「私、文恋明日といいます。あなたのことを見ているうちに惚れてしまいました。どうか私とお付き合いいただけませんか?」
私は、告白されていた。
手紙で校舎裏に呼び出されたが誰もおらず少し落胆していると、後ろから話しかけられ、そのままその子に告白された。
「あ、あぁ……あ……」
後退りして震える私に、その子は戸惑いの感情を見せる。
「あー……人見知り……なんですよね。えっと、急に詰め寄ってしまい申し訳ありません……。私は5組の者です。学校で、クマが濃いあなたを見ているとどうにも魅力的に見えてしまい……」
その子のまくしたてるように発する言葉に私の鼓動は速さを増す。
「あぁ……あっあぁぁああ!!」
「私どうにもダメ人間が好物でして……ゲームが趣味だそうですね。あなたのことを知れば知るほど私の望むダメ人間そのものなのです……あなたは陰狼楠眠さんですよね? あなたがそうして人見知りをする姿も私の気持ちを昂ぶらせます……もう一度言いますが、あなたのことが好きです。お付き合いしていただけませんか」
どさっと身体が崩れ落ちる。
尻もちをつき低くなった視界からは色が消えていて、どんなものも認識に時間がかかった。
その緊張は恋愛と似ても似つかず、その理由は明らか…………その子には、『顔がなかった』。
「あっ……あぁ……の……のっぺら…………」
荒い息では全く言葉にできなかった。
開きっぱなしの口はもはや閉じることはできず、そこからは空気が漏れ出すばかり。
誰か……だ……誰……か……。
「のっぺら……? ……あ、ちょっと……あぁ……すみません。あは、ちょっと抑えられませんでした…………」
その子は手鏡を取り出し、自らの顔を確認するとあたかも乙女のように頬を赤く染めた。
「ひぃっ!?」
校舎の壁に、赤い手形がつき、たらりと赤い液体が伝った…………。
「ん? …………ああっ……すみません……ちょっと……感情が昂ぶってまして…………」
コト……コト……コト……コト……と、どこかからハイヒールのような靴音が聞こえる。
カサカサ……と。
ぴしゃぴしゃ……と。
アーアー……と。
音…………叫び声…………。
「すみません、すみません…………怖がらないでください……あなたが怖がっている姿は……私を昂ぶらせる…………」
昂ぶ…………うっあぁ……なにが……。
いつの間にか涙まで出てきていた。
「ひやっ!? こっこないでっ……」
近寄ってくるその子から後ろに後退って逃げる。
なんで私がこんな………………。
「違うんです……あなたに危害を加えるつもりはありません……ですが……『私は感情が昂ぶると怪異を呼び出してしまうのです』……あなたの涙を見ると私は少なからず興奮してしまいます……恐怖を克服してください……私にはもう制御できないほどあなたへの思いが募っています……ふふ……」
パシャリ
「はっ!? か……かめ……しゃった……」
なんなの……なんでこんないっぱい音が……。
かがみ込んで私の顔を覗き込んだその子の顔にはやっぱり全てのパーツがなかった。
「大丈夫ですよ……怖くありません……だから、だから私の昂ぶりを抑えてください……あぁ……あなたは美しい…………その顔を見るとそれらの怪異は活発になります…………」
「なにっ……言って…………ひやっ!?」
ぴとっと頬に触れたその子の手はゾッとするほど冷たかった。
「…………ふふ、お返事いただけなさそうですね……。またお会いしましょう。そのときはきっと」
三秒ほど経ってから手は離れ、表情が存在しないながらも、果てしない悲しみの色がその声からは感じ取れた。
尻もちをついた私に深く深くお辞儀をしてからその場を立ち去る。
その後ろ姿からはどうしようもなく庇護欲を駆り立てられ、見えなくなった今からでも追いかけて告白を受け入れた方が良いような気にさせてきた。が、私の理性は裏腹にまだ恐怖を覚えているらしく、動こうとする足を無理矢理止めてくる。
