『惚れ薬』が効きすぎるなんて、令和の時代にアリですか⁉

②
 その日の帰宅中に、バレーボールの応援ルールについてAIに教えてもらった。
 大会では許可がなければ道具を使っての応援はダメらしい。
 推しの名前を書いたうちわなどを持つ人もいるが、プロの試合のときだけみたいだ。
 高校生の試合で僕が鵜飼のうちわを持っていたら変だろう。
 となると、僕が出来ることってなんだ?

 帰宅して、ベッドに寝転がって考える。
 そばにあったビニルボールをポンッと頭上に投げる。
 それをポンッポンッと続けてトスする。

 毎日やるうちに、なんとか形になってきた。
 その内に本物のバレーボールで練習してみたい。
 バレーのボールは一個が五千円ほど。
 他にもシューズやサポーターなどの値段を調べて、スポーツはお金がかかるのだと知った。

 ポンっとトスしていたボールを腕にキャッチする。
 カバンから明日の大会のパンフレットを取り出す。
 寝ころびながらトーナメント表と参加高校選手の紹介を開く。
 晴青高校の紹介メンバーに『三 鵜飼虎太郎』と記載されている。
 そこをそっと指でなぞる。

 顔写真はない。身長は百八十五センチ、ポジションはアウトサイドヒッターと書かれている。
 でっかいなぁと思う。
 だけど、鵜飼は県選抜選手の中ではこれを普通のように言っていた。
 気になって、他の高校の同じポジションの人を見てみる。すると「ああ、なるほど」と納得した。
 確かにアウトサイドヒッターは百八十五センチ以上の人ばかりだ。
 明日の開会は九時。
 鵜飼は第一試合に出場する。

「あ、ご褒美ってなんだ?」
 うっかりしていた。
「ああ! なんかいつも鵜飼に上手くかわされている! あいつ、無害な顔して策士だな」
 思い返せば、願い事が何なのかもはぐらかされて、なかなか鵜飼の本心にたどり着けずにいる。
 ふと考える。僕がチョロいのだろうか。
「あ~、わっかんね」
 ガバっと起き上がって、デスクに座る。

 パソコンの電源を入れて、作りかけのミニゲームに向かう。
 僕が作成しているのは、バレーボールをイメージしたシューティングゲーム。
 プレーヤーは既定のキャラとペアになるが、この相方がポンコツレベルの設定。
 プレーヤーだけの能力では勝ち抜けないのがポイント。
 へたくそな相方を育成しながらシューティングするゲーム。

 ――僕と、鵜飼だ。
 この設定の最後をどうするか。そこが悩みどころだ。
 鵜飼を思い浮かべる。クスッと笑って画面を見る。

 鵜飼に背負ってもらってから、僕の中でストンと気持ちが落ち着いた。

 まだユーチューブやネットゲームは見られない。
 けれど、パソコンの前で作業することが平気になっている。
 これは僕の中で大きな変化だ。
 ギシっと音を鳴らして椅子の上で伸びをする。

 鵜飼はすごい。
 やっぱり僕はゲーム作成とかパソコンに向かうのが好きだ。
 けれど苦しくて目を背けていた自分がいる。
 その苦しさを和らげてくれたのは鵜飼だ。

 ――明日は精一杯の応援を送ろう。
 そう心に誓う。
 鵜飼のカッコいいスパイク姿を思い浮かべてキュンとする胸を自分で抱きしめる。
 「もう、マジで僕は乙女か!」
 ははっと一人で笑ってベッドに潜り込んだ。

 最近の僕は鵜飼のことで頭がいっぱいだ。