コンビニで買える恋

7.久しぶりの再会





休講になった。
サボり癖がある高岡は、今日も今日とて秀一に代理出席を頼んでいたため、なんの被害も被っていない。

真面目に学校にきている秀一だけが、教授の体調不良の煽りを受けていた。

こういう時、世の中は不公平だ、と思う。

それでも急にできた余暇時間に、ただ早く家に帰るのも芸がない気がして、いつものコンビニに寄った。

「あ、」
「......す」

そこには、十吾がいた。
彼は斜陽の中、ただじっと座っている。

久しぶりの距離感に少し戸惑いつつ、秀一はなんとなく、隣に座った。

「久しぶりだね」
「まぁ、そう......すね」
「忙しかったの?」
「......」

彼は無言で、手元のバイクのキーを指先でいじっている。

その態度は、柔らかな拒否にも思えた。

よく考えてみれば、彼はしばらくここに来なかった。
もしかしたら、秀一と、話したくなかったのかもしれない。

最後に十吾ときちんと話した日ーー一緒に、河原に行った日だが、何か良くないことをしてしまっただろうか。

悪意を持って何かをしたわけではないけれど、図らずも嫌な気持ちにさせてしまった可能性はある。

謝ろうか。
いや、でも、何が悪いかわかっていないのに謝るのは、不誠実ではないだろうか。

秀一は、いよいよどうすれば良いのかわからなくなって、『じゃあ......』と、腰を上げようとした。

「......今度どこいくの......すか?」
「どこって......」
「陽斗と」
「あぁ、それか」

秀一は十吾の隣にまた腰を落ち着けて、服を選んでもらうことになった経緯を伝えた。

それがずっと、気になっていたのだろうか。

だとしたら、それはーー

「もしかして、ヤキモチ?」

その答えにたどり着いた秀一は、自分がすごく勘が鋭い生き物になったように思えて、得意げな気持ちになった。

思わず、恋愛の話に興じる同級生のように、身を寄せて、肩で肩を小突く。

十吾は反抗期よろしく少し離れて、咳払いをした。

「ヤキモチって、なんで」

顔は平静を保っているが、耳の端が赤い。
やはりそういうことか、と、秀一は納得した。

「大丈夫だよ、取らないから」

秀一は、重くなりすぎないように気をつけながら、けれど真剣に、思いを伝えた。

「陽斗くんのこと、十吾くんから取ったりしないよ」
「?......なにそれ?」

十吾は面食らった顔で知らんぷりをしているけれど、耳を赤く染めてそんなことを言ったところで、説得力はない。

「あれでしょ、陽斗くんと僕が仲良くなって、友達が取られちゃう気がしたんでしょ?」
「何言って......」

大丈夫だ、若者よ。お兄さんは全てわかっている。
君をこれ以上、不安にさせることはない。

「けど、本当に大丈夫だよ!なんていうか、陽斗くんは二次的な友達っていうか......なんか、なんだろう......弟の友達、みたいな」
「弟?」
「そうそう、十吾くんが弟で、陽斗くんは弟の友達、みたいな」
「......弟」

ボソリ、と呟いて、十吾がスクッと立ち上がった。

「え、あ、ごめ、」
「別に、秀一さんは、悪くないよ」
「......あの、」
「俺、帰る」

十吾は背を向けたまま、バイクの方へ歩いて行った。

何か声をかけないと、と思うけれど、足も手も、言葉さえも、うまく出てきてくれない。

「あの、」
「じゃあ」

十吾はそれ以上、秀一を見ることもなく、シールドを被った。

何かをしてしまったことだけはわかる。
それは一体、何なのだろう。

けれどもしもそれで彼が傷ついたのなら、悲しんだのなら、秀一はすぐにでもその棘を抜いてやりたかった。

「待って、十吾くん!」

慌てて一歩を踏み出したところで、エンジンがブオンと音を立てる。

結局手は、届かなかった。