家の中の湿度が、徐々にキツくなってきた。熊本ほどじゃ無いにしても、エアコンが無いと汗をびっしょりかいてしまうほど。いよいよ7月も終わりに近づいてきたけれど、結局私は終業式にさえ出ることができなかった。
熱っぽい感じがして、朝起きる。
「微熱だろうなぁ」と思い、体温は測っていない。いや、正確に言えば、測るのが怖い。そこまで高くは無いのは感覚的に分かるけれど、数字を見たくなかった。「ちょっと気持ち悪いな」と思う日があったり、無かったりを繰り返している。
頭痛はほぼ毎日あるけど、これも軽かったり重かったり。……寒気は日による。そう。微妙に熱っぽいだけで、何ともない日も結構あるので、病院に行くことはしなかった。
不思議なもので「少し気持ち悪いな」と思っていても、ご飯を食べると意外と治っていることが多いから、学校は体調不良で休むことが多いけれど、お父さんには「そこまでじゃ無いだろう」と思われている気もしている。
久良岐公園に行って以来、楓くんには会えてない。
毎朝、起きてスマホを見る。
通知は来ていない。
「気を遣ってくれてるんだ」と思うことにしている。……たぶんそうだと思う。
(……あー……今日も来ないなあ)
気だるい体を無理やり起こして、ため息をつきながら台所で水を飲むのが朝の日課になっている。
「ちょっと散歩して来ようかなぁ……」
夜は不思議と体調が良くなることが多い。どちらかというと朝や昼間の方が体調が悪い。きっと暑さも関係している気がする。
「……あぁ。体調問題無いなら……良いんじゃないか?」
「うん。そうしよっかな……」
「ねえ。どっかお勧めの場所、ない?」
「……お勧め?」
「か弱い女子が歩いても……大丈夫そうなとこ」
「……そうだなあ」
「あんま遠くないところがいい」
「磯子アベニューに沿って歩いてきたら」
「どこそれ」
「区役所あるだろ」
「うん。この前行ったとこでしょ? あの茶色い建物の」
「そう。あの道をずっと真っすぐ行くんだよ」
「……そうすると、『磯子アベニュー』に着くの?」
「その道を磯子アベニューって言うんだよ」
確かに区役所の前には1本の長い道がある。お父さんと言った時は、区役所までしか行っていない。奥にはずっと道に沿って建物が並んでいた気がする。どうやらその道に、根岸駅の方に向かって人工の小川が並行しているらしい。
「……ふーん」
「1kmくらい歩くと、公園があるから。そこで折り返してきたら」
「……公園?」
「ああ。『芦名橋公園』って書いてあると思う」
「芦名橋公園」
「そう。そんなに大きな公園じゃないけどな」
7月下旬の暑い夜。熊本とは違って、カラっとしているけれど、肌はじんわりと汗をかくくらい湿気がある。Tシャツにジャージ姿で家を出ようとする。
(……途中で寒くなるかもなあ)
念のため、白のカーディガンをタンスから引っ張り出して、再び玄関へと向かう。
「……体調悪くなったら、無理するなよ?」
「うん。分かってるよ。行ってきます」
夜の7時過ぎ。区役所を通って伸びる長い道。真横には大きな道路も並行していて、まだまだ車がせわしなく通っていく。すでに暗くなってはいるけれど、散歩しているような人も歩いていた。
(……これなら危なくないじゃん)
お父さんの言った通り、道路側には人工の細い川が流れていた。暗くてそれほど見えなったけれど、綺麗な水が流れているようには見えなかった。もしかしたら、ほとんど流れていないかも知れない。
磯子駅はベッドタウンのような町。
夜の時間帯は仕事帰りのサラリーマンや高校生もまだまだたくさん歩いている。
家路に向かう人達に混ざるように、スマホを片手に小川に沿ってゆっくりと歩いた。
(……ちょっと寒かも。……もう夏なのに)
