***
私が龍族の里に来て十日。薬も効いてやっと鞭打ちの痛みもだいぶ引いた頃、「少し屋敷の外を歩かないか?」と蒼真様から誘われた。
「体調も良くなってきたようだし、ずっと屋敷に篭っていては気詰まりだろう」
「でも私が出歩いていいのですか? 私は人間ですし、里の方を怖がらせてしまうかもしれません」
「多少遠巻きに見られるかもしれないが、俺がそばにいれば問題ない。朋里は、俺の妻ということになっているからな」
蒼真様はごく自然に私の手を取った。
蒼真様の妻。五年前から憧れていた響き。
今の私たちは、あの頃憧れていたような関係とは違うけれど、手を繋ぐとあの頃と同じ幸せで胸が満たされる。
私はチラリと斜め前を歩く蒼真様の横顔を盗み見た。精悍な顔つき、落ち着いた雰囲気は大人の男性のそれで、私が知っていた蒼真様とは違う一面を知れて、そばにいるとドキドキしてしまう。
爺様の屋敷を出て少し歩くと開けた通りに出て、民家の前で小さな店を開いている様子があちこちに見えた。物々交換のようで米袋と魚を交換している者もいる。
幼い頃から宮殿に出入りして、あの事件の後は後宮に閉じ込められていたから、城下町を歩いたことは一度もない。だから新鮮な風景だった。
私をチラチラ見ていたり、なにか話している様子もあって、全く気にならないといったら嘘になるけれど、蒼真様が隣にいてくれるから安心して歩ける。
「蒼真様、奥様、これ、どうぞ」
人間なら十歳くらいの女の子が駆け寄ってきて、緊張した面持ちで私と蒼真様に花を一輪ずつ渡してくれた。
「ご結婚、おめでとうございます」
たぶんこの子も人間が好きというわけじゃないんだろう。花を手渡す手が震えている。でも蒼真様のために勇気を出して私にも花を贈ってくれたのだ。
「ありがとうございます。とても嬉しい」
怖がらせないようにと少し距離をとりつつ、しゃがんで女の子と目を合わせてお礼を言うと、女の子は顔を赤くして照れたようにブンブンと首を振った。
私に続いて蒼真様も「ありがとう、翠」と告げると、翠と呼ばれた女の子はさらに顔を赤くして走り去って行った。
「こうすると、朋里に似合うな」
蒼真様が、翠に貰った花を髪飾りのように私の耳に掛け、目を細めて笑った。
五年前の少年っぽさが残る爽やかな笑みとは違う、大人の微笑み。
笑顔が艶めいて見えて、私が思わず見とれていると、蒼真様が不意に苦しそうに顔をしかめて、胸を押さえた。
「蒼真様? もしかしてお加減が優れないのでは?」
心配になってそう尋ねる。
すると蒼真様は格好を正して「いや」と首を横に振った。
「少し胸が痛んだだけだ。気にするほどのことじゃない」
「でも」
蒼真様の体調が心配で言い淀むと、蒼真様は私の手を強引に引いてまた歩き出した。
「蒼真様!」
「朋里は心配しすぎだ」
本当に大丈夫なのか心配になりつつも、蒼真様に連れられ、通りから外れて狭い林道を入る。
少し歩くと湖のほとりにたどり着いた。
澄んだ湖には空色が映っていて、雲が流れているようにも見える。それに枯れた木々もうっすらと窺える。この景色には見覚えがある。
「もしかして、霊蓬山ですか?」
「ああ。この湖は里の結界の媒介となっていて、外の世界と繋がっている」
「ということは、私がこの里を出る時はこの湖を通ることになるのですね」
「……朋里は、元の世界に帰りたいのか?」
「それは……」
帰りたい、と即答はできなかった。 私は死んだことになっているから実家には帰れないし、帰る場所はない。
だが怪我は癒えたから里にとどまる理由もない。今は蒼真様の妻と偽っているから問題なく過ごせているけれど、いつまでもそんな嘘を続けるわけにもいかないだろう。
