心が折れたので、二度と元のパーティには戻りません~僻地ではじめるスローライフ

 今回の作戦だけど、三番隊を除く、すべての小隊が参戦していた。
 各小隊の連携をフルに生かして、グレン自身の指揮能力を見せつけるつもりなのだろう。

 まずは、おれたち二番隊の出番だ。
 アッシュウルフの巣がある場所はだいたい、当たりをつけている。
 ウルフの巣は複数あるが、そのなかでも一番、大きいものを狙う。

 各個撃破していって、残りは数の少なくなったアッシュウルフを包囲して殲滅する——というのが、グレンの考えた作戦だ。
 オーソドックスだが、内容としては、まずまずだろう。

 さて——アッシュウルフだが、巣を中心にして、五、六匹で集団を作っているようだ。
 ウルフは、一対一では”旗を振るもの”のメンバーではやや、苦戦するぐらいの実力差がある。
 なので、ウルフを牽制しつつ、数の差で押しきり、一匹ずつ、片づけていく、というのが基本となる。

 ウルフの数は、おれの見立てでは、二十匹はいないだろう。
 それに対して、”旗を振るもの”のメンバーは四十人くらいいる。
 よほど、グレンが下手なことをしない限り、アッシュウルフの討伐には成功するだろう。

 おれはまず、馬の扱いの巧い三人に先駆けをさせた。
 短弓を装備させ、奇襲に驚いたウルフに攻撃させる。
 倒す必要はなく、混乱させるのが目的だ。

「よし! 行くぞ」
 おれは、残りの二番隊に声をかけ、出撃させた。
 徒歩で巣のなかへと目指す。

 歩きなのは、おれの天恵『大地の加勢』を生かすためだ。
 これで、おれの周囲にいる二番隊のメンバーの能力が強化される。

 おれは片手剣に、スターリー・ジャケットという武装の組み合わせだった。
 スターリー・ジャケットは、速度に特化した防具で、その名の通り、真っ黒なカラーリングとなっている。
 肩と胸、右腕と両脚だけ、金属で補強してある。

 二番隊は、任務で使用する武器は統一しておらず、それぞれのメンバーの自由にさせていた。
 対して、一番隊は厳格にグレンが決めており、三番隊はメンバーがエレナの武器や鎧を真似ているので、不揃いなのは二番隊だけだった。

 腰から剣を引き抜きながら、おれは自分が騎士になるのは、無理だよなぁ、と思った。
 騎士ならば、馬に騎乗しての行動が基本となる。
 それが、いちいち、馬から降りていては、作戦もままならないだろう。
 おれは、騎士になるのは目的じゃないし、グレンから離れられるのなら、それで満足だった。

 アッシュウルフの唸り声があがった。
 木々の陰から、銀色の姿が見え隠れしている。
 獣道が続いているので、おれはそのまま、辿っていった。

 右手から、アッシュウルフが飛びかかってきた。
 鋭い爪が振り上げられる。
 おれは、脚を踏んばると、剣で爪を受けた。
 キン! と金属音が響く。

「隊長!」
 後ろに控えていた、二番隊のメンバーのひとりが、突っ込んでくる。
 長槍が、アッシュウルフを貫く。
 さらに、後方から呪文を唱える声が聞こえてきた。

「……汝が高きところ、低きところを進む時、その光輝を遮るものなし。勝利の賞に富む汝の名を我は讃える。オルウェの怒りをもて、我が怨敵を屈服せよ!」
 森の奥から、光の奔流が走り抜けていった。
 それが、ウルフを打った。
 ぎゃん、と悲鳴をあげる。

 木々を薙ぎ倒して、それから、地面に叩きつけられた。
 銀色の身体を血塗れにして、それっきり、ウルフは動かなくなった。

 おれは、部下たちに合図を送る。
 三人がかりだが、強敵のアッシュウルフを倒すことが出来たようだ。
 さらに、アッシュウルフと戦うために、おれは森の奥へと脚を踏み入れていく。

 ウルフの討伐は、順調だった。
 深追いはせず、怪我も軽傷程度で、決して一対一にはならずに、倒していく。

 やがて、おれたちは森を突っ切り、見晴らしのいい場所へとやって来た。
 右手は池が占め、いくつか、飛び石のように、足場のようなものが浮かんでいる。
 森はまだ、続いているが、左手と池の対岸では斜面が視界を遮っている。

 その場所に脚を踏み入れた途端、左右からウルフが攻撃してきた。
 おれは、右のほうのウルフを迎え撃った。
 スキルを操作して、防御力を強化、剣で牙を受けると、踏ん張った。
 さらに、筋力を上昇させる。

 ウルフを撥ねのけると、剣を横に薙ぎ払う。
 致命傷を与えることは出来なかったが、肩口を切り裂くことは出来た。

 地面を蹴ると、おれは追撃をした。
 ウルフも、こちらへと迫ってくる。
 おれは、保留していた、『大地の加勢』の力を、防御力を消して、攻撃力と筋力に割り振った。
 正面から、おれは振り上げた剣を叩きつける。

 剣の刃が、ウルフの頭部に一撃を与えた。
 力を込めると、ウルフは地面に伏した。
 もう一度、おれは剣を振り上げ、頭部を粉砕した。

 血がびちゃっと、飛び散る。
 しかし、それで終わりではなかった。
 ウルフは次々と現われ、攻撃してくる。