すてたい王子とためたい王子

 午前中の授業が終わり、食堂に行くと藤野がいつものキツネうどんをすすっていた。
 鯖の塩焼き定食にした。
「ここいいか?」
 うどんを口に入れていて話せないらしく、藤野は首を縦に振った。
 藤野の目の前の席に座り、鯖に箸をつけた。
「そういや、どうよ?夢斗は?」
「あぁ、酷い有様だ」
「まさかと思うけど、夢斗、荷物全部持っていった感じ?」
「俺は引っ越し前のあいつの状態は知らん。藤野は知っていたのか?」
「やばっ」
 はぁ~、俺は大きくため息をついた。
 あんなに焦って同居人を決めさせた理由が分かった。
「なるほど、だからお荷物(夢斗)を俺のところに……」
「いやいや、夢斗が困ってたからさ」
「過ぎたことを言っても仕方ない。今は……、片付けをしているところだ」
 思わずため息が出る。
「そうか」
 藤野は居心地が悪くなったようで、「じゃ、俺授業あるんで行くわ」とすぐさま去っていった。
 
 授業が終わり、自宅に戻ると誰もいなかった。
 そうか、夢斗はバイトか。
 あいつがいないと静かだ。
 姉貴と一緒に住んでいた時、姉貴はほとんど家にいなかったので、一人で過ごす時間には慣れていた。でも、血のつながった誰かと住んでいるという感覚は心細さを感じさせなかった。
 そう、孤独を感じることはなかったのだ。
 今は、まだ得体のしれない人間と生活を始めたばかり。
 一人でいる時間は本当に一人なのだと淋しさを感じる。
 姉貴の存在は自分にとって大切なものだったのだな、と、しみじみと思った。