蒼真様が不意に握っていた私の手を強く引いた。私はそのまま蒼真様の胸に飛び込み、抱きしめられる体勢になる。
「そ、蒼真様?」
「朋里、俺は……」
その時だった。
大砲が発射されたような大きな音が鳴り響き、大地が大きく揺れた。木々が今にも折れてしまいそうなほどの衝撃が大地から突き上げる。
「きゃあ!」
「朋里!」
倒れそうになった私を、蒼真様は支えてくれた。覆い被さるように私を守ろうとしてくれて、私もせめて蒼真様の首だけでも守れるようにと彼の首にしがみつく。
ほどなくして揺れはおさまった。それでもまだ揺れているような感覚が残っている。
「地震……でしょうか?」
「いや、恐らくだが、外から里の結界が攻撃されたんだろう」
蒼真様が湖を指差す。
先ほどまで綺麗な空色を映していた湖は、まるで硝子が割れたようにひび割れ、黒い亀裂が走っているように見える。私が落ちた時の湖と同じ色の亀裂が。
嫌な予感が私の体を駆け巡り、体温を奪っていく。
まさか、寿栄が龍族の里の結界を壊そうとしているんじゃ。
脳裏に蘇るのは五年前のあの日の記憶。私の目の前で血まみれで倒れる蒼真様の姿。
さらに冷たくなった指先で、蒼真様の衣をギュッと掴む。
そんなことは絶対にさせない。
そんな私の決意を打ち砕くようにまた地面が激しく揺れた。湖が大きく波立ち、亀裂の範囲が広がる。
「このままだと結界が……」
「朋里、すまない。少し下がっていてくれるか?」
私を抱きしめていた腕を解き、蒼真様は湖の前に立つと右手を湖に向かって突き出した。
霊力の粒子が蒼真様の手のひらに集まり、人ひとりを簡単に飲み込んでしまいそうなほどの光の玉ができあがる。
「散」
言霊を宿した神聖な響きで蒼真様がそう唱えると、光の玉は空に昇っていき、宙で弾け、荒れた湖に覆い被さるように、光の網が張られた。
湖に走っていた黒い亀裂がみるみるうちに消えていく。
「結界の補強術……」
結界術は総じて霊力が高い者しか扱えないが、既に張られている結界の補強は、ただ結界を張るより何倍も難しいとされている。結界の性質を理解し、霊力を過不足なく結界に流し、補強するという高度な霊力操作を必要とするからだ。里全体を覆うほどの大きな結界の補強となると、龍の血を引く蒼真様にしかできないだろう。
光の網は浸透するように消えていく。
湖面は穏やかな空色に戻ったように見えたけれども、よく見ると煙が立ち込めているように濁っていた。
火炎の呪術で結界を破ろうとしていたのだろうか。湖面が白く光ると共にかすかに地面の揺れを感じた。まだ攻撃は続いているんだろう。
このまま攻撃を受け続けたら、いずれ結界が破れてしまうんじゃ。不安が一気に膨らむ。
「ぐあぁっ!」
苦しげな呻き声が聞こえて顔を上げると、蒼真様が胸を押さえて膝をついていた。ただならぬ様子に、私は急いで蒼真様に駆け寄る。
「蒼真様! どうされたのですか?!」
「ぐっ……うあぁぁっ!」
胸を掻きむしりながら蒼真様が倒れ込む。何度呼びかけても、目を覚まさなかった。
里の人に助けを求めて、私は倒れた蒼真様をなんとか爺様の屋敷へ運んだ。
「満月まであと二日はあったんじゃがなぁ」
爺様に経緯を伝えると、布団に横たわり苦しむ蒼真様を見守りながら気の毒そうに呟いた。
「満月? どういうことですか?」
「……龍族の霊力が強大であるのは、朋里殿も知っておるかの?」
私はコクンと頷く。
「龍族は霊力を使うほどに力を増す。じゃが、霊力が強まりすぎて、暴走状態になることがあるんじゃ。そうなると体の方が耐えられなくなって、こうして苦しむことになる」
