すてたい王子とためたい王子

 夢斗は自分から片付けをしない。
 一緒に暮らしてわかったことだ。
「おい、片付けするぞ」
 俺の一声で片付けがスタートする。
 
 1回の片付けにかかる時間は3時間半。
 それでも全部のダンボールは片づかない。
 正直、俺も暇な時、かつ気持ちが乗っている時でないと手伝えなくなってきた。
 リビング、廊下、風呂、トイレといった共有スペースには夢斗のものは置いていないので、俺に迷惑はかかってない。
 俺が手伝う必要はないのだが……。
 またGが出たらと思うと、恐怖心で片付けを手伝ってしまう。
 あぁ、今日も夢斗はタブレットを見ながらソファで寝そべっている。
 時々笑い声。
 この姿を見ると、無性に腹が立ってくる。
 動画見ている時間があるなら、片付けしろよ!と。
「おい!」
「わぁ!倫くん!!」
 ソファの上で夢斗が飛び跳ねるように背筋をまっすぐにして座った。
「わかってるだろうな、か……」
「はいぃ―――!片付けします!!」
 ソファから勢いよく立ち上がり、敬礼までした。
「よし。頑張れよ」
 俺はコーヒーを入れようかとキッチンに向かおうとしたら、夢斗が俺の腕をガッチリつかんだ。
「倫くん、お願い。手伝って……」
 夢斗の目がウルウルしていて、何やら期待がこもっていそうだ。
「またか……」
「だって、ぼく一人であの量は片付けられないよぉ」
 夢斗は俺の弱点を知っているのかもしれない。
 目を潤ませながら懇願すれば、断れないことを。
 このままではあいつの思惑通りになってしまう。
 それなのに……。
「わかった。今すぐやるぞ」
 気持ちと真逆の言葉を口に出していた。
 あぁ、俺の休日……。また片付けか……、しかも他人の……。
 夢斗の部屋に入ると、相変わらずダンボール箱は山積みだ。
「手っ取り早く、窓際にある箱からやっていくか。6箱あるな」
「了解です!倫隊長!」
 また、敬礼をしている。
「変な呼び方やめろ!」
「だって、ぼく、倫くんいないと片付けられないし……」
 口をとがらせてブツブツ独り言を言っている。
「いつもの呼び方でいいから」
「はぁーーーい」
「じゃ、早速箱を開けていくぞ」