罪と幻想のアメンズ

 ――冗談じゃない、マジで洒落にならん。

 森の奥地で、空を眺めながら彼は自分が仰向けになっている事に気が付いた。
 全身に青い液体が覆い尽くし、痺れと共に指先や足先の感覚が無かった。
 ただ、悪寒と寒気が体の全体を支配し始めている事くらいだろう。

 ――寒い、冷たい、凍える。

 まるで冷たい雪の中に埋もれたような感覚に驚きながらも、叫び声を出そうとして口から出たのは、叫びや悲鳴ではなく、吐血だった。
 咳き込み、血を吐き出しながら、青い液体に浸かり溶け始めたのは、自分自身の手足だ。

 ――俺の手が!?足が!?――スライムって、こんなに倒すの大変なのかよ?

 彼は、この異世界の【冒険者見習い】の初の討伐として、スライムと対峙した。
 しかし、戦闘の結果は――スライムに返り討ちにされたのだ。

 スライムは、本来、この異世界では一番弱い魔物だ。
 そう、この異世界(・・・)では、

 ――俺が、弱いっていう事かよ!?

 彼は、自分自身の体の状態を確認しようとするが、肘から先が既に、溶けて無くなっていたのだ。
 スライム特有の酸と消化の力だった。

 ――コイツ!?俺を食う気か?ヤバい!――誰か居ねぇのか?

 他に助けを求めようと、彼は、辺りを横目で見るが、【冒険者パーティ】の仲間達も、魔物達に返り討ちに遭って、既に倒された後だった。
 悲鳴や叫び声の断末魔と共に、倒され捕食されていく仲間達。

 そりゃそうだ、魔物達からすれば、自分を攻撃して来た奴らをただじゃ済まないだろう。
 捕食しているのは、魔物からしたら、俺達(人間)は、獲物らしいしな?

 ――ああ、クソ、クソ、どうしてこうなったんだ?

 この異世界に来てまだ3日も経ってねぇぞ、これが俺の『詰み』っていう奴かよ。
 あの【案内人】のヤロー、分かってやがったな、こうなる事を。
 まあ、死んでも【セーフティエリア】からやり直せるみたいだけどな。
 また、3日前からのやり直し――マジで洒落にならないだろうが。
 唯一の救いは、やり直せる(・・・・・)事、記憶(・・)や経験(・・)を、そのまま引き継げる事だろうな。

 突然、異世界に飛ばされて――【案内人】に、この世界で生きて行くには【冒険者】になって魔物を狩って生きて行くと、3日前に言われた。
 それから準備や何やらを用意して、いざ始めた初めての魔物討伐が、まさかの返り討ち。

 ――ハハハ、マジで笑えねぇ。

 そうこうしていると、意識が遠退き、彼の体が青いスライムの消化液に溶かされていく。

 そういえば、俺や仲間達がこの異世界に来た理由が、前の世界で『罪』を犯したからだって【案内人】の奴が言ってたっけ。
 せめて、その『罪』が何なのかは知りたいよな。
 『償い』それが、俺が――この異世界でやらなきゃいけない事か?
 何を償うのかを知る為にも、やるしかないっていう訳かよ?

 ――だったら、やってやるよ?この異世界で、その『償い』って奴をさ!!

 次の瞬間、彼、シンは命を落とした。