階段を昇りきった先は、岩山の只中にあった。
岩柱が並び、それがいくつも群れるように集まって、ひとつの岩山を作り上げている。
岩はごつごつとしており、とっかかりはあるが、ひとつ間違うと、転落死する高さがある。
見上げると、そんなに遠くないところに、塔がそびえているのが見える。
結局、”八月の涼風”のメンバーたちとは、遺跡のなかで合流することはできなかった。
レッドたちはまだ、遺跡のなかを探索しているのだろうか。
東の地平線が、光の線で覆われている。
もうすぐ、双陽が昇る。
リンが、岩柱の平らな部分に腰を下ろした。
「地上に降りるのは、周りが明るくなってから、だねっ。ちょっと、ひと休みしようよ。フィルは、眠い?」
「……いや。遺跡のなかに、丸一日、いたはずだが、まったく眠くはないな」
「じゃ、見張り頼める? ぼく、横になっちゃうから」
「……あー、うん。わかった。明るくなったら、起こすよ」
リンが、雑草の生えているところで、体を伸ばして横になった。
自分の腕を枕にして、目を閉ざす。
そのすぐそばにゆうが降り立ち、おれを見上げた。
翼を広げて、くちばしを開く。
リンの騎士気取りのようだ。
おれは額を掻くと、少し距離を取って、リンを見守れる場所に腰を下ろした。
ゆうは、時々、リンの周りをとことこと歩いては、おれに向かって威嚇するように、翼を広げてみせた。
三尾鸚鵡は、それなりに戦闘力があるので、見張りにはもったいないくらいだ。
おれは、夜空を見上げた。
あの——石碑に触れてみた時の、夢のなかの風景を頭に思い浮かべてみる。
星々の輝きと双陽。
それが、同時に眺められる場所、とはどこなんだろう。
まったく、ありもしない空間を、妄想したのかもしれないし、そうでないのかもしれない。
『ソフィ——あの場所が、どこなのか、調べられないか?』
問いかけてみるが、ソフィは首を横に振った。
『残念ですが、あなたが見たという、その情景や女神との会話の内容は、わたしは共有していないので、答えかねますね』
『共有していない……見ていないってことか? そいつは、おかしいな』
『はい。夢であっても、わたしとあなたの意識は繫がっているので、あなたが経験したことが共有されていない、とは考えられないのですが……不思議なことです』
——どういうことだろう。
今になって思うが、あれは本当に夢のなかの出来事、だったのだろうか……。
なんというか、肌触りに妙な現実感があり、自分が見ている、というよりも、別の視点から起きている出来事を眺めている、という感覚があった。
あれは、もしかして、未来の出来事なのではないか……。
根拠など、何もない。
だけど——あれは、女神さまがこれから、これから、おれが成し遂げるであろう、未来の出来事を見せているのではないか。
それならば、ソフィと記憶が共有されていない、ということもあり得るのかもしれない。
おれは、エーテル・リンケージをストレージから取り出すと、メニューから自分のステータス画面を呼び出してみた。
『フィル——Lv66
種族……コモン/漂泊者
天恵……大地神の祝福
加護……ダニエルの獣
状態異常……なし/なし
プライマリークラス……カストレル
セカンダリークラス……ソーサラー
生命力/魔力=800(800)/250(223)
筋力値……60【A++】
器用度……45【C】
敏捷性……62【B-】
耐久力……43【B-】
判断力……58【C+】
意志力……66【C-】
武器——「斬奸刀:剣王の矜持(両手剣+100)GSZ-900-SKP」
防具——「ガーディアン・アーマー(クロース+20)CLL-020-GAA」
盾/アクセサリー——なし」
おれは、天恵の部分に触れてみる。
すると、画面が切り替わった。
『大地神の祝福』の下位のスキルが表示される。
以前は、天恵の部分には『大地の加勢』と書き込まれていて、下位スキルなどはなかった。
あの頃は、ただ、繰り返しのなかで、生きているだけだった。
それが、こんなリア河の東岸までやって来ることになるなんて、思いもしなかった。
エレナやイオ、それに、二番隊のみんなは元気なのだろうか?
