⑧
平日の夕方であり店内は空いている。近くの席に高校の生徒がいないことも安心した。
運よく人目に付きにくいソファーシートの席。
「あ、季節の桃デザートがある」
鵜飼は席に着くなりメニューを手にした。目線はデザート写真に釘付け。
――甘いモノ好きなんだ。
鵜飼は背が高くて筋肉質だけど、ムキムキではなく上品な雰囲気がある。首が長いからだろうか。
甘いモノを食べても良く似合うだろう。
「頼めばいいじゃん。ドリンクバーだけよりいいだろ。見てたら僕も食べたくなった」
「いいの? じゃ、バレー部の奴らと来たらバカにされて食べられない桃のパフェ、いっちゃおっかな」
鵜飼が嬉しそうに顔を緩める。こんなのクラスの女子が見たら大喜びだ。
「つか、鵜飼なら女子誘えばいつでも甘いモノ食べに来れるだろ」
「やだよ。めんどくさいだろ」
「え?」
聞き間違いだろうか、と目をぱちぱちさせた。
いつも優しく穏やかな鵜飼が面倒くさいと言った。
「あ、やべ。素がでた。俺、女子の騒ぎまくるとこ苦手。でも、邪険にすると怖えし」
意外な一面だ。
つい川本の顔が僕の頭に浮かんだ。
「ま、わかるけど。イケメンは大変だな」
嫌味のようになってしまった。ちょっとマズかった?
不安になり鵜飼を見たが、気にした風でもなくメニューに集中している。
「じゃ、この生桃パフェ注文する。花崎は?」
「じゃ、生桃タルト、かな」
二人でタブレット端末から注文をした。
ドリンクを取りに席を立つと、改めて鵜飼のデカさが目に付いた。
身体のラインから引き締まった筋肉美がわかる。
スポーツ選手っぽいと思う。
店内の壁に設置された鏡に自分と鵜飼が映っていて、ちょっとガッカリする。
身長十五センチ差って結構違う。
「花崎って、図書室によく行くよな」
「ああ、うん。涼しいし、静かだし」
喉が渇いているから身体にすぐに浸透する飲み物が欲しい。
悩んだ末に、ウーロン茶をコップに注ぎ、ついでにジンジャエールも手にした。
二つ持ちしておけば何回もドリンクバーに来なくて済むから。
隣を見れば鵜飼も同じように二個持ちだ。
鵜飼はアイスコーヒーと水を手にしている。
食べ物は甘いのがいいけれど、飲み物は別なのだろう。その気持ちはすごく理解できる。
一緒に席に戻って、とりあえずウーロン茶を口にした。冷えた水分が喉を潤す。
「はぁ、生き返る~」
「プッハ。確かに。秋はドコ行ったんだろうな」
「それな」
鵜飼もアイスコーヒーにミルクを入れて一口飲む。
鵜飼がコップを置くと、カラリと氷のぶつかる良い音がする。音が気に入ったのか、鵜飼はカラカラと氷を鳴らした。
その仕草が大人っぽく見えて、目を引く。
「花崎は図書室でどんな本借りてんの?」
「まぁ、色々だけど。歴史とか」
「ええ? 意外。歴史好きなんだ」
「歴史は得意じゃないけどさ、暇つぶしみたいな感じ?」
会話しているとパフェとタルトが運ばれてくる。タルトは普通サイズだが、パフェは結構大きめだ。
見栄えよく飾られた白桃が美味しそう。
「あ、うまそ。食べようぜ」
「いただきます」
タルトにも生桃が乗っていて、桃独自のえぐみと甘さがカスタードクリームと相性バッチリだ。
ふと鵜飼を見れば嬉しそうに桃を頬張っている。
――なんか、親しみやすい、かも。
教室で華やかな運動部集団といる鵜飼のイメージと少し違う。
カラン、と氷の音を立てて僕はジンジャエールを口にした。
弱炭酸が気持ちをスッキリ整えてくれる。
「あ~、幸せ。で、花崎はどんな本借りてんの?」
話しがそこに戻るのかよ、と心でツッコんだ。
「まぁ、今は、ちょっと変わったの」
「どんな? 見たい。持ってる?」
これは、出していいいのだろうか。『中世魔女の妙薬レシピ』を。
ま、惚れ薬のページを見せるわけじゃないし、いいか。
そう思い、本をテーブルに出した。
「たまたま、偶然、これになっただけでさ。普段は違うからな」
鵜飼は身体の動きを止めて本を凝視している。途端に恥ずかしくなる。
こんな女子が持っていそうな本を見せるなんて。
頬がカッと熱い。
僕はすぐにリュックに本を戻した。
「やっぱ、見なかったことにして!」
「あ、いや、いいんじゃん。人の好みはそれぞれだし」
「好みじゃないって! いや、たまたま、試したいことが、あって……」
そこまで言って、しまった、と口を閉ざした。
「試すって何?」
興味津々で鵜飼が聞いてくるから、どうにか誤魔化すことを考えた。
「ああ、あの本に、願いが叶うって、まじないがあって、さ。ちょっと、頼りたくなったというか……」
しどろもどろな自分が情けない。冷汗が出そうだ。
「願いが叶う、か。いいな。俺もソレやってみたい」
「はぁ⁉」
――ええ? 鵜飼って、こんなの信じるタイプ?
