「ハイハイで?だあれ?死ぬのは」
何故か爺の顔が歪む。
(『お前の強さが最大限に生かされる時が来たぞ』とか言っていたのになんなんだ?まさか私でも手こずる人とか?)
「妖の上の家『狐鬼』の当主が変わったのを知っているか?」
(どこもかしこもこの話だなぁー。特に爺はこんな噂話言わないはずだけど。関係あるの?)
「千代が話してたけど…まさか媚薬を盛れとかだったら殴るよ?」
「そうだ…。妖の上の家狐鬼 九夜殺せ」
(『そうだ』ってややこしい言い方しないでよ。本当に殴るとこだったし)
そう言いながら爺は胸元から一枚の写真を取り出す。何かの女性誌の切り抜きのようなものだった。
(この人…今朝の高級車)
(千代が話していたのはこの人か。散々否定しまくってたのに今朝あった人って最悪…)
この店『白檀』では普通の茶屋も営んでいるため、客もいる。
「忌々しい家め。あいつら妖は異形と違って人間の味方とか言ってるが、人間をこき使っているだけだろう!!」
男性客の怒った声が響く。会話しているように聞こえるから二人組だろう。
(こう言うことか…今回の暗殺依頼…)
この世には妖艶な生き物がいる。『物怪』そう呼ばれている。ただ江戸時代の狐火騒ぎにより、今まで曖昧だった物怪というものがはっきりした。妖それは狐火騒ぎにより人間の味方となった物怪。上の家と下の家に分かれ現在は上の家の方が優勢であり、両家とも人間の娘を嫁に迎えているので妖の力は弱くなっているはずだが、今も劣らない何か秘伝があるのだろう。そして人間の味方にならなかった物怪。異形。それは妖と同レベルの物怪で人間を毛嫌いし、古くから人間の娘が八つ裂きにされていたりする。妖の上の家は軍を作ったに等しく、下の家は商業を発展させたに等しい。どちらもが人間よりもデキてしまったため、人間よりも妖の方が地位が高い。それを忌々しく思うものもいる。ただ、妖への嫁入りは大変名誉なこととされていて、大体の少女が妖への嫁入りを夢見ている。
「妖って相当強いでしょう?死にに行けってこと?」
か弱き女子のように答えてみる。
「お前の腕ならいけるだろう。最初は毒ですぐ死ななかったら、短刀でも使え」
お前ならいけるだろうと挑発されている気がして、くるりと爺のそっぽを向く。こう言う言われ方もムカつく。極端に子供扱いだといやな気になるが試されるような言い方はなおさら苛立ちがますような気がする。店の方へ歩き、男性客に「おかわりはいかがでしょうか?」と聞きカップに注ぐ。この茶屋は和風ではなく、異国の草のようなものを使った妖しい佇まいの茶屋であり、不思議な佇まいのところが緋花が気に入っている理由の一つだ。経営しているのは爺だが。
「ごゆっくりお楽しみください。」
こうして手伝いに来ているように見せかけ、爺の引き受けた暗殺依頼の事を聞く、それか普通に手伝いかが日課である。緋花は家が好きでもないし、叔父や叔母も緋花がどこかに寄り道しているのには興味ないのだから緋花は家族同然の爺の手伝いをしているのだ。店の裏に戻ると爺が大量の毒草を煎じている。
(怖いジジイ…)
部屋にある薬草は茶屋用と裏仕事用で分かれており、茶屋で罪もない人が死なないようにしている。
(まあ当たり前だけど)
こんなふうに毎日を満喫できている思う。家でどれだけひどいことを言われようと、ここでは看板娘である緋花目当てにくる客までいる。そして依頼の仕事をやるということが自分の存在意義を示してくれている気がするからだ。
カランカラーン
高らかにドアベルの音が鳴り響く。
その音に合わせて緋花は笑顔を作り、表に出る。最初は笑顔を作るのは嫌だったが、最近はだいぶと慣れてきたようだ。
「いらっしゃいませ」
ピキッと背筋が凍る。
ああ感じる妖というものの強さ、前に立つと自分が情けなくなる美貌。何故か足元がソワソワしてくる。
目の前には朝あった高級車の人であり、爺が言った女性誌の切り抜きの人だったりもする。
(この人を殺すのね…)
妙に納得感がある。この人を殺すのに。旧制高等学校三年、狐鬼 九夜本日二回目のご対面である。
「お席にご案内いたします」
(冷静に冷静に!)