恋愛経験0の私でも気がついた。
あの子は、本気で私のことが好きなんだ。
私は、告白されていた。
手紙で校舎裏に呼び出されたが誰もおらず少し落胆していると、後ろから話しかけられ、そのままその子に告白された。
「あ、あぁ……あ……」
後退りして震える私に、その子は戸惑いの感情を見せる。
「あー……人見知り……なんですよね。えっと、急に詰め寄ってしまい申し訳ありません……。私は5組の者です。学校で、クマが濃いあなたを見ているとどうにも魅力的に見えてしまい……」
その子のまくしたてるように発する言葉に私の鼓動は速さを増す。
「あぁ……あっあぁぁああ!!」
「私どうにもダメ人間が好物でして……ゲームが趣味だそうですね。あなたのことを知れば知るほど私の望むダメ人間そのものなのです……あなたは陰狼楠眠さんですよね? あなたがそうして人見知りをする姿も私の気持ちを昂ぶらせます……もう一度言いますが、あなたのことが好きです。お付き合いしていただけませんか」
どさっと身体が崩れ落ちる。
尻もちをつき低くなった視界からは色が消えていて、どんなものも認識に時間がかかった。
その緊張は恋愛と似ても似つかず、その理由は明らか…………その子には、『顔がなかった』。
「あっ……あぁ……の……のっぺら…………」
荒い息では全く言葉にできなかった。
開きっぱなしの口はもはや閉じることはできず、そこからは空気が漏れ出すばかり。
誰か……だ……誰……か……。
「のっぺら……? ……あ、ちょっと……あぁ……すみません。あは、ちょっと抑えられませんでした…………」
その子は手鏡を取り出し、自らの顔を確認するとあたかも乙女のように頬を赤く染めた。
「ひぃっ!?」
校舎の壁に、赤い手形がつき、たらりと赤い液体が伝った…………。
「ん? …………ああっ……すみません……ちょっと……感情が昂ぶってまして…………」
コト……コト……コト……コト……と、どこかからハイヒールのような靴音が聞こえる。
カサカサ……と。
ぴしゃぴしゃ……と。
アーアー……と。
音…………叫び声…………。
「すみません、すみません…………怖がらないでください……あなたが怖がっている姿は……私を昂ぶらせる…………」
昂ぶ…………うっあぁ……なにが……。
いつの間にか涙まで出てきていた。
「ひやっ!? こっこないでっ……」
近寄ってくるその子から後ろに後退って逃げる。
なんで私がこんな………………。
「違うんです……あなたに危害を加えるつもりはありません……ですが……『私は感情が昂ぶると怪異を呼び出してしまうのです』……あなたの涙を見ると私は少なからず興奮してしまいます……恐怖を克服してください……私にはもう制御できないほどあなたへの思いが募っています……ふふ……」
パシャリ
「はっ!? か……かめ……しゃった……」
なんなの……なんでこんないっぱい音が……。
かがみ込んで私の顔を覗き込んだその子の顔にはやっぱり全てのパーツがなかった。
「大丈夫ですよ……怖くありません……だから、だから私の昂ぶりを抑えてください……あぁ……あなたは美しい…………その顔を見るとそれらの怪異は活発になります…………」
「なにっ……言って…………ひやっ!?」
ぴとっと頬に触れたその子の手はゾッとするほど冷たかった。
「…………ふふ、お返事いただけなさそうですね……。またお会いしましょう。そのときはきっと」
三秒ほど経ってから手は離れ、表情が存在しないながらも、果てしない悲しみの色がその声からは感じ取れた。
尻もちをついた私に深く深くお辞儀をしてからその場を立ち去る。
その後ろ姿からはどうしようもなく庇護欲を駆り立てられ、見えなくなった今からでも追いかけて告白を受け入れた方が良いような気にさせてきた。が、私の理性は裏腹にまだ恐怖を覚えているらしく、動こうとする足を無理矢理止めてくる。
恋愛経験0の私でも気がついた。
あの子は、本気で私のことが好きなんだ。


