『惚れ薬』が効きすぎるなんて、令和の時代にアリですか⁉

 やっとのことで声を掛けたクラスメイトは、呆れ顔で僕を見てから一言を放った。
「え? 花崎って、アホなのか?」

 教室内はエアコンが効いているが、秋になっても暑いせいで、午後の光が注ぐ窓側は人が寄り付かない。だけどそれが今の僕、花崎佑二(ハナザキ ユウジ)にとって都合がいい。こんな話は誰かに聞かれたくないから。
 と言うか、勇気を出したのに、アホの一言で済まさないでくれ!

「マジ、リアルの相談なんだって」
 真剣さが伝わるように、小声ながらも必死に伝えた。
「あのなぁ、高校生にもなって魔女とか惚れ薬とか、かなりヤベェ奴に思われるからな。厨二病も大概にしろよ」
 やっとの思いで相談したのに、オカルト好きのクラスメイトは『やれやれ』とでも言いたそうに離れてしまう。

 ――いや、待て待て待て! 本題に入っていないって!
「だから、聞いてほしいんだって。あのさ……」
 慌てて彼を引き留めようとしたが。
「オレには無理ゲーだわ。花崎、現実を見て生きろよ」
 まだ肝心の相談ができていないのに完全に背を向けられる。
 すぐに追いかけようとしたけれど、僕の行く手は大きな影に阻まれた。

「何の相談? 俺が聞くよ?」
 ぬっと現れた巨体。親切な言葉なのだけれど、彼、鵜飼虎太郎(ウカイ コタロウ)の瞳にハートが見えて、僕は顔をヒクつかせた。

 陽の光に透けて印象的な茶髪がキラリと輝く。髪と同じく茶色の垂れ目が僕を捉えている。
 そのイケメンすぎる風貌が眩しい。半袖制服の袖から伸びる筋肉質の腕が男らしさを醸し出している。
 さすがバレーボール高校生県選抜選手。これは女子なら大喜びのシチュエーションだろうが、僕は男子だ!

 ――あはは。お前にだけは相談できないって!
 そんな言葉はグッと飲みこむ。
 笑いかける顔が強張ってしまう。
「あのな、鵜飼。えっと、別に何でもない、からな」
 どうにか誤魔化そうと目をキョロキョロさせた。
 後ろめたさがある僕は鵜飼に強い態度がとれない。

「怪しいなぁ。もしかしてさっきの人が、気になる、とか?」
 優しい笑顔なのに、僕にはその額に『嫉妬』の文字が透けて見える。
 これは、ヤバい。笑顔なのに、ちょっと怖い!
 苦笑いを浮かべて、少しだけ距離を取ろうとしたけれど。

 にっこり顔の鵜飼がピタリと寄り添ってくる。
 おいおいおい、パーソナルスペース! とツッコミを入れたい。
 ――どうしてこんなことになったんだ! 誰か助けてぇ!