カーディガンを持ってきて、正解だなと思った。立ち止まって、白いカーディガンに私は袖を通した。
熱っぽい感じがして、朝起きる。
「微熱だろうなぁ」と思い、体温は測っていない。いや、正確に言えば、測るのが怖い。そこまで高くは無いのは感覚的に分かるけれど、数字を見たくなかった。「ちょっと気持ち悪いな」と思う日があったり、無かったりを繰り返している。
頭痛はほぼ毎日あるけど、これも軽かったり重かったり。……寒気は日による。そう。微妙に熱っぽいだけで、何ともない日も結構あるので、病院に行くことはしなかった。
不思議なもので「少し気持ち悪いな」と思っていても、ご飯を食べると意外と治っていることが多いから、学校は体調不良で休むことが多いけれど、お父さんには「そこまでじゃ無いだろう」と思われている気もしている。
久良岐公園に行って以来、楓くんには会えてない。
毎朝、起きてスマホを見る。
通知は来ていない。
「気を遣ってくれてるんだ」と思うことにしている。……たぶんそうだと思う。
(……あー……今日も来ないなあ)
気だるい体を無理やり起こして、ため息をつきながら台所で水を飲むのが朝の日課になっている。
「ちょっと散歩して来ようかなぁ……」
夜は不思議と体調が良くなることが多い。どちらかというと朝や昼間の方が体調が悪い。きっと暑さも関係している気がする。
「……あぁ。体調問題無いなら……良いんじゃないか?」
「うん。そうしよっかな……」
「ねえ。どっかお勧めの場所、ない?」
「……お勧め?」
「か弱い女子が歩いても……大丈夫そうなとこ」
「……そうだなあ」
「あんま遠くないところがいい」
「磯子アベニューに沿って歩いてきたら」
「どこそれ」
「区役所あるだろ」
「うん。この前行ったとこでしょ? あの茶色い建物の」
「そう。あの道をずっと真っすぐ行くんだよ」
「……そうすると、『磯子アベニュー』に着くの?」
「その道を磯子アベニューって言うんだよ」
確かに区役所の前には1本の長い道がある。お父さんと言った時は、区役所までしか行っていない。奥にはずっと道に沿って建物が並んでいた気がする。どうやらその道に、根岸駅の方に向かって人工の小川が並行しているらしい。
「……ふーん」
「1kmくらい歩くと、公園があるから。そこで折り返してきたら」
「……公園?」
「ああ。『芦名橋公園』って書いてあると思う」
「芦名橋公園」
「そう。そんなに大きな公園じゃないけどな」
7月下旬の暑い夜。熊本とは違って、カラっとしているけれど、肌はじんわりと汗をかくくらい湿気がある。Tシャツにジャージ姿で家を出ようとする。
(……途中で寒くなるかもなあ)
念のため、白のカーディガンをタンスから引っ張り出して、再び玄関へと向かう。
「……体調悪くなったら、無理するなよ?」
「うん。分かってるよ。行ってきます」
夜の7時過ぎ。区役所を通って伸びる長い道。真横には大きな道路も並行していて、まだまだ車がせわしなく通っていく。すでに暗くなってはいるけれど、散歩しているような人も歩いていた。
(……これなら危なくないじゃん)
お父さんの言った通り、道路側には人工の細い川が流れていた。暗くてそれほど見えなったけれど、綺麗な水が流れているようには見えなかった。もしかしたら、ほとんど流れていないかも知れない。
磯子駅はベッドタウンのような町。
夜の時間帯は仕事帰りのサラリーマンや高校生もまだまだたくさん歩いている。
家路に向かう人達に混ざるように、スマホを片手に小川に沿ってゆっくりと歩いた。
(……ちょっと寒かも。……もう夏なのに)
カーディガンを持ってきて、正解だなと思った。立ち止まって、白いカーディガンに私は袖を通した。