体内の霊力が暴走――人では聞いたことがない症状だ。龍族特有のものなのだろう。霊力は血液のように体中に流れている。それが体内から苛んでいるのだとしたら、全身にとてつもない痛みが走るに違いない。
「蒼真殿は普通の龍族より霊力量が多いのに、体が人間じゃから、特に霊力が暴走しやすいらしくての。特に霊力が高まる満月ではこうして寝込んでしまうんじゃよ」
「そう、だったんですか」
「いつもは満月の一日だけで済むんじゃが、結界を補強してかなり霊力を消費したからその反動じゃろうなぁ」
「そんな……ごめんなさい、私、知らなくて……」
記憶を失う前から、蒼真様は今のように苦しんでいたんだろうか。蒼真様のそばにいながら、私は何も知らなかった。蒼真様のことを誰よりも大切だと思っていたのに、蒼真様の痛みに気づけなかった。何の力にもなれていなかった。
「気にするでない。自分の弱点はいくら信頼していようとなかなか打ち明けられないものじゃよ」
血の気がなくなり冷たくなっている蒼真様の手をそっと握る。
霊力よ、鎮まって——そう祈ることしかできない。
蒼真様を見守っていると、またかすかに地面の揺れを感じて、爺様と顔を見合わせた。
「困ったのう。人との争いになったらこの里が焼け野原になってしまう」
人や霊獣との争いを避け、結界の中で平和に暮らしてきた龍族の安寧が奪われてしまう。
このまま私は、また蒼真様が傷つけられるのを見ているだけなの?
……そんなの嫌だ。
二度も蒼真様を失いたくない。
私のことを忘れていても、蒼真様には幸せでいてほしい。誰にも傷つけられることなく、ずっと健やかに生きてほしい。
「……爺様、お願いがあります」
蒼真様のためなら、私はなんだってやる。
私が龍族の里に来て十日。薬も効いてやっと鞭打ちの痛みもだいぶ引いた頃、「少し屋敷の外を歩かないか?」と蒼真様から誘われた。
「体調も良くなってきたようだし、ずっと屋敷に篭っていては気詰まりだろう」
「でも私が出歩いていいのですか? 私は人間ですし、里の方を怖がらせてしまうかもしれません」
「多少遠巻きに見られるかもしれないが、俺がそばにいれば問題ない。朋里は、俺の妻ということになっているからな」
蒼真様はごく自然に私の手を取った。
蒼真様の妻。五年前から憧れていた響き。
今の私たちは、あの頃憧れていたような関係とは違うけれど、手を繋ぐとあの頃と同じ幸せで胸が満たされる。
私はチラリと斜め前を歩く蒼真様の横顔を盗み見た。精悍な顔つき、落ち着いた雰囲気は大人の男性のそれで、私が知っていた蒼真様とは違う一面を知れて、そばにいるとドキドキしてしまう。
爺様の屋敷を出て少し歩くと開けた通りに出て、民家の前で小さな店を開いている様子があちこちに見えた。物々交換のようで米袋と魚を交換している者もいる。
幼い頃から宮殿に出入りして、あの事件の後は後宮に閉じ込められていたから、城下町を歩いたことは一度もない。だから新鮮な風景だった。
私をチラチラ見ていたり、なにか話している様子もあって、全く気にならないといったら嘘になるけれど、蒼真様が隣にいてくれるから安心して歩ける。
「蒼真様、奥様、これ、どうぞ」
人間なら十歳くらいの女の子が駆け寄ってきて、緊張した面持ちで私と蒼真様に花を一輪ずつ渡してくれた。
「ご結婚、おめでとうございます」
たぶんこの子も人間が好きというわけじゃないんだろう。花を手渡す手が震えている。でも蒼真様のために勇気を出して私にも花を贈ってくれたのだ。
「ありがとうございます。とても嬉しい」
