「やっと倫くんがこっちの世界に戻ってきてくれたよ」
夢斗がホクホク顔で俺を迎える。
「あぁ、悪かったな」
「いや、嬉しいよ。倫くん、何でもクールに物事を見てると思ったけど、マンガに対する熱量はすごかったから。好きな物には一直線なんだね」
「我ながら行き過ぎたと思っている」
「いいよ、いいよ。倫くんの意外な一面が見られたから嬉しいよ」
「……ありがとう」
夢斗はいつもになく上機嫌だった。
何となく弱みを握られたような気がして、悔しい。
「そんなこと、俺が言うと思ったか。今日も片付けするぞ!」
夢斗が一気にしょんぼりした。
喜んだり悲しんだり、表情が忙しい奴だ。
「倫くんのいじわるぅ。もうマンガ貸さないよ」
「一生分マンガは読んだ。気が済んだから不要だ」
「はぁ。いつもの倫くんに戻っちゃったよ」
夢斗の部屋に入ると、引っ越し直後からは想像できないほどスッキリしてきている。
が、まだ29箱もある。
何より気になる「重要」と書かれた箱。この「重要」の意味は何なのか?
とても気になる。
夢斗があれだけ必死に隠したことが余計に興味を掻き立てる。
「おい、今日は『重要』と書かれた箱を片付けよう」
「いやいやいやいや、コレは自分で片付けるから大丈夫」
夢斗の様子がおかしい。
いつもは人任せにするのに、自分で片付けると言っている。
何かある。
好奇心が急上昇した。
「重要だからこそお前ひとりじゃ無理だろ。今までだって、自分で判断できなかったじゃないか」
「まあ、そうなんだけど。でもコレは特別で……」
夢斗と俺は『重要』と書かれた箱の一つを、両側から引っ張り合った。
俺が引っ張れば夢斗はその二倍の力で引っ張り返す。
押し問答ならぬ、引き問答のようだった。
「だったら、俺はこっちの箱を開けさせてもらう」
床に置かれた「重要」箱の2つ目を開けようと手にかけた瞬間、夢斗はバランスを崩し、俺の背中にダンボールごと倒れてきた。
「あわわわわ!」
「痛って―――!」
俺は開けようと思っていた「重要」箱に腹ばいに倒れ、ダンボール箱を押しつぶした。
その瞬間、箱の中からまたしても嫌な音が聞こえてきた。
パリッ。
「なんか割れたような……」
急いで箱を開けると、
こ、これは……。
アクスタ。
ハッピーバニーというアイドルのメンバー、AYAMEのアクスタが箱いっぱいに入っている。
開けてすぐに目に入ったアクスタが真っ二つに折れていた。
20センチメートルくらいの大きさで、腰のあたりから折れている。
それを持ち上げて、夢斗の目の前にぶら下げた。
夢斗が青ざめて、手で口を押さえている。
夢斗は放心状態になってしまったようで、微動だにしない。

