離れるなんて、許さねぇ。

 そして、怜司は結婚した。俺は友人ですらなく、今まで通り、紹介されることもなかった。そもそも俺は、怜司の生活圏の中には入れてもらえてなかった。いつもはそれが寂しく思うこともあったけど、今回だけはそれで良かった。結婚式なんかで怜司の幸せそうな顔でも見させられたら、それこそ、俺は耐えられなかっただろう。
 怜司は結婚しても変わらなかった。時間があれば、相変わらず俺のところに来て俺を抱いて、少し話をして、そして帰っていった。
 初めは罪悪感もあったけれど、怜司があまりにも普通でそのうちこの関係にも慣れていった。俺は怜司の妻になった人のことも何も知らなかったから実感がなかったのかもしれない。

 そんな俺でも目を背けられない出来事が起こった。
 子供が生まれたのだ。

 そのとき、怜司がこう言った。
「子供ってすげえ可愛いのな。俺と血が繋がってると思ったら、愛おしくてたまらないんだよ」
 怜司は嬉しそうだった。多分、ずっと血の繋がりを気にしないようにしながら生きて来た彼にとって、それは本当に嬉しいことだったんだと思う。俺もそれを喜んであげたかった。でも、できなかった。
「そっか。よかったな。でも俺、一緒には喜べそうにないわ」
 そう言って、俺は怜司の元を去った。怜司に黙って引っ越しをして、カフェも辞めた。怜司の連絡先もブロックした。そんなこと聞かされて、それでも一緒にいるなんて、俺にはできなかった。