。
とりあえずもう左にしか行けないから進んでみる。もしかしたらこの道まっすぐ行ってたら家の辺りに通じてるかも知れない。
突き当たりまでふらふら歩いてみる。
左にしか道が続いていなかった。
「逆戻りやんけ……」
とにかく進まないことには帰れないので、左に続く道を進んでみる。
またしても突き当たりまで辿り着く。
もはやうなだれるしかなかった。
「世界が私の帰宅を阻止している……」
進む道を一本に絞ってくる塀をジト目で睨みつけがら迷子の責任を陰謀論に押し付ける。
早く家帰ってゲームしたいのに。
左に曲がって進む。完全に道を間違えた……こんなどこの家とも通じてない袋小路なんのためにあるんだよ。
この道は真ん中の家の人以外には優しくないのか? それにしたって大通りから繋げてあげればいいのに。
「…………戻ってるわけでもないんだ……」
本来ぐるっと回ったら右手にさっきまでいたまつりの会場が見えるはずだ。それなのに、突き当たりからは左にしか道が伸びていなかった。
「……はぁ……めんどくさい……」
進むしかない私はここからでも左にしか道が続いていないのが見える突き当たりを目指す。
もう左折したくない。
塀に囲まれていてさっきの景色となにが違うのか分からない突き当たり。その奥も、左にしか道が続いていないのが見えた。
「いやいやいや……なんだこれは……。渦巻き的な? 一方通行?」
少しずつ暗さも増して、若干怖くなってきた私は、きた道を戻ることにする。
右。右。右。右を向く。
「……。……はぁ!?」
突き当たりには、塀しかなかった。
おかしいおかしい。会場があるはずだ。それが、ない?
「明日ちゃんがなんかしたんだ……。私をここに閉じ込めようとしてるんだ……」
…………いいよ……私一人の力で乗り越えてやら。
明日ちゃんの下から這いずり出て部屋から飛び出す。
「はあっ……はあっ……」
ドアノブを押さえつけて下を向いた。
「おぉ〜い……陰狼さぁ〜ん……」
明日ちゃんはドアの向こうにぴとっと力なく張り付いた。
きっと、明日ちゃんは一晩中ゲームをする経験はなかったんだろう。その疲労とフラストレーションでおかしくなっちゃったんだ。
「ん〜……んふぅ……んくぅ……くぅ……」
ドアからゆったり滑り落ちると、寝息を立てはじめた。
―・―・―・―・―・―・―・―・―
「いやぁ〜、ホントもう迷惑かけてばっかですみません。深夜テンションだったんですかね〜。恥ずかしいですよぉ〜。あはは」
頭をかきながら笑顔で言ってのける。正直恥ずかしがっているようには見えない。
オシャレぶってるおかーさんが作ったポーチドエッグとパンケーキが目の前に置いてある。猫を被りたがる点は親子そっくり。
明日ちゃんは卵を割って黄身がとろーっと流れるのを輝く瞳で見つめた。
「おおぉ……!」
オシャレなものはどこから食べればいいか分からなくて困る。
パンケーキだかホットケーキだかを頬張りながら話し始めた。
「ほーだかぁろぉはう、んぐ、夏祭りの準備手伝いに行きませんか?」
本題の前に飲み込んだからギリギリ許す。かわいかったから全然許す。
「いや行かんし。なにそれめんどくさい」
「えぇ〜〜? 行きましょーよー。ボランティアしましょーよー」
「私そんな善人じゃないし。家でゲームしてるから一人で行ってきな」
「それはさみしいじゃないですか〜」
「じゃあ明日ちゃんも家でゲームしよ。そっちのほうが有意義」
―・―・―・―・―・―・―・―・―
「これが花火玉ですかぁ〜〜」
「叩くなっ!!」
プールの時よろしくなんやかんや連れ出されてしまった私が割とめちゃくちゃ危険なことをする明日ちゃんを花火玉から引き剥がした。
「え? ダメなんですか?」
「ダメに決まってるでしょうが。火薬が詰まってんだよ? 爆発したら私たち消し飛ぶよ?」
キョトンとした明日ちゃんを、溢れ出る母性で叱りつける。
「そうそう、危ないぞお嬢ちゃん。花火玉はおじさんたちに任せて、屋台を建てといてくれんか」
サンバイザー的な帽子をかぶった釣りでもしてそうなおじさんが袋に包まれたでっかい直方体のなにかを明日ちゃんに手渡した。
それは屋台テントのようだ。
「石畳の両サイドに印が打ってあるから、奥詰めながら置いてってな。頼んだぞー」
「任せてくださいっ!! 行きましょっ!」
全力でため息をついてから、少し先にいる明日ちゃんを追いかけた。
―・―・―・―・―・―・―・―・―
「ちょっと私最後にあいさつしてくるので、先に帰ってて大丈夫ですよ」
若い力を発揮してテントを建てまくった明日ちゃんは健気にもそんなことを言って手を振った。
私は当然のことながらそういう常識が抜け落ちているから、明日ちゃんのお言葉に甘えて逃げ帰ることにする。
すこしでも人の役に立ったのはいつぶりだろう。
優越感に浸りながら、日が沈みかける街に足を踏み出した。
「…………こんなところに壁なんてあったっけ」
国道なのか県道なのか分からない大きな道路に出ようとしたが、通ってきたと思っていた道がふさがっていた。
まぁ未だにこの辺の道よく分かってないしそんなもんか。
とりあえずもう左にしか行けないから進んでみる。もしかしたらこの道まっすぐ行ってたら家の辺りに通じてるかも知れない。
突き当たりまでふらふら歩いてみる。
左にしか道が続いていなかった。
「逆戻りやんけ……」
とにかく進まないことには帰れないので、左に続く道を進んでみる。
またしても突き当たりまで辿り着く。
もはやうなだれるしかなかった。
「世界が私の帰宅を阻止している……」
進む道を一本に絞ってくる塀をジト目で睨みつけがら迷子の責任を陰謀論に押し付ける。
早く家帰ってゲームしたいのに。
左に曲がって進む。完全に道を間違えた……こんなどこの家とも通じてない袋小路なんのためにあるんだよ。
この道は真ん中の家の人以外には優しくないのか? それにしたって大通りから繋げてあげればいいのに。
「…………戻ってるわけでもないんだ……」
本来ぐるっと回ったら右手にさっきまでいたまつりの会場が見えるはずだ。それなのに、突き当たりからは左にしか道が伸びていなかった。
「……はぁ……めんどくさい……」
進むしかない私はここからでも左にしか道が続いていないのが見える突き当たりを目指す。
もう左折したくない。
塀に囲まれていてさっきの景色となにが違うのか分からない突き当たり。その奥も、左にしか道が続いていないのが見えた。
「いやいやいや……なんだこれは……。渦巻き的な? 一方通行?」
少しずつ暗さも増して、若干怖くなってきた私は、きた道を戻ることにする。
右。右。右。右を向く。
「……。……はぁ!?」
突き当たりには、塀しかなかった。
おかしいおかしい。会場があるはずだ。それが、ない?
「明日ちゃんがなんかしたんだ……。私をここに閉じ込めようとしてるんだ……」
…………いいよ……私一人の力で乗り越えてやら。


