心が折れたので、二度と元のパーティには戻りません~僻地ではじめるスローライフ

「……よっしゃ、それじゃ、久しぶりに暴れてみるか!」
 おれたちは、頷きあうと、金色のアッシュウルフへと駆けだしていった。

「レイドアーマー展開(アクチュエイト)。シェルコート、スプレッドアウト」
 エレナが背中に手を回す。

 指輪が赤く光った。
 その光が全身へと広がり、そして、それまで身につけていた板金鎧が消えた。
 より軽装の鎖帷子の下地に右腕や膝、胸当てなど、一部だけが金属で補強した姿となる。
 そして、背中から両手剣(グレート・ソード)を抜いた。

 彼女が身につけているシェルコートは、防御力に特化した防具(レイドアーマー)だ。
 エレナはそれをストレージ——収納用の異空間からそれを直接、取り出して装備したのだった。

 兜が消え、素顔が現われる。
 赤毛をポニーテールにし、さらに前髪をアップにしている。
 白い肌は一度も日焼けをしたことがないのではないか、と思わせるほどで、瞳の色は褐色。

 可愛い、というよりも、美人という言葉が似合う。
 自分にも他人にも厳しいので、煙たがられることもあるけど、おれとは意見がぶつかったことは、あまりない。
 エレナと戦うのは、今世ではこれが最後だろう。

 少し、彼女の顔を見つめた後、おれも少し遅れて、駆けだしていった。
 数匹のアッシュウルフが牙を剥くが、脇目も振らなかった。
 ただ、金色のウルフへと目指す。

 エレナが振り上げた両手剣が、青い光に包まれる。
 戦闘スキルを使ったのだろう——種類まではわからないが、標的に二重のダメージを与えるダブル・エッジあたりだろう。

 おれは、『大地の加勢』でそれをさらに上乗せする。
 と同時に、呪文を唱えた。

「汝(な)がために、輝きは暁光より来たれり。実(げ)に英雄の剣は賞賛を受けて、敵へと振り下ろされん。勝利の賞を得るがために、古の神々よ、恩恵を我らに与えよ!」
 おれは、大地と周囲に漂う血臭から、魔力を吸い上げ、それを「武運」の真呪(プライマリア・サイン)へと流し込んだ。
 真呪は、魔術を効果ごとにいくつか分けて具象化したイメージのようなもので、多岐に渡る呪文の効果をある程度、縫いつけるのに必要となるものだ。

「やぁあああああ!」
 エレナが鋭い掛け声をあげる。
 あの、背の低いエレナのどこに、そんな声量が溜められているのか、と思うくらいの叫びだった。

 ざん! という音が聞こえてきた。
 エレナの初撃が、金色のアッシュウルフの胸を切り裂いたのだ。
 もともとの、エレナの戦闘スキルの効果もあったのだろうが、おれの呪文と『大地の加勢』もそれに上乗せさせられているのだろう。
 かなりの深傷となったようだ。

 エレナが、さらに、踏み込んでいく。
 横薙ぎの一撃が、ウルフの顔面を捕らえる。
 さらに、もう一度——今度は、脳天へと剣の刃を食らわせる。
 鋭い振りに、風を感じそうになるくらいだった。

 ウルフの巨体が、地面に落ちた。
 頭部を切り裂かれ、金色のウルフは大地に伏した。
 即死なのはもう、明らかだ。
 血が死体から流れていく。

 金色のアッシュウルフが倒されたのを知り、他のウルフたちが動きを止めた。
 いっせいに、この場から退いていく。
 ——終わったな……。

 残ったウルフの掃討もあるのだけど、ここまでの戦闘でアッシュウルフたちは半数以上、倒されてしまっている。
 生き伸びたウルフたちも、このトゥラン街道にはもう、戻ってこないだろう。
「やった!」
「勝ったぞ」
「おれたちの勝利だ!」
 その言葉に、おれは目を細めた。

 エレナが、近づいてくる。
「お疲れさま」
「お見事!」
 声をかけあうと、おれたちはハイタッチをした。