①
翌日。
「花崎、おはよ」
登校中に声を掛けられて振り向く。
そこには朝から爽やかな笑顔を浮かべた鵜飼がいる。
ま、振り向かなくても鵜飼だと分かっていたのだけど。
昨日、一緒に過ごしたから、顔を見なくても声で判別できる。そう思う自分に笑いが生まれる。
――なんだ。僕は鵜飼と仲良くなってんじゃん。
僕自身でも意外な進捗だ。
「おはよ、鵜飼。今日は部活あり?」
「うん。部活」
鵜飼が僕の隣に来る。
――あれ? 鵜飼、距離が、近い?
昨日、一緒に歩いた時にはもう少し距離があったはず。
今は腕が触れ合っている。これは偶然かな?
さりげなく鵜飼から一歩離れた。
けれど、すぐに鵜飼が一歩詰めてくる。
――は? ええ?
これ以上道路の端に寄れないし、僕はどうしたらいい?
ちょっとパニックになりつつ歩くと、急に鵜飼に肩を掴まれた。
「花崎、隅っこに行き過ぎ。転ぶから」
グイっと強い力で歩道の真ん中に戻される。足が浮くかと思った。
――おお、鵜飼は力持ちだな。じゃなーい!
急な接近に驚いて鵜飼を見上げれば、にっこり笑顔が返って来る。もちろん腕が触れ合う距離だ。
「う、鵜飼? なんか、近くね?」
耐え切れずに聞いたけれど。
「ん? そっか?」
さらりと流されてしまう。いや、明らかに昨日までと距離感が違うだろう。
「あ、まだ暑いよな。ははは。ちょっと、近いと暑いなって、さ」
距離感をアピールして訴えたけれど。
「じゃ、これ貸そうか」
急に僕の首に冷たい塊が乗せられる。
「ひゃぁ!」
驚いて悲鳴を上げていた。
僕の首に乗せられたのはネッククーラーだ。
冷え冷えのそれに手を添えて、僕はきょとんと鵜飼を見上げた。
「ははっ! 花崎、可愛ぃな」
――か、わ、い、い?
意味の分からない言葉に口をポカンと開ける。
「花崎、昨日ありがとな。すごい楽しかった。花崎とは気が合うと思うし、これから仲良くしたい」
――はい?
鵜飼は告白でもしたかのように真っ赤に照れている。
――え? ちょっと、意味が分からないんですけど。
暑さではない汗が滲む。
「えっと、とりあえず、コレは鵜飼に返そうかな」
首からネッククーラーを外して鵜飼に渡した。
「暑いなら使っていいけど。ま、いいや。あとさ、今日から部活見て行かね?」
「部活って、鵜飼のバレー部を? 僕が?」
「うん。花崎が言っていた、好きな瞬間ってバレーボールにあるから。試合でさ、サーブを打つ前の静けさ。サーブと共にコート内が一気に動き出す面白さ。きっと楽しいんじゃないかな」
それは興味がある。
「えっと、バレーボールって体育館だろ? 部外者がいていいのかよ」
「もちろん。花崎なら大歓迎だ。花崎が俺を見てくれるなら、めっちゃヤル気が出るから」
――ん? 誰を見るって?
朝陽を背負って鵜飼が満面の笑みを浮かべる。
相変わらず茶色い髪がキラキラ輝く。鵜飼の白い肌が透けそうだ。思わず見惚れた。
だけど。
満足げな鵜飼と、頭がハテナマークだらけの僕との温度差がすごい。
そう思うのは僕だけだろうか。
とても拒否ができず、今日の放課後に体育館に行く約束になった。
一体、何がどうなった?
そう思う反面、僕の頭の中には大きな不安が生まれていた。
――惚れ薬。魔女の妙薬レシピ。昨日の、紅茶。
もしかして、もしかすると。信じたくないけれど。
鵜飼が、僕に、惚れた⁉ あんな紅茶で⁉
――嘘だぁあ!
これから僕はどうなっちゃうんだよ!
