「あっちぃー」
隣に座っている前田はワイシャツの襟元を緩める。
「今、28度だって」
「もっと暑くね?あー早く、エアコン効いてくれー」
前田がそう感じるのも無理はない。
10月に入ったこともあり、涼しい日も増えてきた。
暑さに慣れていた体も、もう元に戻ってしまっているのだろう。
加えて今朝の気温は18度。
温度差が10度もあれば、気温以上に暑く感じるのもうなずける。
俺たちは二泊三日の修学旅行で沖縄にやってきていた。
先ほど空港に着いた俺たちは、目的地までバスで移動をしている真っ最中だ。
「なあ、あとどんくらい?」
「30分くらいだと思う」
「じゃあ、着いたら起こして」
前田は大きなあくびを一つすると、目を閉じてしまった。
「あれ、陸寝てる?」
前田がすやすやと寝息を立て始めた頃、同じ班の木下が後ろの座席から身を乗り出す形で声をかけてきた。
「起こす?」
「いや、いいよ。じゃあ、小泉だけね」
木下は俺の手に飴を一つ置くと、後ろに引っ込んでいった。
俺は貰った飴をなめながら、窓の外の景色を眺める。
青い海に白い砂浜。そして晴れ渡った空。
絶好の修学旅行日和だった。
前田、木下、織田、そして俺。
2組7班は4人でテーブルを囲んでいた。
テーブルは折りたたみ式のもので一般的な体形の人間が4人、向かい合わせになって作業するには十分な大きさだった。
しかし俺を除く3人がバスケ部の大男ともなれば、やや窮屈だった。
「おい、お前幅とりすぎ。もっとあっち行けよ」
「いや、お前が向こう行けや。あー!お前のせいではみ出たんですけど」
作業開始からまだ10分と経っていないが、向かいに座る木下と織田は同じような小競り合いをもう何度も繰り返している。
しかし、木下と織田のくだらない喧嘩は日常茶飯事。
これが彼らの通常運転と言ってもいい。
前田のグループに入ったばかりの頃は俺も驚いたが、もうすっかり慣れてしまった。
「小泉うまいな」
前田もそんな二人を気にすることなく、俺の手元をじっと覗き込んでそう言った。
「いや、別に。前田だって……」
俺はそう言いかけて、言葉に詰まった。
それは前田の手にはよくわからない模様が描きこまれたシーサーが握られていたからだ。
修学旅行1日目は体験学習。シーサーの絵付け、カヌー、伝統楽器、マリンスポーツの4つの中から、班ごとに一つを体験することになっていた。
修学旅行より二か月ほど前。木曜の五限に割り当てられているロングホームルーム、2組ではドラフト制を採用し体験学習の行き先決めが行われた。
俺たち7班は一巡目にマリンスポーツを希望した。
ただ、やはりマリンスポーツを希望する班は多く、全班一巡目の希望が出そろってからじゃんけんで参加枠を争うことになった。
そして全班一巡目の希望が出そろってみれば、カヌーと伝統楽器は定員ぴったり。
じゃんけんに負けた班は自動的にシーサーの絵付け体験に割り当てられるという状況になっていた。
結末は知っての通り。
俺たち7班は見事じゃんけんに負け、こうして男4人で机を囲み仲良くシーサーの絵付け体験をしている。
「終了してくださーい。今から乾燥の工程に入るので、20分の休憩とします。休憩中は工房の近くを散策しても構いません」
講師の言葉に俺は手を止めた。
もくもくと作業をしていたら、いつの間にか時間になっていたようだ。
みんなは続々と外へ出ていく。
俺たちが今いる工房は、大きな公園の敷地内に建っている。
公園内には他に、小さな博物館や遊具の設置された広場などさまざまな施設があるのだ。
せっかく来たのだからそれらを見て回ろう。
そう思うのは自然なことだ。
休憩時間に工房内に残っているのは、俺含め数人。
例にもれず、俺以外の3人も早々に見物に出かけて行った。