こんな緋花に対し、九夜は緋花を見ようともせず、見たと思えば醜女に向けるような目をするはずだったが…
目を見開く、その所作も美しい。九夜が目を見開くのに合わせてこちらまで目を開く。異様な光景だ。絶世の美男がそこらへんの娘と目を見合わせている。変なことをしている自覚はあることもある。
「まだこの世にこんなに綺麗な人がいるとはな…」
(はあ…何を言ってるんだコイツ)
あの女性界を騒がせている麗しの貴公子に「綺麗」と言われた。絶対に今女性が来たら確実に居場所がなくなる気がする。
カランカラーン
ドアベルがなる。すると一人に女性が入ってくる。
緋花は今最高に不細工な顔をしている自信がある…
(まさかよりによっての女性!今なんで女性が来るかな?)
しかもまたしっかりと綺麗な女性だったのだ。二十を過ぎていると言われればそう見えるし、まだ少女だと言われるとそうも見えてくる人である。九夜の恋人かもしれない…
(嫉妬?とかで殺される…)
「あら、なあに二人とも知り合い?」
男の気を動転させるような甘い声。
(うん…間違いなく恋人だ。うん。しかもだいぶと嫉妬心が多そう…)
「いいえ違います。母上」
ピキッ
また背筋が凍りついた気がする。
(んん?今母上って言わなかった?じゃあこの若くて綺麗な人お母さん?関わりたくない世界線だ…こう言う時は…)
「お席にご案内いたします」
(…冷静に…あの不細工ババア(叔母)の相手をして身についた必殺法)
「名前は?」
(名前を聞かれた!?コイツとは全然話が合わない気がする…)
九夜はある意味美貌以外にも有名だった。女性嫌い。冷酷無慈悲。弱きものを助けると言う考え方がない。もしかしたら今まで違う人に声をかけているのか?だとしたらおかしい。男性客しかいない。意外と恋愛対象が男性とかか?それはそれで良いのかもしれないが。
「名前は?」
肩に力が加わる気がした。ビックっと肩が震える。あぁそうかこの変態に掴まれたのか。いや安堵はできない。まぁ他の女性なら黄色い悲鳴どころじゃないかもしれないが…いくら二十歳未満の美男子でも肩をつかまれるのは気持ち悪い。
ただ今は名前を答えなければ話してくれないだろう。冷静に答えようと努力する。
「曼珠沙華 緋花でございます。すぐにお答えできなく申し訳ありませんでした。」
叔母に叩き込まれた所作で、我ながら美しい礼をする。こうすることで肩に加えられていた力がどこかへいく。なるべくこの美男子とは関わりたくない。今の生活にはだいぶ満足している方だし、殺されるなんてまっぴらだ。
「九夜。あまり女の子に手を出さないの。全くもー」
九夜の母?の助け舟もあまり意味なく、居心地が悪くなる一方だ。
(もう嫌だ、今にも逃げ出したい。)
「はい」
淡々と母親に返事する九夜は少し冷たい。さすがの鉄仮面は母にも冷たいらしい。
「せっかくだしお嬢さんも同席して下さらないかしら?」
朗らかに笑う女性から発せられた言葉は緋花の身を硬くする。妖の上家が一緒に醜女と楽しく茶を飲むはずがない。
「いえ私はご一緒させていただける身分ではございません」
九夜の顔が険しくなったのは、気のせいだと信じたい。
(あぁ…やなオトコ)
「そこをなんとかしたら?」
おっとりと言われると、従いたくなる。これがこの女の魅力だろう。それ以外にもこの女性と話をしてみたいその欲が少しボロを出してしまいそうになる。もしこの男だけならもう即刻立ち去って行けたかもしれないが…
(一緒に…ダメ!)
緋花のよく回る頭を回転させ、冷静に何も思っていないかのように続ける。
「あちらにお席にお座りください。ご注文がお決まり次第およびください」
九夜までとは行かないがそれ並みに淡々といく。妖の家に対しては失礼すぎたかもしれないがこれぐらいしないと意味がないだろう。店の裏に行き、後日暗殺の話を詳しく聞くといい店を早足に出る。
(ああー。怖かったー。私と同席したいなんて特殊趣味)
何故か爺の顔が歪む。
(『お前の強さが最大限に生かされる時が来たぞ』とか言っていたのになんなんだ?まさか私でも手こずる人とか?)