翌日。
「花崎、おはよ」
登校中に声を掛けられて振り向く。
そこには朝から爽やかな笑顔を浮かべた鵜飼がいる。
ま、振り向かなくても鵜飼だと分かっていたのだけど。
昨日、一緒に過ごしたから、顔を見なくても声で判別できる。そう思う自分に笑いが生まれる。
――なんだ。僕は鵜飼と仲良くなってんじゃん。
僕自身でも意外な進捗だ。
「おはよ、鵜飼。今日は部活あり?」
「うん。部活」
鵜飼が僕の隣に来る。
――あれ? 鵜飼、距離が、近い?
昨日、一緒に歩いた時にはもう少し距離があったはず。
今は腕が触れ合っている。これは偶然かな?
さりげなく鵜飼から一歩離れた。
けれど、すぐに鵜飼が一歩詰めてくる。
――は? ええ?
これ以上道路の端に寄れないし、僕はどうしたらいい?
ちょっとパニックになりつつ歩くと、急に鵜飼に肩を掴まれた。
「花崎、隅っこに行き過ぎ。転ぶから」
グイっと強い力で歩道の真ん中に戻される。足が浮くかと思った。
――おお、鵜飼は力持ちだな。じゃなーい!
急な接近に驚いて鵜飼を見上げれば、にっこり笑顔が返って来る。もちろん腕が触れ合う距離だ。
「う、鵜飼? なんか、近くね?」
耐え切れずに聞いたけれど。
「ん? そっか?」
さらりと流されてしまう。いや、明らかに昨日までと距離感が違うだろう。
「あ、まだ暑いよな。ははは。ちょっと、近いと暑いなって、さ」
距離感をアピールして訴えたけれど。
「じゃ、これ貸そうか」
急に僕の首に冷たい塊が乗せられる。
「ひゃぁ!」
驚いて悲鳴を上げていた。
僕の首に乗せられたのはネッククーラーだ。
冷え冷えのそれに手を添えて、僕はきょとんと鵜飼を見上げた。
「ははっ! 花崎、可愛ぃな」
――か、わ、い、い?
意味の分からない言葉に口をポカンと開ける。
「花崎、昨日ありがとな。すごい楽しかった。花崎とは気が合うと思うし、これから仲良くしたい」
――はい?
鵜飼は告白でもしたかのように真っ赤に照れている。
――え? ちょっと、意味が分からないんですけど。
暑さではない汗が滲む。
「えっと、とりあえず、コレは鵜飼に返そうかな」
首からネッククーラーを外して鵜飼に渡した。
「暑いなら使っていいけど。ま、いいや。あとさ、今日から部活見て行かね?」
「部活って、鵜飼のバレー部を? 僕が?」
「うん。花崎が言っていた、好きな瞬間ってバレーボールにあるから。試合でさ、サーブを打つ前の静けさ。サーブと共にコート内が一気に動き出す面白さ。きっと楽しいんじゃないかな」
それは興味がある。
「えっと、バレーボールって体育館だろ? 部外者がいていいのかよ」
「もちろん。花崎なら大歓迎だ。花崎が俺を見てくれるなら、めっちゃヤル気が出るから」
――ん? 誰を見るって?
朝陽を背負って鵜飼が満面の笑みを浮かべる。
相変わらず茶色い髪がキラキラ輝く。鵜飼の白い肌が透けそうだ。思わず見惚れた。
だけど。
満足げな鵜飼と、頭がハテナマークだらけの僕との温度差がすごい。
そう思うのは僕だけだろうか。
とても拒否ができず、今日の放課後に体育館に行く約束になった。
一体、何がどうなった?
そう思う反面、僕の頭の中には大きな不安が生まれていた。
――惚れ薬。魔女の妙薬レシピ。昨日の、紅茶。
もしかして、もしかすると。信じたくないけれど。
鵜飼が、僕に、惚れた⁉ あんな紅茶で⁉
――嘘だぁあ!
これから僕はどうなっちゃうんだよ!