俺はつかの間の静寂を堪能していた。
「いやー、外あっちぃわ」
休憩時間が半分ほど過ぎた頃、前田が一人で戻って来た。
もう少し一人になりたかったのだが、致し方ない。
「木下と織田は?」
「缶蹴りやってる。もうこれがさ、終わんねえのよ。だから逃げてきた」
前田の話によれば、三人で公園を散策中にたまたま広場で小学生たちが缶蹴りをしているのを見かけた。
その様子を見て懐かしくなり、やってみたところまでは良かったのだが、問題は鬼が一巡した後。
木下と織田が互いに俺の方が強いと主張し、案の定小競り合いが始まってしまった。
どちらが強いか競うために前田はひたすら鬼をすることになり、炎天下の中、木下と織田を追いかける羽目になったという。
やれどもやれども終わらない缶蹴りに、嫌気がさした前田は、2人を置いて戻って来たのだった。
事の顛末を知った俺は流石に苦笑するしなかった。
そんな俺を見てか前田は決まりが悪そうに言った。
「ほんと二人の世界っていうかさ。喧嘩ばっかですぐ周り見えなくなんだよ。小泉もいつもわりぃな。」
「いや、全然。仲良くてうらやましい」
うらやましいというのは本音だ。
喧嘩になるのはお互い本音が言えるから。
そして、本音を言えるということはそれだけ信頼関係が築かれているということ。
俺だって陽翔とはかなり仲がいいと思っているが、陽翔に本音を包み隠さず言えるかと聞かれれば答えはノーだ。
別に陽翔を信頼していないわけじゃない。
でも、無遠慮に本音を言えば嫌われるかもしれない。
俺の中にあるそんな思いが本音で話す邪魔をしてしまう。
だから、相手に嫌われるかもしれないなんて考えもしないで、言いたいことを言い合える二人の関係は俺からすれば羨ましい。
「でも、会話とか入りづらい時あんだろ」
前田は優しい。
1年の時に同じクラスだったといっても、話したのは片手で数えるくらい。
その数回も陽翔と前田が話しているところに混ざっただけ。
なのに前田はボッチだった俺に声を掛けてくれて、グループに入れてくれた。
それに加えて俺が会話に入りやすいよういつも気を使わせている上に、ついには面と向かって聞くほど心配させてしまった。
「みんな面白いから聞いてるだけで楽しくて。それで話に入れてないだけだから、あんま気にしないで」
半分嘘で半分本当。
みんなが面白いのは本当だ。
木下と織田はバカばっかりやっていて、そんな2人を前田がまとめる。
前田はまるで2人の母親みたいで。
そんな3人のやり取りは思わずクスりと笑ってしまうものも多い。
「なら、よかった」
俺の返答を聞いた前田はどこかホッとした表情を見せた。
それから俺たちは休憩終了間際、木下と織田が戻ってくるまで他愛もない雑談をして過ごした。
「小泉も海行こうぜ」
体験学習を終えて、ホテルに到着するなり前田に声をかけられた。
夕食前の点呼までという条件で、ホテル近くの海に行く許可が担任から出されたのはつい先ほど。
体験学習を終え、バスでホテルに向かう道中での事だった。
俺も海には行きたい。
せっかく沖縄に来たのだから、見ないで帰るのはもったいないだろう。
今朝早かったせいか、この時点でかなり疲れていたけれど、俺は前田の誘いを受けることにした。
「うわー、めっちゃ曇ってる」
海に着いて早々、前田は不満げに言った。
確かに昼間の晴天が嘘のように、空はどんよりと黒い雲に覆われている。
晴れてたらきっと夕焼けが見えたはずだ。
「陸が雨男だから」
「昼間晴れてたのが奇跡」
一緒に来ていた木下と織田は口々に前田のせいだと騒ぎ立てた。
「うっせーな。このやろ」
前田は木下と織田の方へ砂を蹴り上げる。
「うっわ、なにすんだよ」
「ちょっと口に入ったんだけど」
負けじと2人も前田に砂をかけ返した。
