お友達からはじめましょう

 数日後の夕刻、帰宅途中の宮脇のスマホに見慣れないアイコンからメッセージが届いた。『アンタの妹に悪さした犯人について、分かったことを報告したい』とある。清高からだ。通話アイコンをタップすると、コール二回で応答があった。
『はい?』
「宮脇や。何がわかった?」
『お、返事早くて助かるよ。ちょっと通話じゃ説明しづらいんで、直接話したい。今から時間ある?』
 宮脇は返信する前に家族共通のカレンダーをチェックする。バイトはなし。母は早番だから、妹の送迎を任せられる。それを確認してから、
「ある」
 と答えると、清高は
『じゃあ今から地図送るから、そこに来てくれ』
 と言った。
「地図? こないだのファミレスやったらあかんのか?」
『あそこは花商の生徒のたまり場になってる。話を聞かれたくない』
 答える声は低い。思ったよりも深刻なことになっているのかもしれない。
「……わかった」
 と頷くと、『じゃあ後で』と通話が切れ、すぐに地図が送られてきた。徒歩で移動するには微妙に遠い、中途半端な場所だ。
 宮脇は一瞬面倒だと顔をしかめたが、悪い噂のある清高と一緒に居るのを仲間に見られると、面倒なことになる気もする。どっちの縄張りからも遠い場所で会うのは正解なのかもしれなかった。

 各駅停車で一駅移動し、地図を頼りに歩いていく。古い町工場が並ぶ通りには、うっすらと機械油の臭いが漂い、工作機械の音があちこちから聞こえていた。
 人気のない公園を過ぎて袋小路に入ると、ほとんどシャッターの閉まった長屋店舗が並ぶ。そのうち一店舗だけが今も営業しているようで、シャッターが上がっている。洒落たロゴ入りの窓の奥にシルバーのアクセサリーが並んだ居るのが見えた。

 清高が指定してきた場所はこの辺りのはずだ。宮脇がスマホを片手にキョロキョロしていると、
「よう、ミヤワキクン!」
 と、アクセサリーショップのドアが開いて清高が顔を出した。今日は制服ではなく、だぼっとしたパーカーと、ぶかぶかのスウェットパンツのセットアップだ。だらしない部屋着のような服が洒落て見えるのだから、顔が良いのは得だなと宮脇は眉を寄せる。
「入って」
 手招かれて入った店内には清高以外の人影はない。ダクトや配線がむき出しの天井からペンダントライトが垂れ下がり、ショーケースに並ぶ銀細工を美しく照らしている。出入り口近くにレジを載せた小さなカウンターがあり、清高はそこにもたれ掛かって
「わざわざ来てくれてサンキュ」
 と笑った。
「なんや、ここ」
 宮脇は警戒心剥き出しで店内を見回す。
「見て分かんない? アクセサリー売ってるお店」
「なんでこんなとこに呼び出した?」
「オレ、夜の七時半までバイトなんだ。今日オーナーがいないから、勝手に抜けるわけにもいかなくてさ」
「バイトしてんのか……」
 宮脇は洒落た店内を見回して妙に納得した。清高はカウンターから身を起こし、
「そう。どうせあんまり客も来ねえから、丁度良いでしょ? せっかく来てもらったから、礼がわりにコレ磨いてやるよ」
 と指を伸ばして、宮脇が喉元にぶら下げたチェーンネックレスを引っ張った。宮脇は大げさに身を退いて、ショーケースの角に腰をぶつける。
「何やってんの?」
「いや、礼なんかいらん。さっさと分かったことだけ教えてくれや!」
「話しながら磨いてやるって。ここなら道具もあるし、すぐにピカピカよ?」
 早く外せ、と手を差し出されて、宮脇は渋々チェーンを外した。清高は受け取ったチェーンを素早くチェックして眉を寄せる。
「ほら~、やっぱ傷んでる! コレ、アンタが買ったの?」
「いや……先輩からもらった」
「へ~、良い先輩だな。新品で買ったなら、結構な値段したと思うぜ。ちゃんと大事に手入れしろよな~」
