すてたい王子とためたい王子

 夢斗はバイトの日は21時半頃には帰る、と言っていた。
 それまでの間は一人の時間を有効活用したい。
 と思ったが、ここ最近は暇さえあれば夢斗の部屋の片づけをしていたので、一人の時間に何をしたらいいのかわからなくなってしまった。
 部屋着に着替え、明日のバイトの準備に取り掛かった。
 週に2回、家庭教師のバイトをしていて、高2の生徒の数学を教えている。
 1回2時間、時給2,400円だ。
 小遣い稼ぎにはちょうどいい。
 世間でいうところの有名私大ということもあり、大学名が信頼につながるバイトは効率がいい。しかも、大学名が時給に反映されるという条件は、自分の持っている価値を無駄なく使えるという点でも、非常に合理的だった。
 使えるものはとことん使う。
 これは俺が19年生きてきて学んだことの一つだ。

 机に向かい、参考書を開く。
 懐かしさがこみ上げてくる。
 数年前まで自分も勉強してきたことを思い出す。
 あぁ、この数式。
 自分はどのように解いたのか、復習しがてら、生徒にわかりやすい教え方を考える。
 生徒の性格に合わせて、言い回しや例えをいくつか用意する必要があった。
 問題を解いていると、ついつい夢中になり生徒のことを忘れてしまうことがあるので要注意だ。
 一つの答えを目指してがむしゃらに解いている過程が好きなのだ。
 そんなことをしていると、あっという間に時間が過ぎていくのだった。
 窓の外に目を向けると、夕日が沈もうとしていた。
 部屋の中が暗くなっていることに気づき、照明をつける。
 既に19時を回っていた。