砂の掛け合いは次第にエスカレートしていき、しまいには砂浜での追いかけっこに発展した。
昼間、あの炎天下のなか缶蹴りをして体力もだいぶ減っているだろうに、みんな元気だな。
俺は走り回る三人の様子を少し離れたところに腰を下ろして眺めていた。
「小泉」
聞き覚えのある声に呼ばれて振り返れば、そこには永井が立っていた。
「こういうの参加しないタイプだと思った」
「前田……班のやつに誘われて。いや、永井こそ」
「俺も小林に連れてこられた」
永井は俺の隣に腰を下ろすと、波打ち際を指さした。
永井が指さす方を見れば、浪打際で遊んでいる集団の中に陽翔の姿があった。
声をかけようと思ったが、集団の中に俺の知っている顔はない。
場をしらけさせても嫌だし、仮に歓迎されてもあの中に混ざれる自信がないので声をかけるのは断念することにした。
「永井は今日なにした?」
「カヌー。小泉は?」
「シーサー作って来た」
俺がそう答えれば永井は吹き出した。
「小泉、美術壊滅的なのに?」
「うっせー。ってか色塗るだけだったから、そんな変なのできてねぇし」
夏休みの一件以降、俺たちは2人で昼を食べたり、放課後に遊んだりと順調に交流を重ねていた。
そして今ではこんな風に軽口を言い合うくらいには、仲良くなっていた。
「小泉は明日の自由行動どこ行く?」
体験学習の話題がひと段落したころ、永井が質問してきた。
2日目の明日は午前が平和学習、午後は班別の自由行動という日程になっている。
「確か水族館」
「俺も」
「じゃあ、会うかもね」
永井はもちろん陽翔と同じ班だ。
行き先が同じなら、偶然会って一緒に回るなんて展開もあるかもしれない。
まあ、水族館に行く班も多いし、そもそも人もすごいだろうから約束なしに会える可能性なんてほとんどないだろうけど。
「かもね」
永井はにやりと笑う
その様は酷く妖艶で。
俺は思わず見とれてしまった。
隣に座っている前田はワイシャツの襟元を緩める。
「今、28度だって」
「もっと暑くね?あー早く、エアコン効いてくれー」
前田がそう感じるのも無理はない。
10月に入ったこともあり、涼しい日も増えてきた。
暑さに慣れていた体も、もう元に戻ってしまっているのだろう。
加えて今朝の気温は18度。
温度差が10度もあれば、気温以上に暑く感じるのもうなずける。
俺たちは二泊三日の修学旅行で沖縄にやってきていた。
先ほど空港に着いた俺たちは、目的地までバスで移動をしている真っ最中だ。
「なあ、あとどんくらい?」
「30分くらいだと思う」
「じゃあ、着いたら起こして」
前田は大きなあくびを一つすると、目を閉じてしまった。
「あれ、陸寝てる?」
前田がすやすやと寝息を立て始めた頃、同じ班の木下が後ろの座席から身を乗り出す形で声をかけてきた。
「起こす?」
「いや、いいよ。じゃあ、小泉だけね」
木下は俺の手に飴を一つ置くと、後ろに引っ込んでいった。
俺は貰った飴をなめながら、窓の外の景色を眺める。
青い海に白い砂浜。そして晴れ渡った空。
絶好の修学旅行日和だった。
前田、木下、織田、そして俺。
2組7班は4人でテーブルを囲んでいた。
テーブルは折りたたみ式のもので一般的な体形の人間が4人、向かい合わせになって作業するには十分な大きさだった。
しかし俺を除く3人がバスケ部の大男ともなれば、やや窮屈だった。
「おい、お前幅とりすぎ。もっとあっち行けよ」
「いや、お前が向こう行けや。あー!お前のせいではみ出たんですけど」
作業開始からまだ10分と経っていないが、向かいに座る木下と織田は同じような小競り合いをもう何度も繰り返している。
しかし、木下と織田のくだらない喧嘩は日常茶飯事。
これが彼らの通常運転と言ってもいい。
前田のグループに入ったばかりの頃は俺も驚いたが、もうすっかり慣れてしまった。