“旗を振るもの”は、おれが抜けた後、騎士団に昇格できたのだろうか。
リンの周りで、警戒しながら、歩き回っているゆうの姿を眺めながら、おれはゆっくりと立ち上がった。
東の地平線へと目をやると、山の高峰と近くの空、それに雲が暗闇から、浮かび上がっている。
あと少しで、夜が明ける。
もうすぐだ。
もうすぐ、”八月の涼風”のみんなとも合流して、遺跡の探索を終えることになる。
それから先のことは、わからない。
未来のあの光景を、おれは辿ることになるのか、それとも、別の道を目指すことになるのか——いずれにしても、まだわからないということに、おれは胸を熱くしていた。
岩柱が並び、それがいくつも群れるように集まって、ひとつの岩山を作り上げている。
岩はごつごつとしており、とっかかりはあるが、ひとつ間違うと、転落死する高さがある。
見上げると、そんなに遠くないところに、塔がそびえているのが見える。
結局、”八月の涼風”のメンバーたちとは、遺跡のなかで合流することはできなかった。
レッドたちはまだ、遺跡のなかを探索しているのだろうか。
東の地平線が、光の線で覆われている。
もうすぐ、双陽が昇る。
リンが、岩柱の平らな部分に腰を下ろした。
「地上に降りるのは、周りが明るくなってから、だねっ。ちょっと、ひと休みしようよ。フィルは、眠い?」
「……いや。遺跡のなかに、丸一日、いたはずだが、まったく眠くはないな」
「じゃ、見張り頼める? ぼく、横になっちゃうから」
「……あー、うん。わかった。明るくなったら、起こすよ」
リンが、雑草の生えているところで、体を伸ばして横になった。
自分の腕を枕にして、目を閉ざす。
そのすぐそばにゆうが降り立ち、おれを見上げた。
翼を広げて、くちばしを開く。
リンの騎士気取りのようだ。
おれは額を掻くと、少し距離を取って、リンを見守れる場所に腰を下ろした。
ゆうは、時々、リンの周りをとことこと歩いては、おれに向かって威嚇するように、翼を広げてみせた。
三尾鸚鵡は、それなりに戦闘力があるので、見張りにはもったいないくらいだ。
おれは、夜空を見上げた。
あの——石碑に触れてみた時の、夢のなかの風景を頭に思い浮かべてみる。
星々の輝きと双陽。
それが、同時に眺められる場所、とはどこなんだろう。
まったく、ありもしない空間を、妄想したのかもしれないし、そうでないのかもしれない。
『ソフィ——あの場所が、どこなのか、調べられないか?』
問いかけてみるが、ソフィは首を横に振った。
『残念ですが、あなたが見たという、その情景や女神との会話の内容は、わたしは共有していないので、答えかねますね』
『共有していない……見ていないってことか? そいつは、おかしいな』
『はい。夢であっても、わたしとあなたの意識は繫がっているので、あなたが経験したことが共有されていない、とは考えられないのですが……不思議なことです』
——どういうことだろう。
今になって思うが、あれは本当に夢のなかの出来事、だったのだろうか……。
なんというか、肌触りに妙な現実感があり、自分が見ている、というよりも、別の視点から起きている出来事を眺めている、という感覚があった。
あれは、もしかして、未来の出来事なのではないか……。
根拠など、何もない。
だけど——あれは、女神さまがこれから、これから、おれが成し遂げるであろう、未来の出来事を見せているのではないか。
それならば、ソフィと記憶が共有されていない、ということもあり得るのかもしれない。
おれは、エーテル・リンケージをストレージから取り出すと、メニューから自分のステータス画面を呼び出してみた。
『フィル——Lv66
種族……コモン/漂泊者
天恵……大地神の祝福
加護……ダニエルの獣
状態異常……なし/なし
プライマリークラス……カストレル
セカンダリークラス……ソーサラー
生命力/魔力=800(800)/250(223)
筋力値……60【A++】
器用度……45【C】
敏捷性……62【B-】
耐久力……43【B-】
判断力……58【C+】
意志力……66【C-】
武器——「斬奸刀:剣王の矜持(両手剣+100)GSZ-900-SKP」
防具——「ガーディアン・アーマー(クロース+20)CLL-020-GAA」
盾/アクセサリー——なし」
おれは、天恵の部分に触れてみる。
すると、画面が切り替わった。
『大地神の祝福』の下位のスキルが表示される。
以前は、天恵の部分には『大地の加勢』と書き込まれていて、下位スキルなどはなかった。
あの頃は、ただ、繰り返しのなかで、生きているだけだった。
それが、こんなリア河の東岸までやって来ることになるなんて、思いもしなかった。
エレナやイオ、それに、二番隊のみんなは元気なのだろうか?
“旗を振るもの”は、おれが抜けた後、騎士団に昇格できたのだろうか。
リンの周りで、警戒しながら、歩き回っているゆうの姿を眺めながら、おれはゆっくりと立ち上がった。
東の地平線へと目をやると、山の高峰と近くの空、それに雲が暗闇から、浮かび上がっている。
あと少しで、夜が明ける。
もうすぐだ。
もうすぐ、”八月の涼風”のみんなとも合流して、遺跡の探索を終えることになる。
それから先のことは、わからない。
未来のあの光景を、おれは辿ることになるのか、それとも、別の道を目指すことになるのか——いずれにしても、まだわからないということに、おれは胸を熱くしていた。
