現の主人と影

「へぇ〜、そうなんや。ほんなら、影さんの能力はなんなん?」

多田くんが興味深そうに尋ねた。

『私の能力は一つではない。状況に応じて、複数の力を扱うことができる』

「なんやそれ、めっちゃおもろいやん!」

多田くんは楽しそうに笑った。

「でもな、瀬尾ちゃんらの契約の印、見えへんかったんよな〜。なんか訳ありなん?」

その問いに、如月は少し間を置いて答えた。

『企業秘密だ』

「…企業、秘密?」

多田くんは一瞬きょとんとしたあと、声を上げて笑った。
「あははっ! なんやそれ!」

それ以上は追及せず、多田くんは私へと向き直った。

「せや、瀬尾ちゃん。今日の補講終わったあと、時間ある?」

「え…うん、大丈夫だけど」

「ほんなら、ちょっと付き合ってくれへん? 会ってほしい人らがおるんよ」
「会ってほしい人……?」
「前に話したやろ? 俺が影のことで相談しとった人ら。今はそこでバイトしとるんやけどな」

多田くんは少しだけ真面目な表情になった。

「なんか困っとることがあるんやったら、あの人らに会っといて損はないと思うで」

困っていること。
真っ先に思い浮かんだのは、如月の本当の主を探すことだった。
 
今の私には、何の手がかりもない。
けれど、影について詳しい人たちなら、何か知っているかもしれない。

『私は問題ない。りんが行きたいのなら、そうしよう』

 如月の声に背中を押され、私は頷いた。

「うん…。行ってみたい」

「ほんま? よし、決まりやな!」

まだ見ぬその場所に、私は小さな期待を抱いていた。