「小泉うまいな」
前田もそんな二人を気にすることなく、俺の手元をじっと覗き込んでそう言った。
「いや、別に。前田だって……」
俺はそう言いかけて、言葉に詰まった。
それは前田の手にはよくわからない模様が描きこまれたシーサーが握られていたからだ。
修学旅行1日目は体験学習。シーサーの絵付け、カヌー、伝統楽器、マリンスポーツの4つの中から、班ごとに一つを体験することになっていた。
修学旅行より二か月ほど前。木曜の五限に割り当てられているロングホームルーム、2組ではドラフト制を採用し体験学習の行き先決めが行われた。
俺たち7班は一巡目にマリンスポーツを希望した。
ただ、やはりマリンスポーツを希望する班は多く、全班一巡目の希望が出そろってからじゃんけんで参加枠を争うことになった。
そして全班一巡目の希望が出そろってみれば、カヌーと伝統楽器は定員ぴったり。
じゃんけんに負けた班は自動的にシーサーの絵付け体験に割り当てられるという状況になっていた。
結末は知っての通り。
俺たち7班は見事じゃんけんに負け、こうして男4人で机を囲み仲良くシーサーの絵付け体験をしている。
「終了してくださーい。今から乾燥の工程に入るので、20分の休憩とします。休憩中は工房の近くを散策しても構いません」
講師の言葉に俺は手を止めた。
もくもくと作業をしていたら、いつの間にか時間になっていたようだ。
みんなは続々と外へ出ていく。
俺たちが今いる工房は、大きな公園の敷地内に建っている。
公園内には他に、小さな博物館や遊具の設置された広場などさまざまな施設があるのだ。
せっかく来たのだからそれらを見て回ろう。
そう思うのは自然なことだ。
休憩時間に工房内に残っているのは、俺含め数人。
例にもれず、俺以外の3人も早々に見物に出かけて行った。
俺はつかの間の静寂を堪能していた。
「いやー、外あっちぃわ」
休憩時間が半分ほど過ぎた頃、前田が一人で戻って来た。
もう少し一人になりたかったのだが、致し方ない。
「木下と織田は?」
「缶蹴りやってる。もうこれがさ、終わんねえのよ。だから逃げてきた」
前田の話によれば、三人で公園を散策中にたまたま広場で小学生たちが缶蹴りをしているのを見かけた。
その様子を見て懐かしくなり、やってみたところまでは良かったのだが、問題は鬼が一巡した後。
木下と織田が互いに俺の方が強いと主張し、案の定小競り合いが始まってしまった。
どちらが強いか競うために前田はひたすら鬼をすることになり、炎天下の中、木下と織田を追いかける羽目になったという。
やれどもやれども終わらない缶蹴りに、嫌気がさした前田は、2人を置いて戻って来たのだった。
事の顛末を知った俺は流石に苦笑するしなかった。
そんな俺を見てか前田は決まりが悪そうに言った。
「ほんと二人の世界っていうかさ。喧嘩ばっかですぐ周り見えなくなんだよ。小泉もいつもわりぃな。」
「いや、全然。仲良くてうらやましい」
うらやましいというのは本音だ。
喧嘩になるのはお互い本音が言えるから。
そして、本音を言えるということはそれだけ信頼関係が築かれているということ。
俺だって陽翔とはかなり仲がいいと思っているが、陽翔に本音を包み隠さず言えるかと聞かれれば答えはノーだ。
別に陽翔を信頼していないわけじゃない。
でも、無遠慮に本音を言えば嫌われるかもしれない。
俺の中にあるそんな思いが本音で話す邪魔をしてしまう。
だから、相手に嫌われるかもしれないなんて考えもしないで、言いたいことを言い合える二人の関係は俺からすれば羨ましい。
「でも、会話とか入りづらい時あんだろ」
前田は優しい。
1年の時に同じクラスだったといっても、話したのは片手で数えるくらい。
