どこがリアルなんだよ

「じゃ、私、部活行くね」
「あ、うん! 早苗ちゃん、また明日ね」

胸の前でヒラヒラと小さく手を振った。でも、まだやることがあった。

(……よし)

大きな味方がいる。わたしに勇気を与えてくれる存在。何も考えることなく席を立ち、いつもと逆のドアに近づいた。

「あのさ、団体行動の班なんだけど……」
「……え?」
「松中さんと山本さん、早苗ちゃんと一緒なんだよね? ……わたしも早苗ちゃんと一緒だから……よろしくね」

立場をわきまえないといけない。ちょっと遠慮がちに、へりくだった雰囲気ではにかんでみた。

「……」
「あ、山本さんも……よろしくね」

体育館シューズの紐を結ぶ手を止めて、山本さんが真顔で言った。

「でもさ。水橋さんて、私達のことニガテなんでしょ? 大丈夫なの?」

(……え?)

時が止まった。言葉を出すことができずに、カラダがその場で固まる。

「え?」
「だから。聞いたよ? キライなんでしょ? 私達のこと」
「そんな……」

「まあ、良いけど」
2人で顔を見合わせて「部活いこ」とつぶやいた。

☆

(なんで? なんで?)
(……なんで?)

しばらくわたしは、その場を動くことができなかった。頭の中には「なんで」しか出てこない。

(早苗ちゃんが……? でもわたし、早苗ちゃんにそんなこと言ってない……)

今まで早苗ちゃんとしゃべったことを、頭の中で必死に思い出す。でも出てこない。いや……たくさんしゃべってきたから、正直ぜんぶは覚えてない。

(……え? どうしよう……)
(わたし、言った?)

帰ろうとすると、何だかフラっとして一瞬倒れそうになるのを我慢した。