 清高はカウンターの奥へと回り、クリーニングの道具を並べ始めた。
 宮脇は、なんだかスースーする首元を手の平で撫で回しながら、ショーケースに並んだ銀製品を眺める。重厚なデザインのリングやチェーンが主だが、中には女性でも無理なくつけられそうな華奢なものもいくつかあった。そういえば妹がリングを欲しがっていたな……と、値段を見て目玉が飛び出そうになる。小さな指輪一つで自分のバイト代一ヶ月分が吹き飛ぶ金額だ。
「高っっ!」
 思わず声を上げてしまうと、カウンターの向こうで清高が苦笑する。
「ハンドクラフトの一点ものだから、そんなもんだろ。それでも結構お求めいただき易い方よ」
「ほんまか……ワシのも高いんか?」
「ん~……多分これは量産品だから、ほぼ地金の値段かな~。でもボリュームあるから、それなりに高いと思う」
 チェーンを丁寧に磨きながら答える清高を、宮脇は気味悪げに見た。高額商品を扱う店を高校生のバイトが一人で預かることなどあるのだろうか? オーナーとの関係を尋ねようと口を開き掛けたところで、清高は手元から目を上げて、
「ところで、ミヤワキクンってさー、なんで関西弁?」
 と首を傾げた。
「とその『ミヤワキクン』ていうの止めてくれ。呼び捨てかミヤで良い。関西弁は……別に標準語でしゃべらなアカン法律ないし、構わんやろが」
「まあそうだけどさ。んじゃ、オレのことはキヨで良いよ。ミヤの出身は大阪? いつこっち来たの?」
「大阪の南の方。こっち引っ越してきたんは中学ん時や。……いや、そんなんどうでもエエ! 本題はどないなったんや? オマエの偽物は?」
「な~んか面倒な事になってきたんだよねえ~……」
 清高はチェーンを磨く手を止めて大げさに溜息をついた。


「事の起こりは、多分夏休みにオレが賭場(とば)荒らしたのが原因っぽいんだよねえ」
「とば」
 意表を突かれた宮脇はオウム返しする。
「そう、でもすごい小規模なヤツよ? センター街に小さいカードショップあるじゃん? なんかゲームのカードとか、コレクターが高値で買うヤツ売ってるとこ」
 センター街は、花商と岩工の間に位置する駅近くの商店街だ。ほとんどが営業を止めたシャッター通りになっていて、昔からある一部の店だけが細々と生き残っているが、利用者は限られている。この町に長く住んでいるわけでもない宮脇には、馴染みのない場所だった。
「知らんなあ」
「あるんだよ。でさ、その二階は店主の家になってたんだけど、店主夫婦は去年の春くらいに引っ越したんだ。店を継いだのは金谷洋二って男で、コイツは花商のOB。オレの四個上だから直接関わったことはねえけど、在学中から結構ヤンチャしてた人」
「……カナヤって名前、聞いたことあるな。エエ話じゃなかった」
「そーそー。まあ小狡いヤツなのよ、金谷は。で、ソイツは昼間は普通にカードショップの店番やってたんだけど、二階の空いた部屋使ってカードゲームで賭博やり始めたのね。最初はショップに来るオタクから小金を巻き上げてたんだけど、途中からはポーカーやら麻雀も扱い始めた。別にそんなのオレにはかんけーねえし、勝手にすりゃ良いんだけど、現役の花商生がタゲられて金巻き上げられてさ。何人かオレに泣きついてきたわけ。そしたらほっとけないじゃん?」
 面倒くさそうに語る清高に、宮脇は意外そうな目を向ける。
「オマエは花商の番長ってわけでもないんやろ?」
「違うけど、下級生に頼られたらちょっとくらいは手を貸すでしょ、人として」
 清高は不満そうに唇を尖らせる。いかにもナンパそうな見た目だが、思ったより侠気があるのかもしれないと、宮脇は目の前の男を少し見直す気になった。
「それで一人でカチコミかけたんか?」
「まさか! 平和的に解決したんだよ」
