すてたい王子とためたい王子

 次の日も休みだったので、朝食を夢斗と一緒に食べた。
 以前の夢斗は朝7時の朝食の時間に起きてくることがなかったが、最近はきちんと身支度までして起きてくる。
 朝はトースト、サラダ、ヨーグルト、コーヒーのメニューだ。
 最初の頃は、夢斗は「朝は白飯が食いたい!」と毎日言っていたが、自分で準備するのは面倒らしく、俺の用意した朝食を黙って食べるようになった。
 コーヒーは淹れたてが美味い。
「コーヒー淹れてくるか」
「わーい!倫くんが淹れてくれるコーヒーはおいしいんだよね」
「お前に味がわかるとは考えてもいなかった」
「コンビニコーヒーと同じくらいおいしいじゃん!」
 夢斗よ……。
 これは褒めているのか?
 俺は専門店で厳選したブレンド豆を自宅で挽いてドリップしているのだが。
 そんな手間暇かけたものがコンビニコーヒーと同レベル……。
 聞くんじゃなかった。
 俺は肩を落とした。
「倫く―――ん、オーーーイ」
 気持ちが落ちていたようで、意識が飛んでいた。
 夢斗の声が遠くから聞こえてきた。

「倫くん、今日も片付けしようと思う」
 夢斗が自分から片付けを言い出した。
 とうとう一人で出来るようになったか。
 せっかくの休日だ。俺は映画でも見に行ってくるか。
「がんばれよ」
 ショックが抜けきれなくて、声を絞り出すように言った。
「もちろん、倫くんも手伝ってくれるよね?」
「はぁ?」
「だって、ぼく一人じゃできないって」
 夢斗の目がウルウルして、助けを求めている。
 わかりやすいんだよ、三文役者めが。
「……わかった。手伝うよ」
 ガッカリ。
 上半身の力が抜けて、肩がダダ下がりだ。
 夢斗が来てからというもの、夢斗のペースにのせられている感がある。
 こういうのを人たらしっていうんだろうか。
 藤野も夢斗と仲がいいみたいだし、夢斗の面倒もみているようだ。
 あの二人を見ていると、飼い主と飼い犬みたいに見える。
 飼い主(藤野)にしっぽ振ってまとわりつく飼い犬(夢斗)みたいな。
 そう思うとなんだか笑える。
 
「よし、今日もやるぞ!」
 キッチンで皿を洗っている夢斗に声をかけた。
「お―――!倫隊長!ついていきます!!」
 泡だらけになった手で敬礼している。
 ボトッ。
 泡が盛大に床に落ちた。
「おい、拭いとけよ」