すてたい王子とためたい王子

 昨日、すぐに壊れたメガネを修理に出した。戻ってくるまで約2週間かかるという。
 今朝、スペアのメガネをかけたものの、度が微妙に合わないせいか頭痛がした。
 朝食を食べながら、こめかみをグリグリと押す。
「倫くん、大丈夫?」
 そんな様子を気遣ってか、夢斗が心配そうな顔をする。
「まあ」
「頭痛薬、ぼく、持ってこようか?」
「あぁ、頼む」
 最悪なコンディションだ。
 この調子では授業も集中できなさそうだ。
「はい」
 夢斗が痛み止めの薬と水を手渡した。
「ありがと」
 錠剤を飲むと、夢斗が「なんか心配だからぼくも一緒に学校行くよ」と言い出した。
「お前、1限はないだろ?」
「メガネのせいで事故にでもあったら嫌だし」
 夢斗が口を尖らせながらモジモジしている。
「事故って、大げさな……」
「もとはと言えば、ぼくのせいだし、心配だし」
「わかった。じゃあ、もう家出るぞ、早く準備しろ」
「はーーーい」

 頭痛が治まらない。
 授業中もメガネを外してこめかみを押さえていたが、つらい。
「はぁーー」
 思わずため息をつくと、教授に睨みつけられた。
 生活に支障をきたしている。
 あと2週間か……。
 厳しいな。

 食堂に行くと夢斗と藤野が楽しそうに会話していた。
「倫くん!」
 俺を見つけるなり藤野が手を挙げる。
 俺も手を挙げて応える。
 彼らが座っているテーブルに俺も着席する。
「倫くん、メガネ壊れちゃったんだって?」
 藤野は夢斗から既に事情を聞いているらしい。
「あぁ。頭が痛くて仕方ない」
 メガネを外し、こめかみをグリグリした。
「こんな時に言うのもなんだけど、倫くん、マジイケメンだわ」
 藤野がまじまじと俺の顔を見つめる。
「やめろ。気持ち悪い」
「でもさ、倫くん、そう思ってるのは俺だけじゃないみたいよ、ほら」
 藤野が周囲に視線を向ける。
 女子たちが「あんな人いたっけ?カッコイイ」「あのイケメン、誰よ?」と話している。
 本人たちは小声のつもりだろうが、丸聞こえだ。
 あぁ、だから嫌だったんだよ。
 メガネを取るとこういった面倒事になるってわかっていたから。
 頭痛が治まらないが、メガネをかける。
「倫くん……。ごめんね」夢斗が申し訳なさそうな顔をしている。
「あと2週間で修理に出してるメガネが返ってくるから、それまでの辛抱だな」
 俺は諦めるように言った。

 
 2箱分の服はクローゼットに収めた。処分予定の18箱も、行き先は決まっている。
 手つかずのダンボール箱、残55箱。