「どないして?」
 清高は磨いていたチェーンを一旦作業台に置いて、小指にはめていた銀の指輪を外した。幅の細い印台型で、直線部分に細かい模様が彫り込まれている。
 何のつもりかと首を傾げる宮脇の前で、清高は長細い指を滑らかに動かし、指輪を生き物のように操ってみせる。銀の輪はあっという間に指から指へと移動して、消えてはまた現れた。目の前で見せられても何がどうなっているのか全く分からない。変幻自在の手技に宮脇は目を瞠った。
「手品か?」
「そう。オレこういうの得意なんだ。手積みの麻雀なら、欲しい牌を積み込むくらいは簡単にできる。瞬間記憶が良いからカード覚えたりすんのも得意。素人の胴元ならこれくらいで騙せちゃうんだよねえ」
 清高は立ち上がって見せつけるように何も持っていない両手をひらひらと翻してから、握った拳を差し出した。
「ハイどうぞ」
 宮脇が思わず両手のひらを差し出すと、その上にキレイになったチェーンと銀の指輪が落ちてくる。
「おい、お前! スゴイやないか! これで飯くえるんちゃうか!?」
 大げさに驚いて目を輝かせる宮脇に、清高は苦笑して肩をすくめた。
「そんな大した手品じゃないよ。飯の種になるほどじゃない」
「……もしかして、手品でイカサマしたんがバレて狙われてるんか?」
 宮脇が受け取った物を学ランの内ポケットに入れながら問うと、清高は憂鬱そうに首を振る。
「いや、素人胴元にバレるようなヘマしてねえ。そもそも、金谷が下手なサマやってたから、裏かいて普通にバカ勝ちしただけ。だけど、勝ちすぎてインネンつけられた。元々は仲間の借金分を取り返して大人しく帰ろうと思ってたのに、クソみてーな脅しかけられてムカついたから、胴元の金谷とその取り巻き全員ボコったんだよね。取り巻きはカードショップ常連のオタクっぽいヤツばっかりだったから、楽勝だった。二度と花商生に手ぇ出すなって念押して、そんときはそれで収まったんだけどさあ……」
 清高はそこまで話し、参ったと言うように両手を上げて項垂れた。
「金谷の野郎はバカだから、オレに賭場荒らされたのを付き合いのある半グレに愚痴ったらしいのよ。その半グレの入れ知恵で、オレの名前を騙って悪さし始めた。その金谷と付き合いのある半グレってのがクスリに関係してるらしくて、この話を有香のオヤジさんにゲロったら、ケーサツ連れて行かれて薬物検査受けさせられたの! マジ最悪! 何も出るわけねえっつーの!」
 予想以上に深刻な話に宮脇は顔を引きつらせる。殴り合いの喧嘩で怪我人が出ることはあるが、薬物となると不良学生の手に余る話だ。妹がそんな騒動に巻き込まれ掛けたのかと思うとゾッとした。
 清高はカウンターに肘を突いて続ける。
「センター街は今ちょっと危ねーし、警察も警戒してるから、変に近づくなって岩工でも周知しといて。アンタの妹さんも、駅の辺りで一人にならない方が良い。話はそんだけ。オレと一緒のとこ見られない方が良い理由、分かった?」
「それは分かったけど……お前は大丈夫なんか?」
 宮脇が眉をひそめて尋ねると、途端に
「大丈夫じゃねえよ~!」
 と情けない声を上げてカウンターに突っ伏した。
「金谷の野郎、オレを騙って方々で悪さしやがって! シメてやりたいけど、どこにいるんだかさっぱりわかんねえ! 店は半グレに占拠されてるから近寄りたくねえし……やられっぱなしで最悪だよ!」
「お前の悪評流して回ってるんは金谷個人? 半グレは関わってないんか?」
「知らねえ。ケーサツは、半グレがオレをスカウトする気じゃないかって言ってた」
「スカウト?」
「そう~。自分で言うのもなんだけど、オレ顔もアタマも良いし平気で嘘つけるタイプだから、ホストとか女衒とか向いてるんだよね~。絶対やんないけどっ!」
