すてたい王子とためたい王子

 6箱全てを開け終わり、中身を確認するとまたしても思いがけないものが出てきた。
 食べ物なのだが、ほとんど賞味期限が切れている。
 一つひとつ箱の中から取り出し、賞味期限を確認する度に、俺の顔は引きつり、こめかみがピクピク動いた。
 中には賞味期限が5年前に切れているものもある。
「おい、なんでこんなに賞味期限が切れた食べ物があるんだ?」
「安いからつい買っちゃったんだよね。でも、食べきれなくて。てへっ」
「食べ終わるまで買わなければいいだろ?」
「安い時に買っておかないと勿体ない気がしちゃって……」
「おい、食べなかったら勿体ないどころかフードロスだろ」
「あ……!」
 夢斗が目を丸くして、口も大きく開けたまま動きが止まった。
 埴輪に似ている。
「今気づいたのかよ。ハァ」
 思わずため息が出る。
 夢斗と話していると調子が崩れる。
 どう考えてもおかしいし、合理的でないのにそれが当たり前と思って行動している。
 なんでそんなことするのか。
 安いから買っておかないと勿体ない、という考えもよくわからない。
 買った物を食べない方が勿体ないと思わないのか。
 俺には理解不能だ。
 この先、あいつとわかり合える気がしない。

「そしたら、賞味期限の切れているものは捨てよう」
「え―――!!勿体ないじゃん!」
 勿体ないってこういう時に使う言葉か?
 意味不明、またでた。
「おい、5年前のせんべいを食べて、腹を壊したら?病院行って薬もらって、そんなことしてたら、せんべい代より高くつくぞ。金だけじゃない、時間もだ」
 俺はせんべいの袋を持ち上げ、一気にまくしたてた。
 俺の気迫に夢斗は負けたらしい。
「う、うん。捨てよう。賞味期限切れのものは、ルールに従って捨てよう」
 夢斗は素直にゴミ袋に賞味期限切れの食べ物を捨てていった。
 賞味期限を確認する、ゴミ袋に入れる。
 比較的簡単なこの作業は、感情を入れるところがないせいか、小一時間で終了した。
「次からは食べられる分だけ買って来いよ」
「はぁい」
 こいつ、わかってるんだろうか?
 まだダンボール箱は山積みだ。
 残りの49箱もこんな感じなんだろうか?
 夢斗にとって必要で大切なものはあるのだろうか?
 俺には理解不能だが、夢斗には夢斗の事情があるのかもしれない。
 単にずぼらなだけかもしれないが。
 あぁ、それにしても先が思いやられる。