怖がらせないようにと少し距離をとりつつ、しゃがんで女の子と目を合わせてお礼を言うと、女の子は顔を赤くして照れたようにブンブンと首を振った。
私に続いて蒼真様も「ありがとう、翠」と告げると、翠と呼ばれた女の子はさらに顔を赤くして走り去って行った。
「こうすると、朋里に似合うな」
蒼真様が、翠に貰った花を髪飾りのように私の耳に掛け、目を細めて笑った。
五年前の少年っぽさが残る爽やかな笑みとは違う、大人の微笑み。
笑顔が艶めいて見えて、私が思わず見とれていると、蒼真様が不意に苦しそうに顔をしかめて、胸を押さえた。
「蒼真様? もしかしてお加減が優れないのでは?」
心配になってそう尋ねる。
すると蒼真様は格好を正して「いや」と首を横に振った。
「少し胸が痛んだだけだ。気にするほどのことじゃない」
「でも」
蒼真様の体調が心配で言い淀むと、蒼真様は私の手を強引に引いてまた歩き出した。
「蒼真様!」
「朋里は心配しすぎだ」
本当に大丈夫なのか心配になりつつも、蒼真様に連れられ、通りから外れて狭い林道を入る。
少し歩くと湖のほとりにたどり着いた。
澄んだ湖には空色が映っていて、雲が流れているようにも見える。それに枯れた木々もうっすらと窺える。この景色には見覚えがある。
「もしかして、霊蓬山ですか?」
「ああ。この湖は里の結界の媒介となっていて、外の世界と繋がっている」
「ということは、私がこの里を出る時はこの湖を通ることになるのですね」
「……朋里は、元の世界に帰りたいのか?」
「それは……」
帰りたい、と即答はできなかった。 私は死んだことになっているから実家には帰れないし、帰る場所はない。
だが怪我は癒えたから里にとどまる理由もない。今は蒼真様の妻と偽っているから問題なく過ごせているけれど、いつまでもそんな嘘を続けるわけにもいかないだろう。
蒼真様が不意に握っていた私の手を強く引いた。私はそのまま蒼真様の胸に飛び込み、抱きしめられる体勢になる。
「そ、蒼真様?」
「朋里、俺は……」
その時だった。
大砲が発射されたような大きな音が鳴り響き、大地が大きく揺れた。木々が今にも折れてしまいそうなほどの衝撃が大地から突き上げる。
「きゃあ!」
「朋里!」
倒れそうになった私を、蒼真様は支えてくれた。覆い被さるように私を守ろうとしてくれて、私もせめて蒼真様の首だけでも守れるようにと彼の首にしがみつく。
ほどなくして揺れはおさまった。それでもまだ揺れているような感覚が残っている。
「地震……でしょうか?」
「いや、恐らくだが、外から里の結界が攻撃されたんだろう」
蒼真様が湖を指差す。
先ほどまで綺麗な空色を映していた湖は、まるで硝子が割れたようにひび割れ、黒い亀裂が走っているように見える。私が落ちた時の湖と同じ色の亀裂が。
嫌な予感が私の体を駆け巡り、体温を奪っていく。
まさか、寿栄が龍族の里の結界を壊そうとしているんじゃ。
脳裏に蘇るのは五年前のあの日の記憶。私の目の前で血まみれで倒れる蒼真様の姿。
さらに冷たくなった指先で、蒼真様の衣をギュッと掴む。
そんなことは絶対にさせない。
そんな私の決意を打ち砕くようにまた地面が激しく揺れた。湖が大きく波立ち、亀裂の範囲が広がる。
「このままだと結界が……」
「朋里、すまない。少し下がっていてくれるか?」
私を抱きしめていた腕を解き、蒼真様は湖の前に立つと右手を湖に向かって突き出した。
霊力の粒子が蒼真様の手のひらに集まり、人ひとりを簡単に飲み込んでしまいそうなほどの光の玉ができあがる。
「散」