僕は口をポカンと開けて固まった。
平日の夕方であり店内は空いている。近くの席に高校の生徒がいないことも安心した。
運よく人目に付きにくいソファーシートの席。
「あ、季節の桃デザートがある」
鵜飼は席に着くなりメニューを手にした。目線はデザート写真に釘付け。
――甘いモノ好きなんだ。
鵜飼は背が高くて筋肉質だけど、ムキムキではなく上品な雰囲気がある。首が長いからだろうか。
甘いモノを食べても良く似合うだろう。
「頼めばいいじゃん。ドリンクバーだけよりいいだろ。見てたら僕も食べたくなった」
「いいの? じゃ、バレー部の奴らと来たらバカにされて食べられない桃のパフェ、いっちゃおっかな」
鵜飼が嬉しそうに顔を緩める。こんなのクラスの女子が見たら大喜びだ。
「つか、鵜飼なら女子誘えばいつでも甘いモノ食べに来れるだろ」
「やだよ。めんどくさいだろ」
「え?」
聞き間違いだろうか、と目をぱちぱちさせた。
いつも優しく穏やかな鵜飼が面倒くさいと言った。
「あ、やべ。素がでた。俺、女子の騒ぎまくるとこ苦手。でも、邪険にすると怖えし」
意外な一面だ。
つい川本の顔が僕の頭に浮かんだ。
「ま、わかるけど。イケメンは大変だな」
嫌味のようになってしまった。ちょっとマズかった?
不安になり鵜飼を見たが、気にした風でもなくメニューに集中している。
「じゃ、この生桃パフェ注文する。花崎は?」
「じゃ、生桃タルト、かな」
二人でタブレット端末から注文をした。
ドリンクを取りに席を立つと、改めて鵜飼のデカさが目に付いた。
身体のラインから引き締まった筋肉美がわかる。
スポーツ選手っぽいと思う。
店内の壁に設置された鏡に自分と鵜飼が映っていて、ちょっとガッカリする。
身長十五センチ差って結構違う。
「花崎って、図書室によく行くよな」
「ああ、うん。涼しいし、静かだし」
喉が渇いているから身体にすぐに浸透する飲み物が欲しい。
悩んだ末に、ウーロン茶をコップに注ぎ、ついでにジンジャエールも手にした。
二つ持ちしておけば何回もドリンクバーに来なくて済むから。
隣を見れば鵜飼も同じように二個持ちだ。
鵜飼はアイスコーヒーと水を手にしている。
食べ物は甘いのがいいけれど、飲み物は別なのだろう。その気持ちはすごく理解できる。
一緒に席に戻って、とりあえずウーロン茶を口にした。冷えた水分が喉を潤す。
「はぁ、生き返る~」
「プッハ。確かに。秋はドコ行ったんだろうな」
「それな」
鵜飼もアイスコーヒーにミルクを入れて一口飲む。
鵜飼がコップを置くと、カラリと氷のぶつかる良い音がする。音が気に入ったのか、鵜飼はカラカラと氷を鳴らした。
その仕草が大人っぽく見えて、目を引く。
「花崎は図書室でどんな本借りてんの?」
「まぁ、色々だけど。歴史とか」
「ええ? 意外。歴史好きなんだ」
「歴史は得意じゃないけどさ、暇つぶしみたいな感じ?」
会話しているとパフェとタルトが運ばれてくる。タルトは普通サイズだが、パフェは結構大きめだ。
見栄えよく飾られた白桃が美味しそう。
「あ、うまそ。食べようぜ」
「いただきます」
タルトにも生桃が乗っていて、桃独自のえぐみと甘さがカスタードクリームと相性バッチリだ。
ふと鵜飼を見れば嬉しそうに桃を頬張っている。
――なんか、親しみやすい、かも。
教室で華やかな運動部集団といる鵜飼のイメージと少し違う。
カラン、と氷の音を立てて僕はジンジャエールを口にした。
弱炭酸が気持ちをスッキリ整えてくれる。
「あ~、幸せ。で、花崎はどんな本借りてんの?」
話しがそこに戻るのかよ、と心でツッコんだ。
「まぁ、今は、ちょっと変わったの」
「どんな? 見たい。持ってる?」
これは、出していいいのだろうか。『中世魔女の妙薬レシピ』を。
ま、惚れ薬のページを見せるわけじゃないし、いいか。
そう思い、本をテーブルに出した。
「たまたま、偶然、これになっただけでさ。普段は違うからな」
鵜飼は身体の動きを止めて本を凝視している。途端に恥ずかしくなる。
こんな女子が持っていそうな本を見せるなんて。
頬がカッと熱い。
僕はすぐにリュックに本を戻した。
「やっぱ、見なかったことにして!」
「あ、いや、いいんじゃん。人の好みはそれぞれだし」
「好みじゃないって! いや、たまたま、試したいことが、あって……」
そこまで言って、しまった、と口を閉ざした。
「試すって何?」
興味津々で鵜飼が聞いてくるから、どうにか誤魔化すことを考えた。
「ああ、あの本に、願いが叶うって、まじないがあって、さ。ちょっと、頼りたくなったというか……」
しどろもどろな自分が情けない。冷汗が出そうだ。
「願いが叶う、か。いいな。俺もソレやってみたい」
「はぁ⁉」
――ええ? 鵜飼って、こんなの信じるタイプ?
僕は口をポカンと開けて固まった。
