月華は陽だまりに花ひらく

―――ルミネ王立学院。

王族や貴族の子女たちが集う歴史ある学び舎だ。

そんな高貴な学院の廊下は囁きで満ちていた。

「ご覧なさい、セレナ様よ」

「『月夜の令嬢』、でしたっけ?」

「そうなの!今日もお美しいわ…!」

孤高な月に例えられるとは。

この表情への皮肉だろうか。

セレナはふと息を吐いた。

いつもどおりに流れていくはずの時間が聞き覚えのある低音に破られた。

「おい、セレナ!」

「なん、ですか…」

反射的に身を引いたのが気に食わなかったのか、婚約者はぐっと掴んだ腕に力を入れる。

手首を締められ、血が止まるのを感じる。

その痛みに顔をしかめると、我に返ったのか彼はバツが悪そうに手を離した。

「王家でパーティーを開催する」

またか…そう心のなかで呟き、セレナは溜め息を吐く。

3日前に茶会を開いたばかりなのに、また開くのか。

招待客の吟味、宮殿の手入れ、飾り付け。
一番大切なのは料理や菓子の準備だ。

少なくとも3週間はかかる。

そんなパーティーを頻繁に行うこの王子の気がしれない。

抗議しようと口を開くと、王子は遮るように席を立った。

「せいぜい小綺麗にしておくがいい…
 これが最後の晩餐なのだからな」

意地悪く口角をつり上げたオーカスは大股で歩き去って行った。

(最後の、晩餐…?)

首を傾げる。

一体何が最後だというのだろう。

だが、嫌な予感がするのは確かで、セレナは微かに身震いをした。

雪の冠を戴いた東屋に冷たい風が吹き込んでいた。