どこがリアルなんだよ

「よお、水橋」
「え?」

驚いた。顔を上げると、田崎くんだった。

「暗いな」
「……そう? 別に、何もないけど」
「ふうん」

登校して教室に入った瞬間のすれちがいざま。

軽くしゃべって、わたしは席に着いた。

「ね、田崎君。何て言ってたの?」

早苗ちゃんがわたしに顔を近づけて、耳元でささやいた。

「え? 暗いねって」
「えー」
「『別に』って答えといた」
「……」

今思えばちょっとだけ早苗ちゃんの目は、いたずらに輝いていた気がする。

「……もしかしてさ、美鈴ちゃんのこと……気になってるんじゃない?」

心臓がぎゅうと握られたように苦しくなった。顔もきっと赤いと思う。だって、ものすごく顔が熱いから。

「そ、そんなわけないじゃん……キモっ」

耳にかかった髪を後に回しながら、鞄をヒザの上に置いた。

☆

『見てて思うんだけどさ、水橋って大変そうだよな』

『え? そんなことないけど』

『昼休み、きつくないか? 1人で食べてて』

『あれは仕方ない。早苗ちゃん部活だから』

田崎くんから突然DMが来るようになった。

晩ご飯を食べ終わると、これまでずっと早苗ちゃんとDMしてたのに。寝るまで。

間に入ってきたのは田崎くんだった。

田崎くんに返して

早苗ちゃんとしゃべって

ずっとわたしはスマホの画面を見ている。

ドキドキしながら田崎くんのDMに返信してると、ぶっちゃけ「わたしのこと、好きなのかな」って思ったりもする。

(こんなにやりとりしてくれないよね、普通……)

大人しい雰囲気だから、正直合うんじゃないかなって思う。

『大丈夫なのかよ。お前、いじめられたりしてんじゃねえの』

『全然。っていうか、松中さんたちはちょっと苦手かも』

『そうか? まあ、いじめとかじゃないなら、別に良いけどさ』

「まだ起きてるの? 何度言えば分かるのよ」
ママの声が今日も下から飛んできた。「分かってるよ」と思いながら、毛布をかぶって両手でスマホを握り続けた――