現の主人と影

放課後。

補講を終えた私は、多田くんに連れられ、彼がお世話になったという人たちのもとへ向かっていた。

「着いたで〜」

しばらく歩いて辿り着いたのは、一軒の古本屋だった。

「……ここ?」

相談所と聞いていたため、てっきり事務所のような場所を想像していた。

「まあまあ、入ったら分かるって」

多田くんが木製の扉を開けると、頭上のベルが軽やかな音を立てた。

店内には、壁一面を埋め尽くすほどの本が並んでいた。

「いらっしゃいませ〜!」

奥の階段から、明るい声とともに小柄な女性が姿を現した。

「あ、多田くん! お疲れさま!」

「なおちゃん、おつかれさんです〜。今日は友達連れてきたんよ」

「お友達?」

「うん。でも、今日は『お客さん』でもあるで」

その言葉に、彼女の表情が変わった。
「…そっちのお客さん?」

「そっちのお客さん」

二人のやり取りに、私は首を傾げる。

「ちょっと待ってて! はづさんに連絡してみるから!」

彼女はそう言って、店の奥へと駆けていった。
 
しばらくして戻ってきた彼女に案内され、私たちは二階の部屋へ向かった。

そこには本だけでなく、分厚い書物や資料が所狭しと並んでいた。

まるで、小さな事務所のようだった。

「ここ、ただの古本屋ちゃうからな〜」

多田くんが楽しそうに笑う。

私は促されるままソファーに腰を下ろし、まだ見ぬ相談所の人たちを待つことにした。