『ビギナーの町』の門番に、【見習い冒険者】としての『冒険者証』を見せる。
門番が居る森の方角には、魔物がたくさん現れるのもあって『通行証』や『冒険者証』等、通る為に必要な証明書がある。
もちろん行く行かないは任意だけど、今後の生活の事もあるので、魔物討伐をする事になった。
「例の【見習い冒険者】達か?通っていいぞ?」
許可が下りたので、門番から『冒険者証』を返して貰って、門をくぐる。
『ビギナーの町』の外に出るのは、今回が初めてだ。
事前に情報ではあれこれ聞いていたが、実際に見るのと来るのでは、やはり違っていた。
「これが『魔物の森』か?」
生い茂る大きな草木が、少しだけ大きく見えた。初めて入るからもあるが、恐らくは見た事も無いし、入るのも初めてだからかもしれないな?
「迷わないように、慎重に行こうか?森に入るのは、今回が初めてだからね?」
イケメン男リーダーの『サトシ』の言う通りだな。
だが、あまりにも弱腰過ぎると、日が暮れてしまうので、一応はアタッカー役の『不良』こと『タクヤ』が先行した。俺も、不本意だけど、今回は奴の言う事に一理ある。
森の奥に、どんどん進んだ。
「ほう?――お前が、俺と同じ事を考えているとは、珍しいな?『シン』」
「珍しくも無いよ?『タクヤ』――早く魔物を討伐したいのは、俺も一緒だからね?」
今回だけかもしれないが、『不良』こと『タクヤ』と意気投合した俺。
しかし、中々丁度いい単独の魔物が居なかった。
一番弱いとされている魔物のゴブリンは、群れで生活するとは聞いていたが、二匹以上は必ず居た。
事前の打ち合わせでも、最初の魔物討伐は、必ず一匹だけの状態の物を狙う事にしたからだ。
探せど探せど、複数の状態の魔物がほとんどだった。
痺れを切らした『不良』こと『タクヤ』が「このまま、二匹の魔物をやっちまおうぜ?」と言って来た。
確かに彼の意見も、もっとものだ。
このままの状態だと、昼どころか――最悪日が暮れになってしまい兼ねない。
そこで、急遽予定を変更して、ゴブリン達とは別に弱い魔物とされる、スライムに目を付けた。
物理攻撃が効きにくいが、中の核を上手く攻撃すれば、倒せるという魔物だった。
俺達は、早速森の湿地の場所に移動した。
「あれがスライムか?」
青い体に液体の体、赤い核、間違いない。あれがスライムという魔物だ。
噂だと、スライムは、ほぼ単独での行動がほとんどで、動きや早さも遅いので、そこまで苦戦する相手ではないらしい。
体の液体は、あらゆる物を溶かす体質と、敵対する相手は、容赦なく捕食するという魔物。
――今回は、みんな一緒に戦うから大丈夫。と、油断してた訳じゃないんだけどな?