「妖の上の家『狐鬼』の当主が変わったのを知っているか?」
(どこもかしこもこの話だなぁー。特に爺はこんな噂話言わないはずだけど。関係あるの?)
「千代が話してたけど…まさか媚薬を盛れとかだったら殴るよ?」
「そうだ…。妖の上の家狐鬼 九夜殺せ」
(『そうだ』ってややこしい言い方しないでよ。本当に殴るとこだったし)
そう言いながら爺は胸元から一枚の写真を取り出す。何かの女性誌の切り抜きのようなものだった。
(この人…今朝の高級車)
(千代が話していたのはこの人か。散々否定しまくってたのに今朝あった人って最悪…)
この店『白檀』では普通の茶屋も営んでいるため、客もいる。
「忌々しい家め。あいつら妖は異形と違って人間の味方とか言ってるが、人間をこき使っているだけだろう!!」
男性客の怒った声が響く。会話しているように聞こえるから二人組だろう。
(こう言うことか…今回の暗殺依頼…)
この世には妖艶な生き物がいる。『物怪』そう呼ばれている。ただ江戸時代の狐火騒ぎにより、今まで曖昧だった物怪というものがはっきりした。妖それは狐火騒ぎにより人間の味方となった物怪。上の家と下の家に分かれ現在は上の家の方が優勢であり、両家とも人間の娘を嫁に迎えているので妖の力は弱くなっているはずだが、今も劣らない何か秘伝があるのだろう。そして人間の味方にならなかった物怪。異形。それは妖と同レベルの物怪で人間を毛嫌いし、古くから人間の娘が八つ裂きにされていたりする。妖の上の家は軍を作ったに等しく、下の家は商業を発展させたに等しい。どちらもが人間よりもデキてしまったため、人間よりも妖の方が地位が高い。それを忌々しく思うものもいる。ただ、妖への嫁入りは大変名誉なこととされていて、大体の少女が妖への嫁入りを夢見ている。
「妖って相当強いでしょう?死にに行けってこと?」
か弱き女子のように答えてみる。
「お前の腕ならいけるだろう。最初は毒ですぐ死ななかったら、短刀でも使え」
お前ならいけるだろうと挑発されている気がして、くるりと爺のそっぽを向く。こう言う言われ方もムカつく。極端に子供扱いだといやな気になるが試されるような言い方はなおさら苛立ちがますような気がする。店の方へ歩き、男性客に「おかわりはいかがでしょうか?」と聞きカップに注ぐ。この茶屋は和風ではなく、異国の草のようなものを使った妖しい佇まいの茶屋であり、不思議な佇まいのところが緋花が気に入っている理由の一つだ。経営しているのは爺だが。
「ごゆっくりお楽しみください。」
こうして手伝いに来ているように見せかけ、爺の引き受けた暗殺依頼の事を聞く、それか普通に手伝いかが日課である。緋花は家が好きでもないし、叔父や叔母も緋花がどこかに寄り道しているのには興味ないのだから緋花は家族同然の爺の手伝いをしているのだ。店の裏に戻ると爺が大量の毒草を煎じている。
(怖いジジイ…)
部屋にある薬草は茶屋用と裏仕事用で分かれており、茶屋で罪もない人が死なないようにしている。
(まあ当たり前だけど)
こんなふうに毎日を満喫できている思う。家でどれだけひどいことを言われようと、ここでは看板娘である緋花目当てにくる客までいる。そして依頼の仕事をやるということが自分の存在意義を示してくれている気がするからだ。
カランカラーン
高らかにドアベルの音が鳴り響く。
その音に合わせて緋花は笑顔を作り、表に出る。最初は笑顔を作るのは嫌だったが、最近はだいぶと慣れてきたようだ。
「いらっしゃいませ」
ピキッと背筋が凍る。
ああ感じる妖というものの強さ、前に立つと自分が情けなくなる美貌。何故か足元がソワソワしてくる。
目の前には朝あった高級車の人であり、爺が言った女性誌の切り抜きの人だったりもする。
(この人を殺すのね…)
妙に納得感がある。この人を殺すのに。旧制高等学校三年、狐鬼 九夜本日二回目のご対面である。
「お席にご案内いたします」
(冷静に冷静に!)
