『惚れ薬』が効きすぎるなんて、令和の時代にアリですか⁉

①
 十月になっても暑い日が続いている。
 それでも運動場に陽炎が見えることはなくなった。

 ――うん。ちょっとずつ秋が来ている。
 教室から窓の外を眺めて、僕は小さくため息をつく。

 鵜飼に何かしてあげたくて、願いを叶えてあげたい気持ちは、僕の中でどんどん強くなっている。
 惚れ薬の効果はいつ切れるのかと不安になるほど鵜飼の隣は心地いい。
 愛おしそうに見つめられると、僕の胸がキュンキュンと騒いで大変なことになる。
 鵜飼の優しさに救われている僕がいるのも事実。

 だからこそ、鵜飼のために何か僕がしてあげたい。そう思っているのに。

 鵜飼に願いを聞いてもはぐらかされてしまう。
「願いは口に出したくない」と言われれば追及できないし。

「あ~、鵜飼が僕にして欲しいことって、なんだよ」
 つい口から言葉が出ていた。
「あ、じゃぁ、明日の秋青葵バレーボールカップを見にきてよ」
 ハッと振り返ると鵜飼がいた。

「ビビる。急に出没するなって。てか、バレーボールカップてなに?」
「今週末の県東部地区の試合。参加高校が十六校だけの小さな大会なんだ。土曜日だけど、いい?」
「行っていいの? 絶対行く! やった!」

 鵜飼は放課後の高校の練習は見に来てほしいと言うが、休日の見学に誘ってもらったのはこれが初めて。
 土日に活動しているという県選抜のことは、話題に上がらないから見学に行っていない。
 平日は学校で一緒にいることが多い僕たちだけど、休日に会うことがなかった。
 それが、休日のお誘いだ! 公式の大会に誘ってくれた! 
 これは思った以上に嬉しい。

「うん。秋に毎年開催される大会なんだけど。参加校が少ないから見やすいし。つか、絶対優勝するし」
「すごい自信じゃん」
「まぁな。有言実行するぞ」

 少し照れたような笑顔を見せる鵜飼が可愛くて。
 ――僕をキュン死にさせる気か?
 そんな風に思ってしまう。これが無意識だから鵜飼はモテるのだと思う。

「花崎、場所分かる? 東部総合運動体育館。あとでプログラムと見学者チケット渡す」

 鵜飼と腕が触れ合う。十月から長袖か半袖かを選べる合服期間になった。
 ――今日は半袖、一緒だ。
そんな小さなことが嬉しい。

「東部総合なら行けるよ。チケットやプログラムなんてあるの?」
「ああ。一応大会だし。開会式とか表彰式もあるぞ」
「じゃ、開会式に間に合うように行くよ。そうだ、差し入れとか欲しいものある?」
「差し入れは嬉しいんだけど、大会中は受け取れないと思う。そうだな。じゃ、優勝したらご褒美がほしい」

 鵜飼が首を傾げてニコっと微笑む。
 ――うっわ。カッコ可愛い!
 僕の胸がまたキュンとする。

 ご褒美ってなにを望んでいるんだろう。あまり高価なモノじゃなければいいけれど。
 つい鵜飼を見つめた。鵜飼は嬉しそうに頬を染めている。

「……つか、優勝しなかったらどうするんだよ?」
 僕の心はドキドキしているのに、口では意地悪な言葉が出てしまう。

 ――なんで僕は『頑張れ』とか気の利いたことが言えないんだよ!
 優しい鵜飼に意地悪を言う自分が嫌になる。
 せっかく試合の見学に誘ってもらったのに。

「するよ。絶対勝つ。花崎に優勝するとこ見せたいし。表彰台でトロフィーがもらえる大会なんだ」
 自信に満ちた顔をしている。
 うん、絶対に見に行きたい。鵜飼を、応援したい。

「鵜飼が優勝するとこ、見せて」
 なんだか恋人の会話みたいで照れくさい。
 鵜飼は頬を染めているし。

「あ、次の授業始まる」
「席つくか」
 最近は過ごしやすくなった窓際から離れる。

 授業が始まったけれど、僕の頭の中は明日の試合のことでいっぱいだ。
 バレーボールの応援はどうするのだろう。
 鵜飼のために、何ができるのだろう。
 時間がないけれど、AIに聞いて応援の準備をしよう。

 公式試合の鵜飼はどんな風なのかな。
 普段の練習のゲームでもカッコいいのに、公式試合になったら……。

 ――ヤバイ! ワクワクしてきた!
 考えると顔がニヤけて仕方がない。
 明日がめちゃめちゃ楽しみだ!