すてたい王子とためたい王子

「じゃあ、箱を開けていくぞ」
「ラジャー」
 俺と夢斗は片っ端からダンボール箱を開けていった。
 二人で開封した箱は20箱。
 中に入っているものはほとんど洋服、洋服、洋服、洋服、たまに靴、バッグだった。
 こんなに……。
 しかも、ここに引っ越して2か月経つが、段ボールを開けたのは今日ということはこれまで必要ではなかったということになる。
 着る人間は一人。一日に着られる服は上下1着ずつだ。
 ここにある洋服を一日に上下一着ずつ着まわしたとして、1か月以上はかかりそうだ。
 箱の中から服を1着取り出すと、なんと新品のTシャツだった。
 なぜ新品とわかったのかというと、値札が付いたままだったからだ。
 他の服も確認してみる。
 ダンボールから出てくる服にはほとんど値札が付いている。
 買ったはいいが着ていないようだ。
 もう一箱、見てみる。
 こっちはバッグ。
 黒のレザーのバッグだが……。白い粉が……。ところどころ緑の粉もある。
 こ、これは、カビなのでは……。
 同じダンボールに入っているバッグも白い……。
 箱の中でカビが繁殖している。
 一体いつからだ?!
 身体に悪い菌が繁殖していると知ったとたん、咳が出始めた。
「ごほっ、ごほごほっ」
「倫くん、大丈夫?」
「お前ぇーーーー。こんなもん家に持ち込んでくるんじゃねぇ」
 夢斗をにらむ。
 俺の肩越しに夢斗が箱を覗き込む。
「いやー、高かったからさ。ブランドもんだし。拭けば使えるかなって。てへ」
「使えるわけないだろ?!カビくさっ!ごほっごほ」
「倫くん……。マスク持ってこようか?」
「こういうところだけは気が回るな」
 夢斗はカバンの中をごそごそ探し、しわくちゃのマスクを差し出した。
「はい」
 マスクした方が衛生上悪い気が……。
 もらったマスクは静かにポケットにしまった。