すてたい王子とためたい王子

 6時の目覚ましが鳴る。
 ベッドから起き上がり、カーテンを開け、本日の天気を確認。
 その後は、シャワーへ直行。
 朝食はトーストとサラダ、ヨーグルト、ブラックコーヒーとお決まりのメニュー。
 炭水化物、ビタミン、たんぱく質、眠気覚まし、と完璧だ。
 その後、2LDKのリビングを整え、ロボット掃除機のスイッチを入れる。
 家に帰った時に、埃一つない状態で自分を迎えるためだ。
 最後に、身支度を整え、8時に家を出る。
 自宅から駅まで徒歩5分。電車で30分。大学までは、そこからさらに徒歩5分。
 余裕のあるタイムスケジュールだ。
「今日も完璧だ」
 玄関を出て、青空を見上げると、思わずほほ笑みがこぼれた。
 大きく息を吸い込み、吐き出す。

 俺の一日は平日だけではなく、休日もこのリズムで始まる。
 翌日が休日だからと夜更かししたり、休日だからと言って、遅くまで寝ていると生活のリズムが崩れる。
 平日のパフォーマンスを下げる行動は慎む。
 何事もなく、いつも通りの日常を送るために努力する。
 他人にとっての楽しみは自分にとっては毒だ。
 
 俺は1限から始まる授業が大好きだ。
 夜更かし、合コン、恋人とのイチャイチャ。
 夜を楽しみたい年頃の学生にとって、1限は最も避けたい時間帯かもしれない。
 だが、もったいない。
 なぜなら、朝は最も頭が働くゴールデンタイム。
 さらに、朝は一日の中で最も体力がある時間帯だ。
 キレッキレの頭で授業に出ると知識の吸収が早い。
 少ない労力で授業の内容が頭に入る。
 非常に効率がいい。
 だからこそ、午前中を中心に授業を取り、夕方はリラックスタイムに充てる。
 俺はこの日常がずっと続いていくことを望んでいる。
 
 *

 校門に着いたところで腕時計を見る。
「よし」
 想定通り、8時40分。
 計画通りに行動できている自分を褒めたい。
 周りを見渡すと、背中を丸めて眠そうに歩いている奴や朝からあくびをしながらコーラ片手に歩いている奴もいる。
 このような人間を視界に入れるとテンションが下がる。
 恐らく単位が足りないために、仕方なく1限の授業を取ったのだろう。
 やれやれ。
 彼らは生活を見直そうとか思わないのかね。
 いかん。
 無自覚に彼らを見下している自分を窘(たしな)める。
 自分は自分、他人は他人。
 人間関係は一定の距離を保つに越したことがない。
 
 予鈴が鳴った。
 早く授業の準備に取り掛からねば。