言霊を宿した神聖な響きで蒼真様がそう唱えると、光の玉は空に昇っていき、宙で弾け、荒れた湖に覆い被さるように、光の網が張られた。
湖に走っていた黒い亀裂がみるみるうちに消えていく。
「結界の補強術……」
結界術は総じて霊力が高い者しか扱えないが、既に張られている結界の補強は、ただ結界を張るより何倍も難しいとされている。結界の性質を理解し、霊力を過不足なく結界に流し、補強するという高度な霊力操作を必要とするからだ。里全体を覆うほどの大きな結界の補強となると、龍の血を引く蒼真様にしかできないだろう。
光の網は浸透するように消えていく。
湖面は穏やかな空色に戻ったように見えたけれども、よく見ると煙が立ち込めているように濁っていた。
火炎の呪術で結界を破ろうとしていたのだろうか。湖面が白く光ると共にかすかに地面の揺れを感じた。まだ攻撃は続いているんだろう。
このまま攻撃を受け続けたら、いずれ結界が破れてしまうんじゃ。不安が一気に膨らむ。
「ぐあぁっ!」
苦しげな呻き声が聞こえて顔を上げると、蒼真様が胸を押さえて膝をついていた。ただならぬ様子に、私は急いで蒼真様に駆け寄る。
「蒼真様! どうされたのですか?!」
「ぐっ……うあぁぁっ!」
胸を掻きむしりながら蒼真様が倒れ込む。何度呼びかけても、目を覚まさなかった。
里の人に助けを求めて、私は倒れた蒼真様をなんとか爺様の屋敷へ運んだ。
「満月まであと二日はあったんじゃがなぁ」
爺様に経緯を伝えると、布団に横たわり苦しむ蒼真様を見守りながら気の毒そうに呟いた。
「満月? どういうことですか?」
「……龍族の霊力が強大であるのは、朋里殿も知っておるかの?」
私はコクンと頷く。
「龍族は霊力を使うほどに力を増す。じゃが、霊力が強まりすぎて、暴走状態になることがあるんじゃ。そうなると体の方が耐えられなくなって、こうして苦しむことになる」
体内の霊力が暴走――人では聞いたことがない症状だ。龍族特有のものなのだろう。霊力は血液のように体中に流れている。それが体内から苛んでいるのだとしたら、全身にとてつもない痛みが走るに違いない。
「蒼真殿は普通の龍族より霊力量が多いのに、体が人間じゃから、特に霊力が暴走しやすいらしくての。特に霊力が高まる満月ではこうして寝込んでしまうんじゃよ」
「そう、だったんですか」
「いつもは満月の一日だけで済むんじゃが、結界を補強してかなり霊力を消費したからその反動じゃろうなぁ」
「そんな……ごめんなさい、私、知らなくて……」
記憶を失う前から、蒼真様は今のように苦しんでいたんだろうか。蒼真様のそばにいながら、私は何も知らなかった。蒼真様のことを誰よりも大切だと思っていたのに、蒼真様の痛みに気づけなかった。何の力にもなれていなかった。
「気にするでない。自分の弱点はいくら信頼していようとなかなか打ち明けられないものじゃよ」
血の気がなくなり冷たくなっている蒼真様の手をそっと握る。
霊力よ、鎮まって——そう祈ることしかできない。
蒼真様を見守っていると、またかすかに地面の揺れを感じて、爺様と顔を見合わせた。
「困ったのう。人との争いになったらこの里が焼け野原になってしまう」
人や霊獣との争いを避け、結界の中で平和に暮らしてきた龍族の安寧が奪われてしまう。
このまま私は、また蒼真様が傷つけられるのを見ているだけなの?
……そんなの嫌だ。
二度も蒼真様を失いたくない。
私のことを忘れていても、蒼真様には幸せでいてほしい。誰にも傷つけられることなく、ずっと健やかに生きてほしい。
「……爺様、お願いがあります」
蒼真様のためなら、私はなんだってやる。
