どこがリアルなんだよ

「早苗ちゃん、そろそろ晩ご飯だね! 食堂の前、行く?」
「……うん」
「分かった。行こう!」

食堂に向かうわたしの後を、しゃべることなく早苗ちゃんはついてきた。

(……あ、松中さんたちだ)

あれ以来、松中さんたちとちゃんとしゃべることができていない。

2人はわたしたちを見つけると、くるりと前を向いた。早苗ちゃんに前に行ってもらって、わたしは気配を消すように、その後で待つ。まるでその場にはいないかのように。

(今は、我慢……自由時間になれば、早苗ちゃんと話ができるし……)
(松中さんたちは、いないから……)

松中さんと山本さんは、明らかに早苗ちゃんだけに話かけながら、ご飯を食べていた。
笑顔で2人としゃべる、早苗ちゃん。いったい何を考えているんだろう……。

わたしは横で、静かに箸を口元へと運んでいく。

☆

お風呂が終わると、わたしの心は、これからの時間を想像して踊っていた。2人きりの空間、2人きりの時間が始まる。

「消灯は23時だから」とご飯の後に先生が言ってたけど、きっと誰も守らないだろう。小学生じゃないんだから。

(早苗ちゃん、何時まで起きてるかな……)

ベッドに寝ころがりながら、気がつけば一緒に寝落ちしてる。そんな夜を想像して、ワクワクが止まらなかった。

「あ、お帰り! 早苗ちゃん」

わたしに目を向けると、一瞬バツが悪そうな顔をした。

「あ、うん。お風呂広かったね」
「ね! そのバスタオル、どこで買ったの? 可愛いね」

早苗ちゃんが首に巻いていたバスタオル。分厚いし柔らかそうで、良いなと思った。

「……うーん、どうだろ。忘れちゃった」

(……早苗ちゃん?)

はぐらかすように、早苗ちゃんはバッグの中に手を入れた。

「ね、今日さ……何時まで起きてる?」

何かが気になって、思わず探るように早苗ちゃんに尋ねた。

「あ……」
「え?」
「ごめん、ちょっと私、行かないといけないから……出るね」
「トイレ?」
「ううん」

「あ……」
ポカンとするわたしをよそに、洗面道具をバッグにねじ込むと、早苗ちゃんは足早に部屋を出ていった。

(え……?)

わたしだけが残った、2人部屋。

しばらく意味が分からずに、ずっと立ちつくしていた。