「行くぜ?『シン』」
「ああ!」
まずは、俺と『タクヤ』が2人でスライムに接近して、追い立てて、そこにパーティメンバー全員の奇襲攻撃で倒す。
シンプルだし、カッコ良さなんて欠片もないが、今の俺達には、これが最善だった。
でも――この判断が、俺達の生死を分けるなんて思いもしなかったんだよ。
「おりゃー!」
「やー!」
俺と『タクヤ』の2人掛かりで、スライムに片手剣とナイフで、斬り掛かった。
いきなり大ダメージなんて与えられない、スライムの体が思った以上に、弾力があって、剣やナイフの威力以前に、俺達自身の筋力が弱かったんだ。ほとんど斬れなかった。
「ちくしょう、もう一回だ!」
『タクヤ』は、何度も何度も斬り込むんだけど、そこまで深く斬ることは出来なくて、ダメージどころか、スライムの核を傷付ける事なんて、無理だったんだ。
そんな時、背後から悲鳴や叫び声が聞こえた。
「きゃー」
「う、うわぁぁ!?」
後を振り向くと、リーダーの『サトシ』や赤い髪の『シア』と『リカ』が、タンク役の『リュウ』、他の魔物から襲われていたのだ。
それは、ベノムスライムだった。
別の種類の魔物が、たまたま近くに居たのか、それとも、気が付かなかっただけなのかも、分からないけど。
「うぉぉぉ、俺が、こんな奴に!?」
そうこうしていると、さっきまで戦っていたスライムに『タクヤ』が捕らえられ、捕食されていたのだ。
「『タクヤ』!?クソ!」
俺は、無我夢中で『タクヤ』を助けようとしてスライムにしがみ付いた。しかし、この判断と行動が、俺の運命を決めたんだ。
スライムの粘着力と吸引力が強くて、武器どころか、俺自身もスライムに捕らえられたんだ。
――冗談じゃない、マジで洒落にならん。
森の奥地で、空を眺めながら彼は自分が仰向けになっている事に気が付いた。
全身に青い液体が覆い尽くし、痺れと共に指先や足先の感覚が無かった。
ただ、悪寒と寒気が体の全体を支配し始めている事くらいだろう。
――寒い、冷たい、凍える。
まるで冷たい雪の中に埋もれたような感覚に驚きながらも、叫び声を出そうとして口から出たのは、叫びや悲鳴ではなく、吐血だった。
咳き込み、血を吐き出しながら、青い液体に浸かり溶け始めたのは、自分自身の手足だ。
――俺の手が!?足が!?――スライムって、こんなに倒すの大変なのかよ?
彼は、この異世界の【冒険者見習い】の初の討伐として、スライムと対峙した。
しかし、戦闘の結果は――スライムに返り討ちにされたのだ。
スライムは、本来、この異世界では一番弱い魔物だ。
そう、この《《異世界》》では、
――俺が、弱いっていう事かよ!?
彼は、自分自身の体の状態を確認しようとするが、肘から先が既に、溶けて無くなっていたのだ。
スライム特有の酸と消化の力だった。
――コイツ!?俺を食う気か?ヤバい!――誰か居ねぇのか?
他に助けを求めようと、彼は、辺りを横目で見るが、【冒険者パーティ】の仲間達も、魔物達に返り討ちに遭って、既に倒された後だった。
悲鳴や叫び声の断末魔と共に、倒され捕食されていく仲間達。
そりゃそうだ、魔物達からすれば、自分を攻撃して来た奴らをただじゃ済まないだろう。
捕食しているのは、魔物からしたら、俺達は、獲物らしいしな?
――ああ、クソ、クソ、どうしてこうなったんだ?
この異世界に来てまだ3日も経ってねぇぞ、これが俺の『詰み』っていう奴かよ。
あの【案内人】のヤロー、分かってやがったな、こうなる事を。
まあ、死んでも【セーフティエリア】からやり直せるみたいだけどな。
また、3日前からのやり直し――マジで洒落にならないだろうが。
唯一の救いは、《《やり直せる》》事、《《記憶》》や《《経験》》を、そのまま引き継げる事だろうな。
突然、異世界に飛ばされて――【案内人】に、この世界で生きて行くには【冒険者】になって魔物を狩って生きて行くと、3日前に言われた。
それから準備や何やらを用意して、いざ始めた初めての魔物討伐が、まさかの返り討ち。
――ハハハ、マジで笑えねぇ。
そうこうしていると、意識が遠退き、彼の体が青いスライムの消化液に溶かされていく。
そういえば、俺や仲間達がこの異世界に来た理由が、前の世界で『罪』を犯したからだって【案内人】の奴が言ってたっけ。
せめて、その『罪』が何なのかは知りたいよな。
『償い』それが、俺が――この異世界でやらなきゃいけない事か?
何を償うのかを知る為にも、やるしかないっていう訳かよ?
――だったら、やってやるよ?この異世界で、その『償い』って奴をさ!!
