すてたい王子とためたい王子


「夢中になれるものが1つでもあれば人生を豊かにします。何でもいいから見つけましょう。自分が子供だった頃に夢中になったことや、やりたかったことを思い出して、やってみましょう。あなたのインナーチャイルドが目覚めます。」
そんな言葉を自己啓発本で見かけたことがある。
読んでいた時は、バカらしいと素通りしていたが、この年になって夢中と言えるものが見つかったような気がする。
しかし、インナーチャイルドが目覚めた実感は全くない。
とはいえ、夢中になるものはあっても、生活のペースが崩れるのは許せない。
生活は規則正しく、その中で夢中になるものに熱中する。
そんな生活が理想だ。
“マンガ”と“生活”とを天秤にかけてみた。考えるまでもなく“生活”が勝った。
マンガを読み終えると共に、マンガ漬けの生活は卒業した。
400冊のマンガをゴミ置き場に移動する。
夢斗は手伝ってくれないので、一人で何往復もしてマンガを移動させた。
 自分から言いだしたこととはいえ、散々だ。
 だから物をため込むと片付けが大変なのだ。

 今、床には何もない。
 部屋の中で両手を広げ、靴下を脱ぎ去る。
 4秒で深く吸い込んで、8秒でゆっくり吐く。
 大げさだが、部屋の空気が変わった気がする。
 やっぱりこれだ。
 ひんやりとした床を足の裏で感じる。
 一気に解放感が訪れた。