「わたしさ、去年A組だったんだよね。早苗ちゃん何組だった?」
「私、H組だったよ。そりゃ顔見たことないよね」
「ね! 階が全然ちがうもんね。A組とH組だったら」
心が弾んだ。
「休み時間、しゃべれる人がいるって、こんなに素晴らしいことなんだ!」
小学3年生のような感想。
だけど『1人じゃない』ってこんなに楽しくて、落ち着くなんて久しぶりだった。
10分間はあっという間で、気がつけば次の授業の先生が教室に入っている。
終いには「おいそこ。うるさいぞ。いつまでしゃべってる。授業始めるぞ」と注意されてしまった。
一瞬みんなの視線をバッと集めてしまい、思わず顔を真っ赤にして下をうつむいた。
目立ちたくないのに。
――やってしまった。
新学期初日なのに。
☆
「真実ちゃーん……帰らない?」
教室の前の方で鞄に教科書を入れている真実ちゃん。廊下からそっと声を投げかけた。
新学期が始まってしばらくは、お昼前に学校が終わる。
何となく早苗ちゃんには声をかけにくくて、わたしはF組にやってきた。
「あ、美鈴ちゃん」
わたしの声に気がついた真実ちゃん。その目には「え?」っていう驚きの色が見てとれた。
「あ、真実ちゃんの友達?」
真実ちゃんが別の声に呼ばれて振り返る。そこにはわたしの知らない人がいた。
「あ、うん。去年まで同じクラスだったんだ」
「そうなんだ。へえ」
その子はチラリとわたしに視線を移すと、「フン」と言わんばかりに真実ちゃんに視線を戻した。
「帰ろっか。スーパー寄って良い?」
「うん、良いよ」
ちょっと困ったように首をかしげる真実ちゃん。
わたしは小さく「そっか。じゃね」とだけ言い残して、昇降口へと向かった。
真実ちゃんは胸の前で、小さく手を合わせていた。
「ごめんね」とでも言いたげに。
1人で下る、学校の前の坂。きっと入学してから初めてだと思う。
いつも隣で笑ってくれて、たくさん話をしてくれた人は……きっともういない。
風が胸を突き抜けて、背中から出ていく。
(明日からどうしよう)
笑って話をしている男子たちが、わたしを追い抜くたびに、なぜだか無性にイライラした。
「私、H組だったよ。そりゃ顔見たことないよね」
「ね! 階が全然ちがうもんね。A組とH組だったら」
心が弾んだ。
「休み時間、しゃべれる人がいるって、こんなに素晴らしいことなんだ!」
小学3年生のような感想。
だけど『1人じゃない』ってこんなに楽しくて、落ち着くなんて久しぶりだった。
10分間はあっという間で、気がつけば次の授業の先生が教室に入っている。
終いには「おいそこ。うるさいぞ。いつまでしゃべってる。授業始めるぞ」と注意されてしまった。
一瞬みんなの視線をバッと集めてしまい、思わず顔を真っ赤にして下をうつむいた。
目立ちたくないのに。
――やってしまった。
新学期初日なのに。
☆
「真実ちゃーん……帰らない?」
教室の前の方で鞄に教科書を入れている真実ちゃん。廊下からそっと声を投げかけた。
新学期が始まってしばらくは、お昼前に学校が終わる。
何となく早苗ちゃんには声をかけにくくて、わたしはF組にやってきた。
「あ、美鈴ちゃん」
わたしの声に気がついた真実ちゃん。その目には「え?」っていう驚きの色が見てとれた。
「あ、真実ちゃんの友達?」
真実ちゃんが別の声に呼ばれて振り返る。そこにはわたしの知らない人がいた。
「あ、うん。去年まで同じクラスだったんだ」
「そうなんだ。へえ」
その子はチラリとわたしに視線を移すと、「フン」と言わんばかりに真実ちゃんに視線を戻した。
「帰ろっか。スーパー寄って良い?」
「うん、良いよ」
ちょっと困ったように首をかしげる真実ちゃん。
わたしは小さく「そっか。じゃね」とだけ言い残して、昇降口へと向かった。
真実ちゃんは胸の前で、小さく手を合わせていた。
「ごめんね」とでも言いたげに。
1人で下る、学校の前の坂。きっと入学してから初めてだと思う。
いつも隣で笑ってくれて、たくさん話をしてくれた人は……きっともういない。
風が胸を突き抜けて、背中から出ていく。
(明日からどうしよう)
笑って話をしている男子たちが、わたしを追い抜くたびに、なぜだか無性にイライラした。



