食べ物も水も与えられないまま二日が経った。
鞭で打たれた場所が熱を持って痛んでいる。牢の床は冷たく、寝転ぶとほんのわずかだけれど痛みがマシに思えた。
唾を飲み込んでも乾いた喉はまったく潤わず、めまいと吐き気にひたすら苛まれ、意識が朦朧としていると、牢の前に人影が現れた。
「おまえが俺の邪魔をしていたのか。忌々しい女め」
「寿栄様に逆らおうなんて馬鹿なことを考えたものね」
顔を上げる気力もなかったが、その声は寿栄と李琳のものだった。
小屋の中の会話も聞かれていたんだろう。私が豆豆に頼んで霊獣が討伐されないようにしていたのもバレてしまったようだ。
「我が後宮に穢れを持ち込んだ罪でおまえを処刑する」
寿栄が牢の中の私に向かって霊力で形作られた蛇を放った。噛み殺される。そう思っても体は動いてくれず、私はせめてもと目をつぶった。
その時、閃光が走ったように周囲が明るくなったのを感じた。目を開けると蛇は消えており、寿栄と李琳は驚愕の表情を浮かべている。
「どういうことなの?! 寿栄様の呪術が消えるなんて」
「黙れ、李琳。くそ、なにからなにまで忌々しい」
顔を歪めていた寿栄が、一転して笑みを作った。
「だが考えてみれば、おまえなどわざわざ俺の手を下す必要もない。そうだ、おまえは霊蓬山の底なしの湖に沈めてやろう。あそこにはあの蛮獣の亡骸も沈めているからちょうどいい」
私は静かに目を見開いた。けれど声を上げる体力は残っていなかった。
翌朝、私は錘のついた足枷を嵌められ、荷馬車で霊蓬山に運ばれた。
霊獣が多く住まう霊蓬山。緑豊かな美しい山のはずが、五年ぶりに足を踏み入れたそこは、寿栄の霊獣討伐の影響で木々が枯れ、荒れ地と化していた。
山の頂の近くにある湖は、まだ美しさを保っていた。
私は小舟に乗せられ、湖の真ん中へ向かう。
濁りのない湖面の底は見えない。闇色が広がっているだけ。
ここに、亡くなった蒼真様が眠っているんだろうか。
豆豆がちゃんと逃げられたかどうかは心配だけれど、死への恐怖はない。私の胸を占めるのは後悔だけ。
蒼真様、ごめんなさい。私は蒼真様の国を守れなかった。
ふがいない私に泣く資格なんてない。なのに、頬に涙が伝う。
一緒に乗り込んでいた衛兵に背中を押され、私の体は湖に落ちた。もがく間もなく沈む私の体。冷たい水。光が遠のいていく。
苦しみの中で目を閉じる寸前、なにかが私の体を抱きしめた気がした。
鞭で打たれた場所が熱を持って痛んでいる。牢の床は冷たく、寝転ぶとほんのわずかだけれど痛みがマシに思えた。
唾を飲み込んでも乾いた喉はまったく潤わず、めまいと吐き気にひたすら苛まれ、意識が朦朧としていると、牢の前に人影が現れた。
「おまえが俺の邪魔をしていたのか。忌々しい女め」
「寿栄様に逆らおうなんて馬鹿なことを考えたものね」
顔を上げる気力もなかったが、その声は寿栄と李琳のものだった。
小屋の中の会話も聞かれていたんだろう。私が豆豆に頼んで霊獣が討伐されないようにしていたのもバレてしまったようだ。
「我が後宮に穢れを持ち込んだ罪でおまえを処刑する」
寿栄が牢の中の私に向かって霊力で形作られた蛇を放った。噛み殺される。そう思っても体は動いてくれず、私はせめてもと目をつぶった。
その時、閃光が走ったように周囲が明るくなったのを感じた。目を開けると蛇は消えており、寿栄と李琳は驚愕の表情を浮かべている。
「どういうことなの?! 寿栄様の呪術が消えるなんて」
「黙れ、李琳。くそ、なにからなにまで忌々しい」
顔を歪めていた寿栄が、一転して笑みを作った。
「だが考えてみれば、おまえなどわざわざ俺の手を下す必要もない。そうだ、おまえは霊蓬山の底なしの湖に沈めてやろう。あそこにはあの蛮獣の亡骸も沈めているからちょうどいい」
私は静かに目を見開いた。けれど声を上げる体力は残っていなかった。
翌朝、私は錘のついた足枷を嵌められ、荷馬車で霊蓬山に運ばれた。
霊獣が多く住まう霊蓬山。緑豊かな美しい山のはずが、五年ぶりに足を踏み入れたそこは、寿栄の霊獣討伐の影響で木々が枯れ、荒れ地と化していた。
山の頂の近くにある湖は、まだ美しさを保っていた。
私は小舟に乗せられ、湖の真ん中へ向かう。
濁りのない湖面の底は見えない。闇色が広がっているだけ。
ここに、亡くなった蒼真様が眠っているんだろうか。
豆豆がちゃんと逃げられたかどうかは心配だけれど、死への恐怖はない。私の胸を占めるのは後悔だけ。
蒼真様、ごめんなさい。私は蒼真様の国を守れなかった。
ふがいない私に泣く資格なんてない。なのに、頬に涙が伝う。
一緒に乗り込んでいた衛兵に背中を押され、私の体は湖に落ちた。もがく間もなく沈む私の体。冷たい水。光が遠のいていく。
苦しみの中で目を閉じる寸前、なにかが私の体を抱きしめた気がした。