 宮脇は聞いた話を頭の中で整理し、
「ほな、お前は下級生守るために金谷をシバいただけで、ワシの妹にちょっかい出したんは金谷っちゅー事か」
 と太い首を捻った。
「……アンタに関係するとこだけ抜き出すと、それで合ってる」
「わざわざ今日ここを指定したんは、金谷とつながっとる半グレのシマやと監視されてる可能性があるからか?」
 カウンターに伏せたままの金髪頭が微かに動いて、
「……ダチでもないアンタに頼める義理じゃねーけど、オレが岩工にちょっかい掛けてるみたいな話があったら、違うって釘刺して欲しい。これ以上ややこしい事になったら、オレ、キャパオーバーで死んじゃうから……」
 と、くぐもった声が聞こえた。素直に助けてくれと言えば良いのに、と宮脇は金髪頭に片手を乗せてぐしゃぐしゃとかき回す。
「頼まれんでもそうする。せやけど個人的には気が収まらんから、金谷をシメるときは呼んでくれ」
 そう言ってパサつく金髪を軽く引っ張ると、小さな頭がもぞりと動いて自分の方を向いた。
「金谷ボコすのは良いんだけどさ、バックにいるのに目をつけられたら面倒よ?」
 切れ長の大きな目で見上げられて、心臓が大きく跳ねる。宮脇は慌てて両手をポケットに突っ込んで視線を逸らした。
「知るか! ワシは妹を怖がらせたヤツをブン殴る。それだけや!」
「わ~ぉ、シンプル~」
「喧嘩はシンプルな方がええ。ゴチャゴチャ考えとったら負ける!」
「はは……確かに」
 清高は苦笑しながらカウンターから身を起こし、ほつれた髪をくくり直す。宮脇の手が髪に触れた時、咄嗟に振り払わなかったのが自分でも意外だった。
 今までそんな風に自分に触れる人間はいなかった。父は子を可愛がるタイプではなかったし、姉とは喧嘩ばかりで髪を引っ張られた記憶しかない。原田との接触には必ずセクシャルな意図がある。しかし、宮脇にはそんな意図はないだろう。

──……ないよな?

 チラリと目を向けると、宮脇は険しい顔でシャドーボクシングの真似をしていた。金谷をボコるシミュレーションだろうか?
 清高は目元を緩める。ひょっとしたら、利害関係なしの友達になれるかもしれない。くすぐったい予感に心が弾むのを感じながらカウンターの上を片付けていると、出入り口付近にいた宮脇を押しのけるように二人組の客が現れた。

 どちらもスケーター風の若い男だ。キャップとニット帽を目深に被っている。クチャクチャとガムを噛む音が不快に響く。
 清高は壁に掛かったアンティーク時計にチラリと視線を向ける。もうすぐ閉店時間の午後六時だ。
「スンマセン。平日は十八時でクローズなんです~」
 そう声を掛けたが、キャップを被った男はそれを無視して、タイル張りの床にガムを吐き捨て、
「アンタ、キヨタカさん?」
 とニヤニヤしながら問いかける。
「あ゛?」
 清高は一声唸るやいなやカウンターを跳び越えて、ガムを吐いた男の顔面を真正面から殴りつけた。
「ギャッ!」
 悲鳴と同時に吹き出した鼻血が床に飛ぶ。
「テッチャンに何しやがる!」
 掴みかかろうとするニット帽を、宮脇が後ろから羽交い締めにして店の外に引きずり出す。清高は鼻を押さえて呻く男の胸ぐらを掴み上げ、
「汚ねえもん吐き出してんじゃねえぞ、テメエ! オレがキヨタカだったら何だよ? あ? テメーになんか関係あんのか?」
 と凄む。
「ね、ねぇっす! オレ、ヨウジ君から伝言預かってて……!」
「あん? 伝言預かってたら人様の店の床汚していーんか? 話する前に床キレイにしろや!」
 容赦ない膝蹴りを腹に受けた男は、背中を丸めてえづく。
「おーい、オレは拭けっつったぞ? 余計汚して何してんの? 掃除もできない無能なの?」