こんな緋花に対し、九夜は緋花を見ようともせず、見たと思えば醜女に向けるような目をするはずだったが…
目を見開く、その所作も美しい。九夜が目を見開くのに合わせてこちらまで目を開く。異様な光景だ。絶世の美男がそこらへんの娘と目を見合わせている。変なことをしている自覚はあることもある。
「まだこの世にこんなに綺麗な人がいるとはな…」
(はあ…何を言ってるんだコイツ)
あの女性界を騒がせている麗しの貴公子に「綺麗」と言われた。絶対に今女性が来たら確実に居場所がなくなる気がする。
カランカラーン
ドアベルがなる。すると一人に女性が入ってくる。
緋花は今最高に不細工な顔をしている自信がある…
(まさかよりによっての女性!今なんで女性が来るかな?)
しかもまたしっかりと綺麗な女性だったのだ。二十を過ぎていると言われればそう見えるし、まだ少女だと言われるとそうも見えてくる人である。九夜の恋人かもしれない…
(嫉妬?とかで殺される…)
「あら、なあに二人とも知り合い?」
男の気を動転させるような甘い声。
(うん…間違いなく恋人だ。うん。しかもだいぶと嫉妬心が多そう…)
「いいえ違います。母上」
ピキッ
また背筋が凍りついた気がする。
(んん?今母上って言わなかった?じゃあこの若くて綺麗な人お母さん?関わりたくない世界線だ…こう言う時は…)
「お席にご案内いたします」
(…冷静に…あの不細工ババア(叔母)の相手をして身についた必殺法)
「名前は?」
(名前を聞かれた!?コイツとは全然話が合わない気がする…)
九夜はある意味美貌以外にも有名だった。女性嫌い。冷酷無慈悲。弱きものを助けると言う考え方がない。もしかしたら今まで違う人に声をかけているのか?だとしたらおかしい。男性客しかいない。意外と恋愛対象が男性とかか?それはそれで良いのかもしれないが。
「名前は?」
肩に力が加わる気がした。ビックっと肩が震える。あぁそうかこの変態に掴まれたのか。いや安堵はできない。まぁ他の女性なら黄色い悲鳴どころじゃないかもしれないが…いくら二十歳未満の美男子でも肩をつかまれるのは気持ち悪い。
ただ今は名前を答えなければ話してくれないだろう。冷静に答えようと努力する。
「曼珠沙華 緋花でございます。すぐにお答えできなく申し訳ありませんでした。」
叔母に叩き込まれた所作で、我ながら美しい礼をする。こうすることで肩に加えられていた力がどこかへいく。なるべくこの美男子とは関わりたくない。今の生活にはだいぶ満足している方だし、殺されるなんてまっぴらだ。
「九夜。あまり女の子に手を出さないの。全くもー」
九夜の母?の助け舟もあまり意味なく、居心地が悪くなる一方だ。
(もう嫌だ、今にも逃げ出したい。)
「はい」
淡々と母親に返事する九夜は少し冷たい。さすがの鉄仮面は母にも冷たいらしい。
「せっかくだしお嬢さんも同席して下さらないかしら?」
朗らかに笑う女性から発せられた言葉は緋花の身を硬くする。妖の上家が一緒に醜女と楽しく茶を飲むはずがない。
「いえ私はご一緒させていただける身分ではございません」
九夜の顔が険しくなったのは、気のせいだと信じたい。
(あぁ…やなオトコ)
「そこをなんとかしたら?」
おっとりと言われると、従いたくなる。これがこの女の魅力だろう。それ以外にもこの女性と話をしてみたいその欲が少しボロを出してしまいそうになる。もしこの男だけならもう即刻立ち去って行けたかもしれないが…
(一緒に…ダメ!)
緋花のよく回る頭を回転させ、冷静に何も思っていないかのように続ける。
「あちらにお席にお座りください。ご注文がお決まり次第およびください」
九夜までとは行かないがそれ並みに淡々といく。妖の家に対しては失礼すぎたかもしれないがこれぐらいしないと意味がないだろう。店の裏に行き、後日暗殺の話を詳しく聞くといい店を早足に出る。
(ああー。怖かったー。私と同席したいなんて特殊趣味)