次の瞬間、彼、シンは命を落とした。
門番が居る森の方角には、魔物がたくさん現れるのもあって『通行証』や『冒険者証』等、通る為に必要な証明書がある。
もちろん行く行かないは任意だけど、今後の生活の事もあるので、魔物討伐をする事になった。
「例の【見習い冒険者】達か?通っていいぞ?」
許可が下りたので、門番から『冒険者証』を返して貰って、門をくぐる。
『ビギナーの町』の外に出るのは、今回が初めてだ。
事前に情報ではあれこれ聞いていたが、実際に見るのと来るのでは、やはり違っていた。
「これが『魔物の森』か?」
生い茂る大きな草木が、少しだけ大きく見えた。初めて入るからもあるが、恐らくは見た事も無いし、入るのも初めてだからかもしれないな?
「迷わないように、慎重に行こうか?森に入るのは、今回が初めてだからね?」
イケメン男リーダーの『サトシ』の言う通りだな。
だが、あまりにも弱腰過ぎると、日が暮れてしまうので、一応はアタッカー役の『不良』こと『タクヤ』が先行した。俺も、不本意だけど、今回は奴の言う事に一理ある。
森の奥に、どんどん進んだ。
「ほう?――お前が、俺と同じ事を考えているとは、珍しいな?『シン』」
「珍しくも無いよ?『タクヤ』――早く魔物を討伐したいのは、俺も一緒だからね?」
今回だけかもしれないが、『不良』こと『タクヤ』と意気投合した俺。
しかし、中々丁度いい単独の魔物が居なかった。
一番弱いとされている魔物のゴブリンは、群れで生活するとは聞いていたが、二匹以上は必ず居た。
事前の打ち合わせでも、最初の魔物討伐は、必ず一匹だけの状態の物を狙う事にしたからだ。
探せど探せど、複数の状態の魔物がほとんどだった。
痺れを切らした『不良』こと『タクヤ』が「このまま、二匹の魔物をやっちまおうぜ?」と言って来た。
確かに彼の意見も、もっとものだ。
このままの状態だと、昼どころか――最悪日が暮れになってしまい兼ねない。
そこで、急遽予定を変更して、ゴブリン達とは別に弱い魔物とされる、スライムに目を付けた。
物理攻撃が効きにくいが、中の核を上手く攻撃すれば、倒せるという魔物だった。
俺達は、早速森の湿地の場所に移動した。
「あれがスライムか?」
青い体に液体の体、赤い核、間違いない。あれがスライムという魔物だ。
噂だと、スライムは、ほぼ単独での行動がほとんどで、動きや早さも遅いので、そこまで苦戦する相手ではないらしい。
体の液体は、あらゆる物を溶かす体質と、敵対する相手は、容赦なく捕食するという魔物。
――今回は、みんな一緒に戦うから大丈夫。と、油断してた訳じゃないんだけどな?