 清高は床に男の頭を数度軽く打ち付ける。手を離すと、男は小刻みに震えながら自分の着ているシャツの裾で汚れた床を拭いた。最初に吐き出したガムも拾ってポケットに入れ、
「スンマセン……! 店を汚す気とか無かったんす……!」
 と土下座する。清高はその前にしゃがんだまま、
「ヨウジって誰?」
 と低く問うた。
「ヨウジ君は金谷君っス。ヨウジ君、キヨタカ君に話があるって言ってて……」
「話がしたいならテメーで来いって金谷に言っとけ」
 冷たく言い放って男を外へと蹴り出す。男は地面に転がったキャップを被り直しながら、清高の足元にすがりつく。
「それができないんス! ヨウジ君今大変なんッス。ドウヤマさん達に家も店も乗っ取られちゃって、監視されてるから自由に動けなくて!」
「ドウヤマて誰や?」
 宮脇が会話に割り込むと、キャップの男は計算高そうな目で宮脇を一瞥してから、すぐに憐れっぽい様子に戻って、
「ヤクザっす。どこの組かは教えてくんねーけど、どう見てもヤクザなんすよ。ヨウジ君、そいつから色々ヤベーこと聞いて、大事になる前にアンタに伝言したいらしいんす。長山公園で夜八時に待ってるから、来て欲しいって……。ドウヤマの監視が切れるのは今晩だけなんです! 頼んます! ヨウジ君を助けてやってください!」
 とアスファルトに額をこすりつける。清高は激しく舌打ちし、
「んなモン行くわけねーだろ、バカかお前。オレは金谷に迷惑掛けられてんだぞ? ドウヤマだか何だか知らねえが、金谷が危ない目に遭ってるのは自業自得だろ。オレを巻き込むんじゃねえよ! とっとと帰れ!」
 と怒鳴りつける。
「で、でも……このままじゃアンタも危ねえッスよ……」
「何が危ねえんだよ?」
 冷ややかな問いに、二人組は答えず俯く。清高は大きな溜め息を吐いた。
「話になんねえな。とっとと帰ってくれる?」
「でもっ……!」
 土下座していたキャップの男が立ち上がった瞬間、宮脇がそちらに向けて羽交い締めにしていたニット帽の男を投げつけた。
「ギャッ!」
「グァッ!」
 使いっ走り二人はもつれ合って路面に転がる。
「帰れって言うとるやろが!」
 大喝された二人は、転がるように袋小路を出口に向かって走り始めた。角を曲がる直前、キャップの男が振り返り、
「長山公園今夜八時っす! たのんます!」
 と捨て台詞のように叫ぶ。
「ウッセエ! 二度と来んな!」
 清高は消えていく背中に向かって怒鳴りつけた。

「……それで、どうすんねん? 行くんか?」
 宮脇が問うと、清高は倒れてしまった店の看板を屋内に片付けながら、
「どう考えても罠でしょ。行くわけない」
 と顔をしかめる。宮脇はしばらく腕組みして考え込んでいたが、
「お前が行かへんのやったら、ワシが行く」
 と顔を上げて言った。
「は!? なんでよ? アンタ関係ないだろ?」
「ある! ワシの妹に手ぇ出したんは金谷やろが。アホは放っといたら調子に乗る。ガツンとシメたる!」
 手の平に拳を打ち付ける宮脇に清高は溜め息を吐く。
「絶対に待ち伏せされてる。多勢に無勢じゃ勝ち目がない」
「ほな黙ってろって言うんか!? オマエかて、これ以上変なウワサ流されるのはイヤやろ!?」
「それはそーだけどさ~……うーん」
「なんやねん、煮え切らんなあ!」
 清高は渋い顔のまま店の電気を消し、警備システムのスイッチを入れてシャッターを下ろす。店舗の鍵をポケットにしまいながら、
「……あいつら、どうしてここにオレがいるって知ってたんだろう?」
 と独り言のように呟くと、宮脇は
「それも含めて直接訊いたらエエ。コドモの喧嘩にヤクザが直接出張ってくるはずないし、金谷に味方する奴なんか、そう何人もおらんやろ」
 と鼻息荒く答えた。清高は暗くなった空を見上げてしばらく考え込んでいたが、やがて
「そうだな……行くか」
 と小さく頷いた。