『惚れ薬』が効きすぎるなんて、令和の時代にアリですか⁉

②
 ノー部活デーに遊ぼうと誘ったのは僕だ。
 でも僕の目的は、鵜飼の願いを聞き出して、少しでも叶えてあげられるようにサポートすること。
 だけど。
 目的はハッキリしているけれど、肝心の何をして遊ぶかを考えていなかった。それに気が付いたのは、たった今だ。

 ――そうだよ! 鵜飼と遊ぶって、何するんだ? 鵜飼の趣味は、バレーボールでいいのかな? それとも他に好きなことがある、とか? うわぁあ! どうしたらいいんだ!

 どうして僕は昨日のうちに気が付かなかったのだろう。休み時間になるとスマホを触って、必死に『高校生の遊び』を検索した。

 ネット検索して出てくるのは、カラオケ・ボーリング・映画・ショッピング。どれも僕は苦手だ。これは、マズイ。非常に、マズい!

 僕は遊びになれていない。というか、それほど親しい友人を作らず高校生活を過ごしてきた。

 できるだけ淡泊に平凡に生きようと頑張って、見事に真面目な目立たない生活を送れていたのに。それが今では仇となって自分に返ってきている。

 鵜飼は、モテ男だし。友人たちも華やかだし。遊びは詳しいかもしれない。もしかしたら、それについて行けない僕に幻滅するかもしれない。

 考え出すとマイナスな方ばかりに気持ちが傾く。
 ――あぁ、もう、嫌だ。浅はかな自分が残念すぎる!

 泣きたいような気持ちになり机に突っ伏してホームルームの終礼を聞いた。そのままクラスの騒めきを聞いていると。
「調子悪くなった?」
 ガタンと音を立てて鵜飼が向かいの椅子に座る。
 ――いや、調子悪いとかじゃないんだ。
 僕は机に突っ伏したまま、鵜飼に目を向けた。

「こっわ。なに?」
 怖いとか言いながら僕の様子を楽しんでいそうな鵜飼に、少しムッとする。
「何がこっわ、だ。デカい奴が可愛い振りすんな」
「あはは。この状態見て冷静でいるほうが無理だろ。俺とのお出かけは嫌になった?」
 僕はガバっと上体を起こした。
「そんな訳ない!」
「じゃ、何を困ってんの?」

 鵜飼は優しい。こんなグダグダしている僕に丁寧に接してくれる。これは惚れ薬の効果とかじゃなく、鵜飼本人が良い奴なのだろう。
 鵜飼なら、僕が遊びなれていないことをバカにしない。
 そんな確信があった。

「あのさ、僕は、慣れていないんだ」
 必死になって一言を伝えたけれど。
「はぁ⁉ 慣れてない⁉ な、何に?」
 鵜飼が驚愕の顔でゴクリと唾を飲みこんだのが伝わってくる。
 ――こいつ、何を想像したんだよ。
 アホだなぁと鵜飼を見つめた。

「だから。放課後に、さ。遊んだりとか」
 キョトンとした顔で鵜飼が僕を見つめる。
「ん? 花崎が何に困っているのか、いまいち分からん」
「カラオケは行ったことない。ボウリングも。オシャレは興味なくてショッピングとか無理かも。つか、考えてみたら遊びに誘うなんて僕には無理だったんだ……」

 ショボンと肩を落とすと、プハッと笑う鵜飼の声が聞こえた。
 ――つか、笑うなっての。
 悔しくて鵜飼を睨むと、予想外に鵜飼は嬉しそうな笑みを浮かべている。
 ――は? ナニソレ。
「慣れてなくて、俺は嬉しい。もしかして、一日そのことで悩んでいた?」
 鵜飼の言葉に頬が熱くなる。指摘されてドキッとするし。ちょっと口を尖らせてしまったと思う。
「鵜飼と違って遊びなれていないんだよ」
 プハッと鵜飼が笑った。それだけで猛烈に恥ずかしい! もう今日は無しだ! そう思ったけれど。

「じゃ、俺に付き合って」
 席を立とうとした僕の手首を掴まれる。大きな手だ。僕の手首が覆われている。
 ――この厚い手が強烈なスパイクを生んでるんだ。
 そう思うとドキッとする。

「鵜飼に、付き合うって?」
 言葉にすると心臓が高鳴ってくる。
 付き合うというワードが僕の心を刺激した。
 こんな一言を意識するなんて、僕はおかしいのかもしれない。

「体育館に行こう」
 ――ん? 体育館? ええ? どこかで遊んで過ごすんじゃないのか?

 僕はポカンと口を開けた。
 だって今日は部活をやっていないのに。