どこがリアルなんだよ

「明日の帰りまでには――」

(やばい、先生の話が終わっちゃう……)

「おい、体育ノート出してないやついるの――」

(どうしよう……)
(どうしよう……)

気が付けばぎゅうと握りこぶしを作っていた。パッと開くと、べっとりと手のひらじゅうの汗。バレないように、スカートでこすり落とすように拭いた。

わたしから、いかないと。

この1年を完全に終了させてしまうかも知れない。でも、わたしからいかないと――。

「よし、じゃあ終わるぞー。早く帰れよー」

先生が出席簿で机をバン、と叩く。いつの間にか終わりの合図として定着していた。

緊張が一気に溶けた教室。ゆとりある人は、いつものように動いていた。わたしは不安組なんだ――。

「ね、早苗ちゃん、班……一緒になろ」

この10分間の緊張を探られないように、わたしはちょっと笑ってみせた。精一杯の演技だった。

「……さっき先生が言ってたヤツ」

わたしの告白は終わった。まくしたてるように早苗ちゃんに一気に言葉を投げつけてしまった。

わたし自身のために。

一瞬きょとんとしていた早苗ちゃんは、スイッチを切り替えたかのように、少しアゴを出しながら、にこりと笑う。

「良いよ、美鈴ちゃんと私。同じ部屋ね」

☆

「良かったー……」
「でも、2人で1部屋なんて、すごいね」

受け入れてもらえた告白。頭がぼわぁっとして、机の上に思わず倒れ込む。

「でも、良かったあー……」

『答え合わせ』のために、まだざわつきが止まらない教室。わたしは一人、ぐったりとしていた。

「でもね」
「……え?」
「班は裕子ちゃん達と一緒になるけど……美鈴ちゃん、大丈夫?」

ホッとしたのもつかの間、今度は胸がギュッと痛む。2人の顔が頭に浮かぶ。

「松中さん……たち?」

ちょっと困った顔をしながら、早苗ちゃんは「うん」と小さくうなずいた。

「前から言われたの。『一緒の班になろうね』って」

とりあえず「そうだよね、仲良いもんね」って言うしかなかった。