「行くぜ?『シン』」
「ああ!」
まずは、俺と『タクヤ』が2人でスライムに接近して、追い立てて、そこにパーティメンバー全員の奇襲攻撃で倒す。
シンプルだし、カッコ良さなんて欠片もないが、今の俺達には、これが最善だった。
でも――この判断が、俺達の生死を分けるなんて思いもしなかったんだよ。
「おりゃー!」
「やー!」
俺と『タクヤ』の2人掛かりで、スライムに片手剣とナイフで、斬り掛かった。
いきなり大ダメージなんて与えられない、スライムの体が思った以上に、弾力があって、剣やナイフの威力以前に、俺達自身の筋力が弱かったんだ。ほとんど斬れなかった。
「ちくしょう、もう一回だ!」
『タクヤ』は、何度も何度も斬り込むんだけど、そこまで深く斬ることは出来なくて、ダメージどころか、スライムの核を傷付ける事なんて、無理だったんだ。
そんな時、背後から悲鳴や叫び声が聞こえた。
「きゃー」
「う、うわぁぁ!?」
後を振り向くと、リーダーの『サトシ』や赤い髪の『シア』と『リカ』が、タンク役の『リュウ』、他の魔物から襲われていたのだ。
それは、ベノムスライムだった。
別の種類の魔物が、たまたま近くに居たのか、それとも、気が付かなかっただけなのかも、分からないけど。
「うぉぉぉ、俺が、こんな奴に!?」
そうこうしていると、さっきまで戦っていたスライムに『タクヤ』が捕らえられ、捕食されていたのだ。
「『タクヤ』!?クソ!」
俺は、無我夢中で『タクヤ』を助けようとしてスライムにしがみ付いた。しかし、この判断と行動が、俺の運命を決めたんだ。
スライムの粘着力と吸引力が強くて、武器どころか、俺自身もスライムに捕らえられたんだ。
――冗談じゃない、マジで洒落にならん。
森の奥地で、空を眺めながら彼は自分が仰向けになっている事に気が付いた。
全身に青い液体が覆い尽くし、痺れと共に指先や足先の感覚が無かった。
ただ、悪寒と寒気が体の全体を支配し始めている事くらいだろう。
――寒い、冷たい、凍える。
まるで冷たい雪の中に埋もれたような感覚に驚きながらも、叫び声を出そうとして口から出たのは、叫びや悲鳴ではなく、吐血だった。
咳き込み、血を吐き出しながら、青い液体に浸かり溶け始めたのは、自分自身の手足だ。
――俺の手が!?足が!?――スライムって、こんなに倒すの大変なのかよ?
彼は、この異世界の【冒険者見習い】の初の討伐として、スライムと対峙した。
しかし、戦闘の結果は――スライムに返り討ちにされたのだ。
スライムは、本来、この異世界では一番弱い魔物だ。
そう、この《《異世界》》では、
――俺が、弱いっていう事かよ!?
彼は、自分自身の体の状態を確認しようとするが、肘から先が既に、溶けて無くなっていたのだ。
スライム特有の酸と消化の力だった。
――コイツ!?俺を食う気か?ヤバい!――誰か居ねぇのか?
他に助けを求めようと、彼は、辺りを横目で見るが、【冒険者パーティ】の仲間達も、魔物達に返り討ちに遭って、既に倒された後だった。
悲鳴や叫び声の断末魔と共に、倒され捕食されていく仲間達。
そりゃそうだ、魔物達からすれば、自分を攻撃して来た奴らをただじゃ済まないだろう。
捕食しているのは、魔物からしたら、俺達は、獲物らしいしな?
――ああ、クソ、クソ、どうしてこうなったんだ?
この異世界に来てまだ3日も経ってねぇぞ、これが俺の『詰み』っていう奴かよ。
あの【案内人】のヤロー、分かってやがったな、こうなる事を。
まあ、死んでも【セーフティエリア】からやり直せるみたいだけどな。
また、3日前からのやり直し――マジで洒落にならないだろうが。
唯一の救いは、《《やり直せる》》事、《《記憶》》や《《経験》》を、そのまま引き継げる事だろうな。
突然、異世界に飛ばされて――【案内人】に、この世界で生きて行くには【冒険者】になって魔物を狩って生きて行くと、3日前に言われた。
それから準備や何やらを用意して、いざ始めた初めての魔物討伐が、まさかの返り討ち。
――ハハハ、マジで笑えねぇ。
そうこうしていると、意識が遠退き、彼の体が青いスライムの消化液に溶かされていく。
そういえば、俺や仲間達がこの異世界に来た理由が、前の世界で『罪』を犯したからだって【案内人】の奴が言ってたっけ。
せめて、その『罪』が何なのかは知りたいよな。
『償い』それが、俺が――この異世界でやらなきゃいけない事か?
何を償うのかを知る為にも、やるしかないっていう訳かよ?
――だったら、やってやるよ?この異世界で、その『償い』って奴をさ!!
次の瞬間、彼、シンは命を落とした。


