どこがリアルなんだよ

なんてことない、フツーの顔で授業を受けているように見えて、きっとみんな心の中では安心してるはず。

「ああ、良かった。1人にならなくて」って。わたしには分かる。

1人が多かったわたしは、いつしか『匂い』を嗅ぎ取るのだけは上手くなっていた。

自分でもため息が出るような特技。

「じゃあ、今日は初日だからここまでな」

自己紹介を含めた、どうでも良い英語の授業。

「それなら今日じゃなくて良いじゃん」と心の中でつぶやく。

こういうところが、柳ケ丘高校が『自称進学校』と揶揄される所以なんだよなとつくづく思う。

そしてこれからわたしの1年間を左右する時間が始まる。

10分間の休み時間が。

(話かけてみようかな……)

先生がサッと教室から出ていくと、一気に安どのため息と、友人関係を強固にするための声がいたるところから湧き上がる。

でも、右側の子はやっぱり1人。近くの子としゃべったり席を立って移動することもない。

(でもな。失敗したくない)

わたしは揺れた。

根が陽キャな子だったらどうしよう。

「やっぱり合わない」って思ったらどうしよう。

わたしの隣なんだから、失敗しても明日席替えすることはない。

数多の失敗を繰り返してきた、わたしにしか分からない感覚。

「ねえ」

にぎやかな笑い声が飛び交う教室の中、小さな声がわたしに向けられた。

「……え?」

かき消されそうなほどの小さな声だった。

思わず声の方に顔を向けると、わたしが話かけようか悩んでいる子だった。

「私、早苗だよ。相沢早苗。よろしくね」
「あ……わたし、水橋美鈴。よろしく」

思わず顔がほころぶ。

新しい教室に入って、初めて口を開いた瞬間だった。