その数回も陽翔と前田が話しているところに混ざっただけ。
なのに前田はボッチだった俺に声を掛けてくれて、グループに入れてくれた。
それに加えて俺が会話に入りやすいよういつも気を使わせている上に、ついには面と向かって聞くほど心配させてしまった。
「みんな面白いから聞いてるだけで楽しくて。それで話に入れてないだけだから、あんま気にしないで」
半分嘘で半分本当。
みんなが面白いのは本当だ。
木下と織田はバカばっかりやっていて、そんな2人を前田がまとめる。
前田はまるで2人の母親みたいで。
そんな3人のやり取りは思わずクスりと笑ってしまうものも多い。
「なら、よかった」
俺の返答を聞いた前田はどこかホッとした表情を見せた。
それから俺たちは休憩終了間際、木下と織田が戻ってくるまで他愛もない雑談をして過ごした。
「小泉も海行こうぜ」
体験学習を終えて、ホテルに到着するなり前田に声をかけられた。
夕食前の点呼までという条件で、ホテル近くの海に行く許可が担任から出されたのはつい先ほど。
体験学習を終え、バスでホテルに向かう道中での事だった。
俺も海には行きたい。
せっかく沖縄に来たのだから、見ないで帰るのはもったいないだろう。
今朝早かったせいか、この時点でかなり疲れていたけれど、俺は前田の誘いを受けることにした。
「うわー、めっちゃ曇ってる」
海に着いて早々、前田は不満げに言った。
確かに昼間の晴天が嘘のように、空はどんよりと黒い雲に覆われている。
晴れてたらきっと夕焼けが見えたはずだ。
「陸が雨男だから」
「昼間晴れてたのが奇跡」
一緒に来ていた木下と織田は口々に前田のせいだと騒ぎ立てた。
「うっせーな。このやろ」
前田は木下と織田の方へ砂を蹴り上げる。
「うっわ、なにすんだよ」
「ちょっと口に入ったんだけど」
負けじと2人も前田に砂をかけ返した。
砂の掛け合いは次第にエスカレートしていき、しまいには砂浜での追いかけっこに発展した。
昼間、あの炎天下のなか缶蹴りをして体力もだいぶ減っているだろうに、みんな元気だな。
俺は走り回る三人の様子を少し離れたところに腰を下ろして眺めていた。
「小泉」
聞き覚えのある声に呼ばれて振り返れば、そこには永井が立っていた。
「こういうの参加しないタイプだと思った」
「前田……班のやつに誘われて。いや、永井こそ」
「俺も小林に連れてこられた」
永井は俺の隣に腰を下ろすと、波打ち際を指さした。
永井が指さす方を見れば、浪打際で遊んでいる集団の中に陽翔の姿があった。
声をかけようと思ったが、集団の中に俺の知っている顔はない。
場をしらけさせても嫌だし、仮に歓迎されてもあの中に混ざれる自信がないので声をかけるのは断念することにした。
「永井は今日なにした?」
「カヌー。小泉は?」
「シーサー作って来た」
俺がそう答えれば永井は吹き出した。
「小泉、美術壊滅的なのに?」
「うっせー。ってか色塗るだけだったから、そんな変なのできてねぇし」
夏休みの一件以降、俺たちは2人で昼を食べたり、放課後に遊んだりと順調に交流を重ねていた。
そして今ではこんな風に軽口を言い合うくらいには、仲良くなっていた。
「小泉は明日の自由行動どこ行く?」
体験学習の話題がひと段落したころ、永井が質問してきた。
2日目の明日は午前が平和学習、午後は班別の自由行動という日程になっている。
「確か水族館」
「俺も」
「じゃあ、会うかもね」
永井はもちろん陽翔と同じ班だ。
行き先が同じなら、偶然会って一緒に回るなんて展開もあるかもしれない。
まあ、水族館に行く班も多いし、そもそも人もすごいだろうから約束なしに会える可能性なんてほとんどないだろうけど。
「かもね」
永井はにやりと笑う
その様は酷く妖艶で。
俺は思わず見とれてしまった。
